イベントの告知メールを送り、SNSでも投稿しているのに、申込数が思うように伸びない。どこで見込み参加者が離脱しているのかが分からず、改善の打ち手が見えない。これは多くの企業が抱える課題です。原因の多くは、メール配信・Webアクセス・申込フォーム・顧客情報がそれぞれ別のツールに散らばっていて、告知から申込までの流れを一本の線としてたどれないことにあります。
この記事は、従業員50〜300名規模の企業で、イベントやセミナーの集客業務を担当しているマーケティング担当者や広報担当者を想定しています。専任のデータ分析チームがいない環境でも、既存のツールを組み合わせて離脱ポイントを特定し、次回の告知施策を改善できるようになることを目指します。大規模エンタープライズ向けのMA(マーケティングオートメーション)全社導入計画や、個別ツールの網羅的なレビューは扱いません。
なお、本記事で紹介するツールの組み合わせは代表的な一例です。同じ役割を果たす別の製品でも、同様のワークフローを構築できます。
読み終えた時点で、告知メール送信から申込完了までの各段階の離脱率を一枚のシートで把握し、次回イベントの告知内容や導線を具体的に改善するためのアクションリストが手に入ります。
Workflow at a glance: イベント告知から申込までの離脱ポイントを可視化し集客率を改善する方法
イベント集客の導線は、大きく分けて4つの段階があります。メールやSNSで告知する段階、告知を見てWebページにアクセスする段階、申込フォームに入力を始める段階、そして申込を完了する段階です。
問題は、この4段階がそれぞれ別のツールで管理されていることです。メール配信ツールには開封率やクリック率が残り、Webサイトのアクセス解析にはページ閲覧数や滞在時間が記録され、フォーム作成ツールには入力開始数と完了数が蓄積され、顧客管理ツールには申込者の属性情報が保存されます。これらが連携していないため、たとえばメールを開封した人のうち何割がフォームまで到達したのかを把握するには、手作業でデータを突き合わせる必要があります。
データが分断されていると、イベント終了後の振り返りが感覚的なものになります。メールの開封率が低かったから件名が悪かったのではないか、申込が少なかったからイベント内容に魅力がなかったのではないか、といった推測の域を出ません。
実際には、メールの開封率は高いのにクリック率が低い場合は本文の訴求内容に問題がありますし、Webページの閲覧数は十分なのにフォーム到達率が低い場合はページ構成に問題があります。こうした段階ごとの離脱原因を特定できないまま、次回も同じ告知方法を繰り返してしまうのが、集客が伸び悩む根本的な構造です。
効果の低い告知チャネルに時間を費やし続けることは、担当者の工数だけでなく、メール配信やWeb広告のコストも無駄にします。年間10回のイベントを開催する企業であれば、1回あたりの改善が5%の申込率向上につながるだけでも、年間では大きな差になります。離脱ポイントの可視化は、限られたリソースを正しい場所に集中させるための前提条件です。
離脱ポイントを特定するために最も大切なのは、告知から申込までの流れを1本のファネル(じょうご型の導線)として捉え、各段階の通過人数を数値で記録することです。
まず、自社のイベント集客における段階を明確に定義します。一般的には次の5段階です。メール送信数、メール開封数、告知ページ閲覧数、フォーム入力開始数、申込完了数。この5つの数値を毎回記録するだけで、どの段階で最も多くの人が離脱しているかが一目で分かります。
ファネルの全段階を同時に改善しようとすると、何が効いたのか分からなくなります。最も離脱率が高い1段階だけに集中して改善策を打ち、次回のイベントで効果を検証する。このサイクルを1回のイベントごとに1つずつ回すのが、確実に成果を出すための原則です。
4つのツールを完全に統合するのは、コストも技術的な難易度も高くなります。FitGapでは、各ツールからCSVやスプレッドシートにデータを集約し、1枚のファネル集計シートで突き合わせる方法を推奨します。完璧な自動連携よりも、週1回の手動集計でも確実にデータがつながっている状態を作ることが重要です。
このワークフローは、イベント告知の1〜2週間前に開始し、イベント申込締切後に振り返りを行うサイクルで運用します。担当者はマーケティングまたは広報の1名で十分です。
まず、イベント告知メールをBenchmark Emailで作成・配信します。このとき最も重要なのは、メール本文内のイベント告知ページへのリンクに、流入元を識別するためのパラメータを付与することです。具体的には、リンクURLの末尾に ?utm_source=email&utm_medium=newsletter&utm_campaign=event20250701 のような文字列を追加します。Benchmark Emailのエディタ上でリンクを設定する際に、このパラメータ付きURLを貼り付けるだけで完了します。
配信後、Benchmark Emailの管理画面で以下の数値を確認します。送信数、開封数、クリック数(告知ページへのリンクをクリックした人数)です。この3つの数値をGoogle スプレッドシートのファネル集計シートに転記します。転記のタイミングは、配信後48時間が目安です。メールの開封は配信後48時間以内にほぼ収束するためです。
SNSからの流入も計測したい場合は、SNS投稿用に別のパラメータ(utm_source=twitter など)を付けたURLを用意し、同じ告知ページに誘導します。
次に、告知ページの閲覧状況をGoogleアナリティクスで確認します。Googleアナリティクスの集客レポートで、ステップ1で付与したパラメータごとの流入数を確認できます。メール経由で何人が告知ページに到達したか、SNS経由では何人かが分かります。
告知ページから申込フォームへの遷移率も重要です。申込フォームにはformrunを使用します。formrunは申込フォームの作成と、入力データの管理を一つの画面で行えるツールです。formrunの管理画面では、フォームの表示回数と送信完了数を確認できます。この差が、フォームに到達したものの入力を途中でやめた人の数、つまりフォーム段階での離脱数です。
ここで取得する数値は、告知ページの閲覧数(メール経由)、告知ページの閲覧数(SNS経由)、フォーム表示数、申込完了数の4つです。これらもGoogle スプレッドシートのファネル集計シートに転記します。
formrunで申込が完了したデータは、CSVでエクスポートできます。このCSVには申込者の名前、メールアドレス、所属企業名などが含まれます。
Google スプレッドシートに、以下の列を持つファネル集計シートを作成します。段階名、人数、前段階からの通過率。ステップ1とステップ2で取得した数値を入力すると、たとえば次のような表が完成します。
メール送信数:1,000人。メール開封数:350人(開封率35%)。メールクリック数:70人(クリック率20%)。告知ページ閲覧数(メール経由):65人(到達率93%)。フォーム表示数:30人(フォーム到達率46%)。申込完了数:22人(フォーム完了率73%)。
この例では、告知ページからフォームへの遷移(46%)が最大のボトルネックです。告知ページの内容や申込ボタンの配置を改善すべきだと判断できます。
次に、申込完了者の属性分析を行います。formrunからエクスポートしたCSVをHubSpotにインポートします。HubSpotは無料枠でもコンタクト管理機能が使えるため、申込者の業種・役職・過去のイベント参加履歴などの属性を蓄積できます。回を重ねるごとに、どの属性の人が申込に至りやすいかが見えてきます。この情報は、次回の告知メールのターゲティングや訴求内容の調整に直接活用します。
振り返りの頻度は、イベント申込締切後3営業日以内に1回です。所要時間は30〜60分程度です。ファネル集計シートの数値を確認し、最も離脱率が高い1段階を特定し、その段階に対する改善策を1つだけ決めて、次回のイベント告知で実行します。
Benchmark Emailは、日本語のUIが整備されており、HTMLメールの作成からA/Bテスト、開封・クリックの計測までを1つの画面で完結できます。特にクリック計測の精度が高く、どのリンクが何回クリックされたかをリンク単位で確認できるため、メール本文内のどの訴求が効果的だったかまで分析できます。無料プランでもメール配信と基本的な計測機能が使えるため、まず試してみるハードルが低い点も利点です。一方、メール配信数が増えると有料プランへの移行が必要になります。また、メール以外のチャネル(SNSやWeb広告)の計測はBenchmark Email単体ではできないため、Googleアナリティクスとの併用が前提になります。
Googleアナリティクスは、Webサイトのアクセス解析ツールとして最も普及しており、無料で利用できます。ステップ1で付与したパラメータを使えば、メール・SNS・Web広告など流入経路ごとの閲覧数や直帰率を正確に把握できます。ただし、Googleアナリティクス4(GA4)はレポート画面の操作に慣れが必要です。初めて使う場合は、探索レポートでパラメータ別の流入数を表示する設定に30分ほどかかることを見込んでおいてください。また、Googleアナリティクスだけではフォームの入力途中離脱までは追えないため、formrunとの役割分担が必要です。
formrunは、フォームの作成・公開・回答管理・チーム内での対応ステータス管理までを一画面で行えるツールです。フォームの表示回数と送信完了数の差分から、フォーム段階での離脱数を把握できます。回答データはCSVエクスポートに対応しているため、Google スプレッドシートやHubSpotへのデータ連携も容易です。注意点として、無料プランではフォーム数や回答数に制限があるため、月に複数のイベントを開催する場合は有料プランの検討が必要です。
HubSpotの無料CRM機能を使うことで、申込者の属性情報を一元管理できます。formrunからエクスポートしたCSVをインポートするだけで、申込者の業種・役職・過去の参加回数などを蓄積できます。回を重ねるごとに、申込に至りやすい属性パターンが見えてくるため、次回の告知メールの配信リストを絞り込んだり、訴求内容を属性に合わせて変えたりする判断材料になります。無料枠でもコンタクト数の上限が十分に大きいため、中小規模のイベント運営であればコストをかけずに運用できます。ただし、HubSpotの機能は多岐にわたるため、最初はコンタクト管理とリスト機能だけに絞って使い始めることを推奨します。
各ツールから取得した数値をGoogle スプレッドシートに集約することで、ファネル全体の通過率を一目で把握できます。高度なBIツールを導入しなくても、5段階の数値と通過率を並べるだけで、ボトルネックは明確になります。複数人での同時編集やコメント機能を使えば、振り返りミーティングの場でリアルタイムに改善策を書き込むこともできます。手動転記の手間はかかりますが、イベント1回あたり15分程度の作業です。自動化よりも、まずデータがつながっている状態を確実に作ることを優先してください。
| Tool | Role | Pricing | Implementation time | Notes |
|---|---|---|---|---|
| Benchmark Email | メール配信と開封・クリック計測 | 無料枠あり | 1〜2時間(初回テンプレート作成含む) | パラメータ付きURLの発行がポイント。A/Bテスト機能で件名の効果検証も可能。配信数が増えると有料プランへの移行が必要。 |
| Googleアナリティクス | 告知ページの流入経路別アクセス解析 | 無料 | 30分〜1時間(GA4の探索レポート設定) | 計測タグが未設置の場合は事前にWebサイトへの設置が必要。パラメータ別レポートの作成に慣れが必要だが、一度設定すれば使い回せる。 |
| formrun | 申込フォームの作成と入力離脱の把握 | 無料枠あり | 30分(フォーム作成・公開まで) | フォーム表示数と送信完了数の差分で離脱を把握。CSVエクスポートでHubSpotやスプレッドシートへの連携が容易。無料プランではフォーム数に制限あり。 |
| HubSpot | 申込者の属性管理と次回告知のターゲティング | 無料枠あり | 1時間(初回のコンタクトインポートとリスト設定) | 無料CRM機能でコンタクト管理とリスト作成が可能。最初はコンタクト管理機能だけに絞って運用を開始するのが現実的。 |
| Google スプレッドシート | ファネル全体の数値集約と離脱率の可視化 | 無料 | 15分(テンプレートシート作成) | 各ツールから手動で数値を転記。イベント1回あたり15分程度の作業。テンプレートを一度作れば毎回使い回せる。 |
イベント集客の改善は、すべてのデータを完璧に統合することから始める必要はありません。メール配信の開封・クリック数、告知ページの閲覧数、フォームの表示・完了数という5つの数値を1枚のシートに並べるだけで、どこで最も多くの見込み参加者を失っているかが見えてきます。
最初の一歩として、次回のイベント告知でパラメータ付きURLを発行し、配信後48時間の数値をファネル集計シートに記録してください。その1枚のシートが、感覚ではなくデータに基づいた集客改善の起点になります。
Mentioned apps: Benchmark Email, Googleアナリティクス, formrun, Sales Hub, Google カレンダー
Related categories: MAツール, オフィススイート, フォーム作成, 営業支援ツール(SFA)
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