配送ルートをベテランドライバーの経験と勘で決めている現場は、日本の物流業界では珍しくありません。しかし、2024年問題によるドライバーの時間外労働上限規制が本格化した今、属人的なルート決定は燃料コストの高止まりだけでなく、法令違反リスクにも直結します。交通渋滞や急な配送先変更への対応が個人の判断に委ねられている限り、配送品質のばらつきと労働時間の超過は構造的に解消できません。
この記事は、従業員50〜300名規模の物流会社や、自社配送部門を持つ卸売・小売企業で、配車計画や運行管理を担当している物流マネージャーや配車係を想定しています。読み終えると、配送指示データ・車両位置情報・配送実績を連携させ、毎朝の配車計画を半自動で作成し、日中のルート変更にも対応できる実務ワークフローを自社に導入するための具体的な手順と判断基準が手に入ります。大手運送会社向けの全社基幹システム刷新や、数百台規模の大規模フリート管理は扱いません。
なお、本記事で紹介するツールの組み合わせは代表的な一例です。同じ役割を果たす別の製品でも、同様のワークフローを構築できます。
読み終えた時点で、配車計画の属人化を解消するための3ステップのワークフローと、自社に合ったツール選定の判断基準が手元に揃います。
Workflow at a glance: 配送ルートの属人化を解消し燃料コストとドライバー残業を同時に削減する方法
多くの現場では、配送指示は受注管理システムや紙の伝票で管理され、車両の位置情報はドライブレコーダーや簡易GPSで取得し、配送実績は日報やExcelに手入力されています。この3つのデータがそれぞれ別の場所にあるため、配車担当者はすべてを頭の中で統合してルートを組み立てるしかありません。結果として、ベテランの配車係が休んだ日や退職した後に、配送効率が大幅に落ちるという事態が起きます。
朝の時点で組んだルートが最適でも、日中に急な集荷依頼や配送先の不在連絡が入ると、ルートの組み直しが必要になります。しかし、紙やExcelベースの配車計画では、リアルタイムの交通情報や各車両の現在位置を反映した再計算ができません。ドライバーが自分の判断で迂回した結果、他の車両との重複配送や時間指定違反が発生し、顧客からのクレームにつながります。
配送が終わった後の振り返りも属人化の温床です。実際の走行ルート、所要時間、燃料消費量といったデータが体系的に記録されていないため、どのルートが効率的だったのか、どの時間帯にどのエリアで渋滞が発生しやすいのかを分析できません。改善のPDCAが回らないまま、毎日同じ非効率が繰り返されます。
配送ルートの最適化というと、高度なAIアルゴリズムに目が向きがちですが、実務で最も重要なのはその手前の段階です。配送指示データ、車両の位置情報、過去の配送実績という3種類のデータを、1つのプラットフォームに集約することが出発点になります。
最適化エンジンは、入力データの質と網羅性に完全に依存します。配送先の住所が正確でなければルート計算は狂いますし、車両の積載可能量や稼働可能時間が反映されていなければ、実行不可能な計画が出力されます。まずは車両管理システムで車両情報と位置情報を一元管理し、そのデータを配車最適化ツールに渡すという流れを確立してください。
ベテランの配車係が組むルートは、経験に基づく微調整が効いており、局所的には最適化ツールの出力を上回ることもあります。しかし、その品質は担当者の体調や記憶に左右されます。最適化ツールの価値は、誰が担当しても80点以上のルートを毎朝確実に出せることにあります。属人化の解消とは、最高のルートを追求することではなく、最低ラインを底上げすることです。
まず、自社の全車両の情報をCariotに登録します。車両ごとの積載量、稼働可能時間、ドライバーの割り当て、車検期限などの基本情報に加え、GPSによるリアルタイムの位置情報がCariot上で自動取得されます。
配送先の情報は、受注管理システムや倉庫管理システムからCSVで出力し、Cariotに取り込みます。配送先住所、時間指定の有無、荷物のサイズ・重量といった情報を毎日の業務開始前までにCariotへ反映させてください。この作業は配車担当者が毎朝15〜20分で完了できます。
ポイントは、車両の現在位置と稼働状況がリアルタイムで把握できる状態を作ることです。これにより、日中に急な配送依頼が入った場合でも、どの車両が最寄りで空き容量があるかを即座に判断できます。
Cariotに集約した車両情報と配送先データをLoogiaに連携します。LoogiaはCariotとのAPI連携に対応しており、車両の台数・積載量・稼働時間と、配送先の住所・時間指定・荷物情報を入力として、最適な配送ルートを自動で算出します。
毎朝、配車担当者がLoogiaでルート計算を実行し、出力された配車計画を確認します。確認のポイントは3つです。1つ目は、時間指定のある配送先が制約どおりに組み込まれているか。2つ目は、各車両の積載量が上限を超えていないか。3つ目は、ドライバーの労働時間が法定上限内に収まっているかです。問題があれば、Loogia上で手動調整を加えてから確定します。
確定した配車計画は、各ドライバーのスマートフォンにLoogiaのアプリ経由で配信されます。ドライバーはナビゲーション画面に従って配送を進めるだけなので、土地勘のない新人ドライバーでも一定水準の配送効率を維持できます。
配送が完了すると、Cariotには各車両の実際の走行ルート、走行距離、停車時間が自動記録されます。Loogiaには、計画ルートと実績の差分データが蓄積されます。
週に1回、配車担当者または物流マネージャーが以下の3点を確認してください。1つ目は、計画ルートと実績ルートの乖離が大きかった日の原因分析です。渋滞、不在再配達、急な追加配送など、原因を特定して翌週の計画に反映します。2つ目は、車両ごとの稼働率のばらつきです。特定の車両に負荷が偏っていないかを確認し、偏りがあればLoogiaの車両割り当て設定を調整します。3つ目は、燃料消費量と走行距離の推移です。Cariotのレポート機能で月次の燃料コスト推移を確認し、ルート最適化の効果を定量的に把握します。
この週次レビューを継続することで、最適化エンジンへの入力条件が徐々に精緻化され、計画精度が月を追うごとに向上します。
Cariotは、車両管理とリアルタイム動態管理に特化した国産のクラウドサービスです。GPSによる位置情報の取得精度が高く、車両ごとの走行履歴、エンジン稼働状況、急加速・急減速の検知まで対応しています。配送ルート最適化の前提となる車両の現在地と稼働状況を正確に把握するという役割において、安定した実績があります。
一方で、Cariot単体ではルートの最適化計算はできません。あくまで車両データの収集・管理・可視化が主機能であり、配車計画の自動生成には別のツールが必要です。また、初期導入時に車載デバイスの取り付けが必要なため、車両台数が多い場合は導入に1〜2週間の期間を見込んでください。
Loogiaは、配送ルート最適化に特化した国産AIサービスです。複数の制約条件(時間指定、積載量、労働時間上限、車両タイプなど)を同時に考慮したルート計算ができる点が最大の強みです。配車担当者がExcelや紙で数時間かけていた作業を、数分で完了させます。
注意点として、Loogiaの計算精度は入力データの正確性に依存します。配送先住所の表記ゆれや、荷物サイズの未入力があると、実行不可能なルートが出力される場合があります。導入初期は、出力結果をベテラン配車係と突き合わせて検証する期間を2〜4週間設けることをおすすめします。また、Loogiaは配送ルートの最適化に特化しているため、倉庫内のピッキング順序や出荷作業の最適化は対象外です。倉庫側の業務改善が必要な場合は、別途倉庫管理システムの導入を検討してください。
| Tool | Role | Pricing | Implementation time | Notes |
|---|---|---|---|---|
| Loogia | 配送ルート最適化AIによる配車計画の自動生成 | 要問い合わせ | 2〜4週間(検証期間含む) | Cariotとの API連携で車両データを取得し、時間指定・積載量・労働時間上限などの制約条件を設定してルートを自動算出する。導入初期はベテラン配車係の計画と突き合わせて精度を検証する期間を設けること。 |
| Cariot | 車両のリアルタイム動態管理と走行実績の蓄積 | 要問い合わせ | 1〜2週間(車載デバイス取り付け含む) | 車載デバイスを取り付けてGPS位置情報を自動取得する。車両台数・積載量・ドライバー情報を登録し、配送先データはCSVで日次取り込みを行う。走行履歴と燃料消費データの蓄積が週次レビューの基盤となる。 |
配送ルートの属人化を解消するために必要なのは、高度なAIを導入することではなく、バラバラに存在するデータを1か所に集め、それを最適化エンジンに渡すという流れを作ることです。Cariotで車両情報と位置データを一元管理し、Loogiaで毎朝の配車計画を自動生成し、週次で実績データを振り返る。この3ステップを回すだけで、誰が配車を担当しても一定水準以上のルートが組めるようになります。
最初の一歩として、まずCariotの無料トライアルで自社車両2〜3台の動態管理を試し、現在の配送ルートの実態を可視化するところから始めてください。実態が見えれば、Loogiaによる最適化でどれだけ改善余地があるかの判断材料が揃います。
Mentioned apps: Loogia, Cariot
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