助成金の採択が決まり、いざ実績報告の時期を迎えると、対象経費の領収書や契約書、勤務記録といった証憑がどこにあるのか分からない、という事態に陥る企業は少なくありません。支出のたびに助成金案件との紐付けがされていないため、報告期限が迫ってから経理担当と申請担当が何度もやり取りを繰り返し、最悪の場合は証憑不備で助成金の一部返還を求められることもあります。
この記事は、従業員30〜300名規模の中小企業で、助成金の申請や経理業務を兼務している管理部門の担当者を想定しています。読み終えると、経費の発生時点から助成金案件に紐付けて証憑を蓄積し、実績報告書の作成までを一気通貫で進められるワークフローを手に入れることができます。大企業向けのERP導入計画や、助成金申請書の書き方そのものは扱いません。
なお、本記事で紹介するツールの組み合わせは代表的な一例です。同じ役割を果たす別の製品でも、同様のワークフローを構築できます。
読み終えた時点で、助成金ごとに証憑を自動で分類・蓄積し、実績報告に必要な書類一式をいつでも取り出せる運用体制の設計図が手に入ります。
Workflow at a glance: 助成金の実績報告で証憑が見つからない問題を解消し報告遅延と返還リスクを防ぐ方法
多くの企業では、日常の経費精算は経費精算システムや会計ソフトで処理し、助成金の管理はExcelや紙のファイルで別途行っています。この2つの世界がつながっていないため、ある支出が助成金の対象経費なのかどうかは、支出した本人の記憶だけが頼りになります。半年後、1年後の報告時期に記憶をたどって証憑を探すのは、現実的ではありません。
領収書は経費精算システムに添付され、契約書は共有フォルダに保存され、勤務記録は勤怠システムに残っています。助成金の実績報告では、これらをすべて集めて一覧にする必要がありますが、保管場所が分散しているため、1件ずつ手作業で探し出すことになります。この作業だけで数日から数週間かかるケースも珍しくありません。
経理担当は会計データから対象経費を抽出しますが、それが本当に助成金の対象かどうかは申請担当に確認しなければ分かりません。申請担当は現場に確認を取り、現場は当時の記録を探します。この3者間の往復が何度も繰り返されるうちに報告期限が迫り、不完全な状態で提出せざるを得なくなります。証憑不備による一部返還だけでなく、次回の助成金申請時の信用にも影響します。
証憑が見つからない根本原因は、報告時に遡って紐付けようとすることにあります。解決の鍵は、支出が発生した瞬間に助成金案件との関連を記録してしまうことです。
経費精算システムで支出を登録する際に、助成金の案件名やプロジェクトコードを選択する仕組みを作ります。これだけで、後から対象経費を一覧で抽出できるようになります。追加の手間は、プルダウンから1つ選ぶだけです。
領収書、契約書、勤務記録など種類の異なる証憑を、助成金案件ごとのフォルダに集約します。経費精算時に添付された領収書の画像も、契約書のPDFも、すべて同じ場所から取り出せる状態を作ることが目標です。
助成金ごとに実績報告で求められる項目は異なります。採択直後に報告書のフォーマットを確認し、必要な証憑の種類と項目をチェックリスト化しておくことで、日々の業務の中で漏れなく収集できます。
助成金の採択が決まったら、まずBacklogに案件ごとのプロジェクトを作成します。プロジェクト内には、実績報告で必要な証憑の種類を課題(タスク)として登録します。たとえば、対象経費の領収書、外注先との契約書、従業員の勤務記録、設備の納品書といった項目を1つずつ課題にします。各課題には提出期限と担当者を設定し、証憑の収集状況をいつでも確認できる状態にします。この作業は採択通知を受けた日に、申請担当者が30分程度で完了できます。
日常の経費精算をマネーフォワード クラウド経費で行う際に、助成金対象の支出にはプロジェクトコードとして助成金案件名を付与します。具体的には、マネーフォワード クラウド経費の部門・プロジェクト機能を使い、助成金案件ごとのプロジェクトを事前に登録しておきます。経費を申請する社員は、支出登録時にプルダウンから該当する助成金案件を選ぶだけです。領収書の画像もこの時点で添付されるため、証憑と支出データが自動的に紐付きます。経理担当者は承認時に助成金対象かどうかを確認し、不明な場合はその場で差し戻して確認を取ります。この運用により、後から遡って対象経費を探す作業がなくなります。
マネーフォワード クラウド経費で承認された経費データは、マネーフォワード クラウド会計に自動連携されます。マネーフォワード クラウド会計側でもプロジェクトコードが引き継がれるため、助成金案件ごとの支出合計をいつでもレポートとして出力できます。実績報告の時期が来たら、該当プロジェクトコードで絞り込んだ仕訳一覧をCSVで出力します。この一覧が実績報告書の経費明細の元データになります。月次の経理処理の中で自然にデータが蓄積されるため、報告のためだけに特別な作業は発生しません。
マネーフォワード クラウド経費に添付された領収書画像をダウンロードし、契約書や勤務記録とあわせてBacklogの該当プロジェクトにファイルとして添付します。ステップ1で作成したチェックリストの各課題に対応する証憑ファイルを紐付け、すべての課題が完了状態になれば証憑一式が揃ったことを意味します。申請担当者はマネーフォワード クラウド会計から出力した経費明細CSVと、Backlogに集約された証憑ファイルを使って実績報告書を作成します。チェックリストに未完了の課題が残っていれば、何が不足しているか一目で分かるため、報告期限の2週間前に最終確認を行い、漏れがあれば担当者に通知します。
マネーフォワード クラウド経費の最大の利点は、経費申請の入力画面にプロジェクトコードの選択欄を設けられることです。助成金対象の支出を登録する際に案件を選ばせることで、後から紐付ける手間を完全になくせます。領収書の画像添付も申請時に行われるため、証憑の電子化と紐付けが同時に完了します。一方、プロジェクトコードの選択は社員の入力に依存するため、選び忘れや誤選択のリスクがあります。これを防ぐには、経理担当者が承認時にプロジェクトコードの有無を確認するルールを設けることが有効です。また、マネーフォワード クラウド会計との連携がスムーズなため、二重入力の手間がかかりません。
マネーフォワード クラウド会計は、マネーフォワード クラウド経費から連携されたデータをプロジェクトコード別に集計できます。実績報告で求められる経費明細は、プロジェクトコードで絞り込んでCSV出力するだけで作成できます。日常の会計処理と助成金の実績管理が同じデータベース上で行われるため、数字の不一致が起きにくい点も重要です。注意点として、助成金の報告フォーマットに完全に合致したレポートが自動生成されるわけではないため、CSVデータを報告書のフォーマットに転記する作業は残ります。ただし、元データの正確性が担保されているため、転記ミスのリスクは大幅に下がります。
Backlogをこのワークフローに組み込む理由は、証憑の収集状況をチェックリストとして管理できる点にあります。助成金の実績報告では、領収書だけでなく契約書、勤務記録、納品書など多種類の証憑が求められます。これらを課題として登録し、完了・未完了で管理することで、何が揃っていて何が足りないかが一目で分かります。また、課題ごとに担当者と期限を設定できるため、証憑の収集責任が明確になります。Backlogは本来ソフトウェア開発向けのプロジェクト管理ツールですが、ファイル添付機能とWiki機能を活用することで、証憑の集約場所としても十分に機能します。ただし、大量のファイルを保管する専用の文書管理システムと比べると、検索性やバージョン管理の面では劣ります。証憑の数が年間100件を超えるような規模では、専用の文書管理システムの導入を検討してください。
| Tool | Role | Pricing | Implementation time | Notes |
|---|---|---|---|---|
| マネーフォワード クラウド経費 | 経費精算時に助成金案件タグを付与し領収書画像を紐付ける | 月額課金 | 1〜2週間 | プロジェクトコードの初期設定と社員への入力ルール周知が必要。マネーフォワード クラウド会計との連携設定を先に完了させる。 |
| マネーフォワード クラウド会計 | プロジェクトコード別に支出を自動集計し経費明細CSVを出力する | 月額課金 | 1〜2週間 | マネーフォワード クラウド経費との連携はワンクリックで設定可能。既存の勘定科目体系にプロジェクトコードを追加する作業が発生する。 |
| Backlog | 証憑の収集状況をチェックリストで管理し証憑ファイルを集約する | 月額課金 | 1日 | 助成金案件ごとにプロジェクトを作成し、必要な証憑を課題として登録する。ファイル添付の容量上限に注意。 |
助成金の実績報告で証憑が見つからない問題は、報告時に解決しようとしても手遅れです。経費が発生した瞬間に助成金案件と紐付け、証憑を1か所に集約し、収集状況をチェックリストで管理する。この3つの仕組みを日常業務に組み込むことで、報告時期に慌てて証憑を探し回る作業がなくなり、証憑不備による返還リスクも大幅に下がります。
まずは、現在進行中または次に採択される助成金案件1件を対象に、マネーフォワード クラウド経費にプロジェクトコードを1つ登録し、Backlogに証憑チェックリストを作成するところから始めてください。1案件で運用が回ることを確認してから、他の案件に展開するのが最も確実です。
Mentioned apps: マネーフォワード クラウド経費, マネーフォワード クラウド会計, Backlog
Related categories: タスク管理・プロジェクト管理, 会計ソフト, 経費精算システム
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