FitGap
2026-02-13

事業の成長ステージに合わせた人材配置を実現し成長機会の取りこぼしと人材の硬直化を防ぐ方法

多くの企業で、成長期にある事業に経験豊富な人材を集中させたいにもかかわらず、実際には成熟事業に人材が滞留し、新規事業は慢性的な人手不足に陥っています。この歪みの根本原因は、事業ごとの売上推移や利益率といった業績データと、社員のスキル・経歴・現在の配置状況といった人材データが、まったく別のシステムで管理されていることにあります。2つの情報がつながっていないため、経営層や人事部門が配置の判断をするとき、勘と過去の慣習に頼らざるを得ません。

この記事は、従業員100〜1,000名規模の企業で、経営企画や人事企画を担当している方を想定しています。事業計画と人材配置の両方に関わるポジションの方が対象です。読み終えると、事業の成長ステージを数値で可視化し、そこに人材データを重ね合わせて配置の過不足を発見し、具体的な異動案を作成するまでの一連のワークフローを自社で回せるようになります。なお、数万人規模のグローバル企業向けの全社タレントマネジメント構想や、個別ツールの網羅的なレビューは扱いません。

本記事で紹介するツールの組み合わせは代表的な一例です。同じ役割を果たす別の製品でも、同様のワークフローを構築できます。

読み終えた時点で、事業ステージ別の人材過不足を一覧化したダッシュボードの設計と、四半期ごとの配置見直しサイクルの運用手順が手元に揃います。

Workflow at a glance: 事業の成長ステージに合わせた人材配置を実現し成長機会の取りこぼしと人材の硬直化を防ぐ方法

なぜ事業の成長ステージと人材配置がずれたまま放置されるのか

業績データと人材データが別世界に存在している

事業の成長ステージを判断するには、売上成長率、営業利益率、投資回収率といった管理会計上の数値が必要です。一方、人材の配置状況を把握するには、社員ごとのスキル、経験年数、過去の配属履歴、評価結果といった人事データが必要です。多くの企業では、前者は管理会計システムや経営企画部門のスプレッドシートに、後者は人事システムや紙の評価シートに格納されています。この2つのデータは管理部門も異なり、フォーマットも更新頻度も違います。結果として、ある事業が成長期にあるのか成熟期にあるのかという情報と、その事業にどんなスキルを持った人材が何人いるのかという情報を、同じ画面で見ることができません。

配置の判断が属人化し、慣性で決まる

データが分断されていると、配置の意思決定は部門長の経験則や声の大きさに左右されます。成熟事業の部門長はベテラン人材を手放したがらず、新規事業の責任者は人が足りないと訴えても根拠を示しにくい状態です。こうした力学が働くと、人材は成熟事業に滞留し続けます。半年に一度の人事異動会議で議論しても、客観的な判断材料がないため、結局は前年踏襲の配置に落ち着きがちです。

放置した場合のビジネスインパクト

成長期の事業に適切な人材が配置されないと、市場の拡大期に十分な営業力や開発力を投入できず、競合にシェアを奪われます。一方、成熟事業に人材が過剰に張り付いていると、人件費率が上がり利益を圧迫します。さらに、異動の機会が少ない組織では社員のキャリア停滞感が高まり、優秀層から離職が始まります。これは数字に表れにくいコストですが、採用・育成コストを考えると年間で数千万円規模の損失になり得ます。

重要な考え方:事業ステージを数値で定義し、人材データと同じ軸で並べる

配置の歪みを解消するために最も重要なのは、事業の成長ステージを感覚ではなく数値基準で定義し、その基準と人材データを同じ場所で突き合わせられる状態を作ることです。

成長ステージを3〜4段階で数値定義する

事業ポートフォリオの分類は複雑にしすぎると運用が続きません。FitGapでは、以下のようなシンプルな3段階分類を推奨します。成長期は売上成長率が年15%以上かつ営業利益率が低い段階、安定期は売上成長率が5〜15%で営業利益率が安定している段階、成熟期は売上成長率が5%未満で営業利益率が高止まりまたは低下傾向にある段階です。この閾値は業界や企業規模によって調整が必要ですが、重要なのは全社で統一した基準を持つことです。基準があれば、四半期ごとに各事業がどのステージにいるかを自動的に判定できます。

人材データに事業貢献の文脈を加える

スキルや経験年数だけでは配置判断に使えません。過去にどの成長ステージの事業で成果を出したかという文脈が必要です。たとえば、新規事業の立ち上げ経験がある人材と、成熟事業のオペレーション効率化で実績がある人材では、適する配置先がまったく異なります。タレントマネジメントシステムに登録するスキルタグに、事業ステージとの関連性を持たせることで、配置検討の精度が大きく上がります。

2つのデータを1つのダッシュボードに集約する

管理会計データと人材データをBIツール上で結合し、事業ステージ別の人員構成、スキル分布、過不足を一覧できるダッシュボードを作ることがゴールです。このダッシュボードがあれば、四半期ごとの配置見直し会議で、どの事業に何人・どんなスキルの人材が不足しているかを全員が同じ画面を見ながら議論できます。

四半期ごとの配置見直しサイクルを回す実践ワークフロー

ステップ 1:事業別の業績データを取得しステージを自動判定する(Loglass)

四半期の締め後、経営企画担当者がLoglassから事業別の売上成長率と営業利益率を抽出します。Loglassは管理会計に特化したシステムで、事業部別・プロダクト別の予実データを一元管理できます。あらかじめ設定した成長ステージの閾値に基づき、各事業を成長期・安定期・成熟期に分類します。この分類結果をCSV形式でエクスポートし、BIツールに連携するためのデータソースとして保存します。所要時間は四半期に1回、約2時間です。ポイントは、閾値の設定を経営会議で事前に合意しておくことです。担当者の判断で分類が変わると、後工程の配置議論が紛糾します。

ステップ 2:人材データにステージ適性タグを付与し抽出する(カオナビ)

人事企画担当者がカオナビ上で、全社員の配置状況・スキル・過去の配属履歴を確認します。カオナビのプロファイル機能を使い、各社員に事業ステージ適性のカスタムタグを設定します。具体的には、新規事業立ち上げ経験あり、オペレーション改善実績あり、マネジメント経験ありといったタグです。このタグは入社時や異動時に更新し、四半期の見直し前に人事担当者が最新化します。タグ付けが完了したら、事業部別の人員リストをスキルタグ付きでCSVエクスポートします。初回のタグ設計と全社員への付与には1〜2週間かかりますが、2回目以降は差分更新のみで済むため、四半期あたり半日程度の作業です。

ステップ 3:事業ステージと人材配置を重ね合わせて過不足を可視化する(Looker Studio)

経営企画担当者または人事企画担当者が、ステップ1のLoglassからの業績データとステップ2のカオナビからの人材データをLooker Studioに取り込みます。Looker StudioはGoogleが提供する無料のBIツールで、複数のデータソースを結合してダッシュボードを作成できます。ダッシュボードには、事業ステージ別の人員数、スキルタグ別の人員分布、前四半期からの変動を表示します。たとえば、成長期に分類された事業Aに新規事業立ち上げ経験者が2名しかおらず、成熟期の事業Bに8名滞留しているといった過不足が一目で分かる状態を作ります。このダッシュボードを四半期の配置見直し会議の資料として使い、具体的な異動候補者リストの議論に入ります。ダッシュボードの初期構築には1〜2日、四半期ごとのデータ更新は1時間程度です。

この組み合わせが機能する理由

Loglass:事業ステージの判定に必要な管理会計データを一元化できる

Loglassの強みは、事業部別・プロダクト別の予実管理に特化している点です。Excelベースの管理会計では、事業部ごとにフォーマットが異なり、集計のたびに手作業が発生します。Loglassを使えば、全事業の業績データが統一フォーマットで蓄積されるため、成長ステージの判定基準を一度設定すれば、四半期ごとの分類作業が大幅に効率化されます。一方、Loglassは管理会計に特化しているため、人材データとの連携機能は標準では持っていません。そのため、CSVエクスポートを介してBIツールに渡す運用が必要です。また、導入には経理・経営企画部門の協力が不可欠で、既存の管理会計フローを移行する初期コストがかかります。すでにfreeeやマネーフォワードで管理会計を回している企業は、そこからのデータ抽出で代替することも可能です。

カオナビ:スキルと配置履歴を構造化データとして管理できる

カオナビの強みは、社員のプロファイル情報をカスタマイズ可能な項目で管理でき、検索やフィルタリングが容易な点です。紙やExcelで管理している人事情報では、特定のスキルを持つ人材を事業部横断で検索することが困難です。カオナビであれば、カスタムタグやフリー項目を活用して、事業ステージ適性という独自の軸を追加できます。注意点として、タグの設計と初期データ投入には人事部門の工数がかかります。また、タグの粒度が粗すぎると配置判断に使えず、細かすぎると更新が追いつかなくなります。FitGapでは、タグは5〜10種類程度に絞り、年2回の評価面談時に本人と上長が確認・更新するルールを推奨します。

Looker Studio:2つのデータを無料で結合し全員が同じ画面を見られる

Looker Studioの最大の利点は、無料で利用でき、Googleアカウントがあれば誰でもダッシュボードを閲覧できる点です。管理会計データと人材データという異なるソースをCSV経由で取り込み、事業コードや部門コードをキーにして結合できます。Tableauなどの有料BIツールと比較すると、大量データの処理速度やデータモデリングの柔軟性では劣りますが、四半期に1回、数十事業・数百〜数千名規模のデータを可視化する用途であれば十分な性能です。制約として、Looker Studioにはデータの自動取り込み機能が限定的なため、四半期ごとにCSVを手動でアップロードする運用が発生します。この手間を許容できない場合は、Google スプレッドシートをデータソースとして中間に挟み、スプレッドシートへのデータ貼り付けだけで済むようにする方法もあります。

Recommended tool list

ToolRolePricingImplementation timeNotes
Loglass事業別の管理会計データを一元管理し、成長ステージの数値判定に必要な売上成長率・営業利益率を提供する要問い合わせ1〜2か月既存の管理会計フローからのデータ移行が必要。経理・経営企画部門の協力が不可欠。事業部別の勘定科目体系が整理されていない場合は、導入前に科目設計を行う。
カオナビ社員のスキル・配置履歴・評価データを構造化して管理し、事業ステージ適性タグによる人材検索・抽出を可能にする月額課金1〜2か月初期データ投入とカスタムタグ設計に工数がかかる。既存の人事システムからのデータ移行が必要。タグは5〜10種類に絞り、評価面談時に更新するルールを設定する。
Looker Studio管理会計データと人材データを結合し、事業ステージ別の人員過不足を可視化するダッシュボードを提供する無料枠あり1〜2日CSVインポートによるデータ取り込みが基本。四半期ごとの手動更新が必要。Google スプレッドシートを中間データソースにすると更新が楽になる。大量データの処理には向かない。

結論:業績データと人材データを四半期ごとに突き合わせる仕組みが配置の歪みを正す

事業の成長ステージと人材配置のずれは、2つのデータが分断されていることから生まれます。Loglassで事業ステージを数値判定し、カオナビで人材のスキルと配置を構造化し、Looker Studioで両者を重ね合わせるワークフローを四半期サイクルで回すことで、勘と慣習に頼らない配置判断が可能になります。

最初の一歩として、まず自社の事業を3段階の成長ステージに分類する閾値を経営企画と合意してください。閾値が決まれば、既存の業績データで各事業を分類する作業は1日で完了します。その結果を見るだけでも、人材配置の議論の質が変わります。

Mentioned apps: Loglass, カオナビ, Looker Studio

Related categories: BIツール, タレントマネジメントシステム(HCM), 管理会計システム

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