保守・メンテナンス業務の現場では、作業の割り当てが属人的な判断で行われがちです。各作業員がどんな資格を持っているか、今月どれだけ稼働しているか、過去にどの設備を担当した経験があるかといった情報がバラバラに管理されているため、計画担当者が最適な人選をできず、結果としてスキル不足による手戻りや、特定の人への負荷集中が起きています。この状態を放置すると、作業品質のばらつきによる顧客クレームの増加と、過重労働による離職リスクの上昇という二重の問題に発展します。
この記事は、従業員50〜300名規模の設備保守・ビルメンテナンス・製造保全などの企業で、保守作業の計画やシフト管理を兼務している現場リーダーや管理部門の担当者を想定しています。読み終えると、スキル情報・稼働実績・作業予定の3つを連動させて割り当てを決める実務ワークフローを自社に導入できるようになります。大規模エンタープライズ向けのERP統合計画や、個別ツールの網羅的なレビューは扱いません。
なお、本記事で紹介するツールの組み合わせは代表的な一例です。同じ役割を果たす別の製品でも、同様のワークフローを構築できます。
読み終えた時点で、保守作業の割り当て判断に必要な情報を一画面で確認し、スキル適合と負荷均等を両立させる週次の割り当てサイクルをすぐに回し始められる状態になります。
Workflow at a glance: 保守要員のスキルと稼働状況をひとつなぎにして作業割り当ての偏りと品質ばらつきを解消する方法
保守作業の割り当てがうまくいかない根本原因は、判断に必要な3種類の情報がそれぞれ別の場所で管理されていることにあります。
1つ目は作業予定です。どの設備に、いつ、どんな種類の保守が必要かという情報は、保守管理システムや紙の台帳に記録されています。2つ目はスキル・資格情報です。誰がどの資格を持ち、どの設備の作業経験があるかは、人事部門のファイルやExcelで管理されていることが多いです。3つ目は稼働状況です。今月の残業時間、有給取得状況、直近の勤務パターンは勤怠管理システムに入っています。
計画担当者がこの3つを突き合わせるには、複数の画面やファイルを行き来しながら頭の中で組み合わせるしかありません。結果として、よく知っている人に頼む、前回と同じ人に頼むという安易な判断に流れます。
スキルが合わない人に作業を割り当てると、作業時間が延び、手戻りが発生し、最悪の場合は設備トラブルにつながります。顧客からのクレームが増えれば、その対応にさらに工数を取られます。
一方、できる人に仕事が集中する構造は、その人の残業時間を押し上げ、疲労による作業ミスのリスクも高めます。さらに、負荷が偏った状態が続くと離職につながり、残った人にさらに負荷がかかるという悪循環に陥ります。この2つの問題は独立しているように見えて、実は同じ根っこ、つまり割り当て判断に必要な情報が統合されていないことから生まれています。
保守作業の割り当てを改善するために、高度なAIや自動最適化エンジンは必要ありません。必要なのは、判断材料を1か所に集めるという単純な仕組みと、それを定期的に見直すサイクルです。
割り当て判断に使う情報は、次の3層に整理できます。
第1層は作業要件です。作業の種類、必要な資格、難易度、所要時間の目安がこれにあたります。第2層は人材要件です。保有資格、過去の作業実績、得意な設備分野がこれにあたります。第3層は稼働制約です。当月の累計労働時間、直近の連勤日数、有給取得予定がこれにあたります。
この3層を突き合わせれば、ある作業に対して対応可能かつ負荷に余裕がある人を絞り込めます。
保守作業は突発対応もありますが、定期点検や計画保全が大半を占めます。毎日リアルタイムで最適化する必要はなく、週に1回、翌週の作業予定に対して割り当てを見直すサイクルで十分に効果が出ます。週次であれば、計画担当者の負担も小さく、現場への周知も余裕を持って行えます。突発作業が入った場合は、同じ仕組みを使ってその場で空いている適任者を探せばよいだけです。
毎週金曜日の午前中に、保守管理システムであるMENTENAから翌週の作業予定を確認します。MENTENAでは設備ごとに定期点検のスケジュールや過去の修繕履歴が管理されているため、翌週に予定されている作業の一覧を抽出できます。
このとき、各作業に対して必要な資格と難易度を明記します。たとえば、高圧受電設備の年次点検であれば電気主任技術者の資格が必須、空調設備のフィルター交換であれば資格不要で難易度低、といった具合です。MENTENAの作業テンプレート機能を使えば、作業種別ごとに必要資格をあらかじめ登録しておけるため、毎回手入力する必要はありません。
作業一覧はCSVでエクスポートし、次のステップで使います。担当者はこの時点では空欄のままにしておきます。
ステップ1で出した作業一覧の必要スキル列を見ながら、タレントマネジメントシステムであるカオナビで対応可能な人材を絞り込みます。カオナビには各作業員の保有資格、資格の有効期限、過去の作業実績、研修受講履歴を登録しておきます。
カオナビのプロファイル検索機能を使えば、たとえば電気主任技術者の資格を持ち、かつ高圧受電設備の作業経験が3回以上ある人を一覧で表示できます。この絞り込み結果が、各作業の候補者リストになります。
次に、候補者の稼働余力を確認します。KING OF TIMEの勤怠データから、当月の累計残業時間と直近1週間の勤務パターンを確認します。KING OF TIMEの管理画面で、残業時間が月30時間を超えている人や、5日以上連勤している人にはフラグを立て、優先的に負荷の軽い作業に回すか、翌週の割り当てを減らす判断をします。
カオナビのスキル適合とKING OF TIMEの稼働余力を突き合わせた結果を、ステップ1の作業一覧の担当者欄に記入していきます。この突き合わせ作業は、慣れれば30分程度で完了します。
ステップ2で決めた割り当てをMENTENAの作業予定に反映します。MENTENAの各作業レコードに担当者を入力し、作業指示書を発行します。
このとき、割り当ての根拠を簡潔にメモとして残しておくことが重要です。たとえば、電気主任技術者資格保有、前回同設備担当、今月残業20時間で余力ありといった情報を一言添えます。これにより、割り当てに対する現場からの不満や疑問に対して説明ができるようになります。
MENTENAから作業指示を発行すれば、担当者のスマートフォンやタブレットに通知が届きます。作業完了後の報告もMENTENA上で行うため、次回の割り当て判断に使える実績データが自動的に蓄積されます。
毎週このサイクルを回すことで、割り当ての偏りが数値で見えるようになります。月末にカオナビとKING OF TIMEのデータを突き合わせれば、特定の人に負荷が集中していないか、スキルの偏りがないかを振り返ることもできます。
MENTENAは設備保守に特化したクラウドシステムで、設備台帳、点検スケジュール、作業履歴、作業指示書の発行までを一つのシステムで管理できます。汎用的なプロジェクト管理ツールと異なり、設備単位での管理体系や点検周期の自動計算など、保守業務に必要な機能が最初から揃っています。
一方で、MENTENAには作業員のスキルや資格を体系的に管理する機能は備わっていません。担当者の名前は登録できますが、その人がどの資格を持っているか、今月どれだけ働いているかはMENTENAの外で確認する必要があります。この不足部分をカオナビとKING OF TIMEで補う構成です。
カオナビはタレントマネジメントシステムとして、社員の保有資格、スキル、経歴、研修履歴などを一元管理できます。保守業務においては、電気工事士、危険物取扱者、ボイラー技士といった国家資格の保有状況と有効期限を管理し、資格の種類や経験年数で人材を検索できる点が大きな強みです。
注意点として、カオナビはあくまで人材情報の管理ツールであり、作業スケジュールや勤怠の管理機能は持っていません。また、スキル情報の登録と更新は人事部門や現場リーダーが手動で行う必要があるため、情報の鮮度を保つ運用ルールを決めておくことが重要です。FitGapでは、資格取得時と半年に1回の定期更新の2つのタイミングで更新するルールを推奨します。
KING OF TIMEはクラウド型の勤怠管理システムで、打刻データから労働時間、残業時間、有給取得状況をリアルタイムに把握できます。保守作業の割り当てにおいては、スキルが合っていても稼働に余裕がない人にさらに作業を積むことを防ぐためのブレーキ役として機能します。
KING OF TIMEの管理画面では、部署やチーム単位で残業時間の一覧を確認できるため、負荷の偏りを視覚的に把握できます。ただし、KING OF TIMEはあくまで勤怠の記録と集計を行うシステムであり、作業割り当ての提案や最適化を自動で行う機能はありません。割り当て判断そのものは計画担当者が行い、KING OF TIMEはその判断材料を提供する役割です。
3つのツールはそれぞれ単独では割り当て最適化を実現できませんが、作業要件をMENTENAから、人材要件をカオナビから、稼働制約をKING OF TIMEから取得して突き合わせることで、計画担当者が根拠のある割り当て判断を短時間で行える仕組みが成立します。
| Tool | Role | Pricing | Implementation time | Notes |
|---|---|---|---|---|
| MENTENA | 保守作業の計画・実績管理と作業指示の発行 | 月額課金 | 2〜4週間 | 設備台帳と点検スケジュールの初期登録が必要。既存の設備リストをCSVで一括取り込みできるため、設備数が100台程度であれば1週間で初期設定が完了する。作業テンプレートに必要資格を登録しておくことで、ステップ1の作業が効率化される。 |
| カオナビ | 作業員のスキル・資格・経験の一元管理と検索 | 月額課金 | 2〜4週間 | 保有資格、資格有効期限、作業実績のカスタムフィールドを設定する。初期登録は既存のExcelデータからCSVインポートが可能。資格取得時と半年ごとの定期更新ルールを運用開始前に決めておくことが重要。 |
| KING OF TIME | 勤怠データによる稼働状況と負荷偏りの把握 | 月額課金 | 1〜2週間 | 既に勤怠管理システムを導入済みの場合は、残業時間と連勤日数の確認方法を計画担当者に共有するだけで運用を開始できる。未導入の場合はICカードやスマートフォン打刻の設定が必要。 |
保守作業の割り当て改善は、高度なシステム統合や自動化から始める必要はありません。作業予定、スキル・資格、稼働状況という3つの情報を、週に1回30分かけて突き合わせるサイクルを回すだけで、スキル不適合による手戻りと特定の人への負荷集中を目に見えて減らせます。
最初の一歩として、まずカオナビに作業員の保有資格と主な作業経験を登録するところから始めてください。全員分を一度に完璧に揃える必要はなく、主要な資格と直近1年の作業実績だけでも登録すれば、翌週の割り当てから効果を実感できます。
Mentioned apps: MENTENA, カオナビ, KING OF TIME
Related categories: タレントマネジメントシステム(HCM), 人事システム, 建設業向けシステム
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