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2026-02-13

欠品発生時に代替商品の提案を自動化して機会損失と顧客離脱を防ぐ方法

商品が欠品したとき、倉庫には似た商品や代替品の在庫があるのに、その情報が顧客に届かないまま購入をあきらめられてしまう。これはEC事業者や小売業にとって、日常的に発生している見えにくい売上損失です。欠品ページからの離脱率は一般的に70%を超えるとも言われており、代替提案がなければその大半が競合サイトや別の店舗に流れていきます。

この記事は、従業員50〜300名規模の小売業やEC事業を運営する企業で、在庫管理やECサイト運営を兼務している担当者、あるいは販売企画やマーケティング部門のマネージャーを想定しています。読み終えると、欠品が発生した瞬間に代替商品の候補を自動で抽出し、ECサイトや顧客対応の現場に提案を届けるまでの一連のワークフローを、自社で構築できるようになります。なお、数千店舗規模のエンタープライズ向けの全社統合プロジェクトや、POSシステムのリプレースといった大規模な基盤刷新は扱いません。

本記事で紹介するツールの組み合わせは代表的な一例です。同じ役割を果たす別の製品でも、同様のワークフローを構築できます。

読み終えた時点で、欠品検知から代替提案の表示までを自動化する3ステップのワークフロー設計図と、各ステップで使うツールの選定根拠が手に入ります。

Workflow at a glance: 欠品発生時に代替商品の提案を自動化して機会損失と顧客離脱を防ぐ方法

なぜ代替品の在庫があるのに顧客に提案が届かないのか

在庫データと商品情報がつながっていない

多くの企業では、在庫管理システムが持っているのはSKU(商品の管理番号)ごとの数量情報だけです。一方、商品の色やサイズ、用途、素材といった属性情報は商品マスタやECサイトのカタログ側に格納されています。この2つが別々のデータベースとして存在しているため、ある商品が欠品したときに、属性が近い別の商品で在庫があるものはどれかという問いに即座に答えられる仕組みがありません。

欠品の検知と顧客接点の間にタイムラグがある

在庫がゼロになったことを倉庫側が把握しても、その情報がECサイトの商品ページに反映されるまでに数時間から半日かかるケースは珍しくありません。さらに、欠品を反映した後も、ページには単に在庫なしと表示されるだけで、代わりにこの商品はいかがですかという提案は出ません。コールセンターや店舗スタッフも同様で、欠品を伝えた後に代替品を探すには、自分の経験と記憶に頼るか、商品カタログを手作業で検索するしかありません。

手動対応では提案の質と速度が安定しない

ベテランのスタッフであれば、欠品商品に近い代替品をすぐに思いつけます。しかし、その知識は属人的で、新人スタッフやパート社員には共有されていません。ECサイトに至っては、人が介在する余地すらなく、顧客は欠品を見た瞬間にブラウザの戻るボタンを押して離脱します。結果として、在庫がある代替品が売れ残り、欠品商品の売上だけが消えるという二重の損失が発生します。

重要な考え方:欠品を検知した瞬間に在庫あり商品の中から類似品を自動で絞り込む

代替提案の自動化というと、高度なAIレコメンドエンジンの導入を想像するかもしれません。しかし、最も重要なのはレコメンドの精度ではなく、欠品の検知から代替候補の抽出、顧客への表示までを途切れなくつなげることです。

まず在庫データをリアルタイムに近い状態で把握する

代替提案の起点は、ある商品の在庫がゼロまたは閾値以下になったという検知です。この検知が1日1回のバッチ処理では、提案が届く頃には顧客はとっくに離脱しています。在庫管理システムから欠品情報をリアルタイムに近い頻度で取得できる状態を作ることが、ワークフロー全体の前提条件になります。

類似商品の判定基準を事前に定義しておく

代替品の候補を出すには、何をもって類似とするかの基準が必要です。商品カテゴリが同じ、価格帯が近い、用途やサイズが同じ、ブランドが同じなど、業種や商材によって優先すべき属性は異なります。この基準をあらかじめ設定しておくことで、欠品発生時に人手を介さず候補を絞り込めるようになります。レコメンドAIを使う場合でも、この属性データの整備が精度を左右します。

提案の出口を顧客接点に直接つなげる

候補を抽出しても、それがスタッフの管理画面に表示されるだけでは意味がありません。ECサイトの商品ページ、カート画面、あるいはメール通知など、顧客が実際に目にする場所に提案を届ける導線を設計することが不可欠です。

欠品検知から代替提案の表示までを3ステップで自動化する

ステップ 1:欠品をリアルタイムに検知して代替候補の抽出を起動する(ロジレス)

在庫管理システムであるロジレスを起点にします。ロジレスでは、商品ごとに在庫数の閾値を設定できます。在庫が閾値を下回った時点で、APIを通じて欠品情報を外部に通知します。

具体的には、ロジレスのAPIから在庫数の変動を定期的に取得する仕組みを構築します。取得間隔は5〜15分が現実的です。在庫がゼロまたは設定した閾値(例:残り3個以下)を下回ったSKUを検出したら、そのSKUの情報を次のステップに渡します。この時点で渡す情報は、SKUコード、商品カテゴリ、価格帯、主要属性(サイズ、色、素材など)です。

担当者は在庫管理の担当者ですが、初期設定後は自動で動くため、日常的な作業は発生しません。閾値の見直しだけを月1回程度行います。売れ筋商品は閾値を高めに設定し、早めに代替提案を出すのがポイントです。

ステップ 2:欠品商品の属性に基づいて在庫ありの類似商品を抽出する(Algolia)

欠品が検知されたら、レコメンドAIであるAlgoliaを使って代替候補を抽出します。Algoliaは商品検索とレコメンド機能を備えたサービスで、商品マスタの属性データをインデックスとして登録しておくことで、特定の商品に類似した商品を高速に検索できます。

事前準備として、商品マスタの情報(カテゴリ、価格、ブランド、サイズ、色、用途タグなど)をAlgoliaのインデックスに登録します。この登録は、商品マスタが更新されるたびに同期する仕組みを作っておきます。日次のバッチ同期で十分です。

欠品SKUの情報を受け取ったら、Algoliaの類似検索機能を使い、同カテゴリかつ在庫ありの商品から、属性の一致度が高い順に3〜5件の候補を抽出します。このとき、在庫ありかどうかの判定はロジレスの在庫データをAlgoliaのインデックスに含めておくことで実現します。在庫数そのものではなく、在庫あり・なしのフラグだけで十分です。

抽出結果には、商品名、価格、商品画像URL、商品ページURLを含めます。この情報が次のステップで顧客に見せる提案の素材になります。

ステップ 3:ECサイトと顧客対応チャネルに代替提案を表示する(HubSpot)

抽出した代替候補を、顧客が実際に目にする場所に届けます。ここではCRMツールであるHubSpotを活用し、複数の顧客接点への提案配信を一元管理します。

ECサイトでの表示については、Algoliaの検索結果をECサイトのフロントエンドに直接組み込む方法が最もシンプルです。欠品商品のページにアクセスした顧客に対して、こちらの商品もご覧くださいという形で代替候補を表示します。これはAlgoliaのフロントエンドライブラリを使えば、ECサイトのテンプレートに数行のコードを追加するだけで実装できます。

一方、すでに欠品商品をお気に入りに登録していた顧客や、過去に購入履歴がある顧客に対しては、HubSpotのワークフロー機能を使ってメール通知を自動送信します。具体的には、ロジレスで欠品が検知されたタイミングで、HubSpotのAPIを呼び出し、該当商品に関連する顧客リストに対して代替商品の案内メールを配信します。メールには代替候補の商品名、価格、画像、購入リンクを含めます。

コールセンターや店舗スタッフ向けには、HubSpotのコンタクト画面に代替候補の情報をカスタムプロパティとして表示します。顧客から欠品の問い合わせがあった際に、スタッフがHubSpotの画面を見るだけで代替品を即座に提案できる状態を作ります。

運用サイクルとしては、週に1回、代替提案の表示回数とそこからの購入転換率をHubSpotのレポート機能で確認します。転換率が低い商品カテゴリがあれば、Algoliaの類似度の重み付けを調整します。

この組み合わせが機能する理由

ロジレス:EC特化の在庫管理でリアルタイム検知の起点を作れる

ロジレスはEC事業者向けに設計された在庫管理・倉庫管理システムで、受注から出荷までの一連の流れを管理できます。APIが公開されており、在庫数の変動を外部システムから取得できる点がこのワークフローの起点として適しています。複数の販売チャネル(自社EC、モール出店など)の在庫を一元管理できるため、チャネルごとに在庫状況が食い違うリスクも軽減できます。一方、ロジレスはあくまで在庫と物流の管理が主機能であり、商品の属性情報を豊富に持てる設計ではありません。そのため、類似商品の判定に必要な属性データは別途Algolia側で管理する必要があります。

Algolia:商品属性に基づく高速な類似検索で代替候補を即座に絞り込める

Algoliaは検索とレコメンドに特化したサービスで、大量の商品データの中から属性の類似度に基づいて候補を高速に返せる点が強みです。日本語の商品名や属性にも対応しており、EC事業者での導入実績があります。APIベースで動作するため、欠品検知のトリガーを受けて自動で候補を返す仕組みを構築しやすいです。注意点として、Algoliaの精度は登録する商品属性データの質に直結します。カテゴリや用途タグが整備されていない商品マスタをそのまま投入しても、的外れな候補が返ってきます。導入前に商品マスタの属性項目を棚卸しし、類似判定に使う属性を明確にしておく作業が不可欠です。また、検索リクエスト数に応じた従量課金のため、商品数が数万点を超える場合はコストの見積もりを事前に行ってください。

HubSpot:顧客データと配信チャネルを一元管理して提案の出口を確保する

HubSpotはCRMを中核に、メール配信、ワークフロー自動化、顧客情報の一元管理を備えたプラットフォームです。このワークフローでは、代替提案を届ける出口としての役割を担います。顧客の購入履歴やお気に入り情報と紐づけて、欠品商品に関心がある顧客だけに絞ってメールを送れるため、無関係な顧客にメールを送りつけるリスクを避けられます。コールセンターや店舗スタッフが使う画面にも代替候補を表示できるため、チャネルをまたいだ提案の一貫性を保てます。一方、HubSpotの無料枠ではワークフローの自動化機能に制限があるため、メール配信の自動化まで行うにはMarketing Hub以上の有料プランが必要です。また、ECサイトのフロントエンドへの表示はHubSpotの役割ではなく、Algolia側で対応する点を混同しないようにしてください。

Recommended tool list

ToolRolePricingImplementation timeNotes
ロジレス在庫管理・欠品検知の起点月額課金2〜4週間既存のEC受注データとの連携設定が必要。APIによる在庫数取得の仕組みを構築し、欠品閾値を商品カテゴリごとに設定する。
Algolia商品属性に基づく類似商品の検索・レコメンド無料枠あり2〜3週間商品マスタの属性データをインデックスに登録する事前作業が必要。類似判定に使う属性の選定と重み付けの調整が精度を左右する。
HubSpot顧客への代替提案の配信とチャネル横断の一元管理無料枠あり1〜2週間メール配信の自動化にはMarketing Hub以上の有料プランが必要。顧客の購入履歴やお気に入りデータのインポートを事前に行う。

結論:欠品を売上損失で終わらせず代替提案で購入につなげる仕組みを作る

欠品は避けられないものですが、欠品が即座に売上損失になるかどうかは仕組み次第です。在庫管理システムで欠品を検知し、レコメンドAIで代替候補を抽出し、CRMを通じて顧客に届ける。この3つのステップをつなげるだけで、これまで取りこぼしていた売上の一部を回収できるようになります。

最初の一歩として、まず自社の商品マスタの属性データがどの程度整備されているかを確認してください。カテゴリ、価格帯、用途、サイズといった基本属性が揃っていれば、このワークフローは比較的短期間で立ち上げられます。属性データが不十分な場合は、売上上位100商品だけでも属性を整理するところから始めると、効果を早く実感できます。

Mentioned apps: Algolia, ロジレス, Sales Hub

Related categories: ネットショップ受注管理システム(OMS), レコメンドAI, 営業支援ツール(SFA)

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