給与計算のやり方を徹底解説!押さえるべきチェックリストも
給与計算は、企業にとって避けて通れない重要な業務の1つです。しかし、複雑な法律や頻繁に変わる税制、社会保険料の算出など、正確に処理するためには多くの知識が必要になります。間違いがあれば従業員との信頼関係に影響し、場合によっては法的なトラブルにも発展する可能性があります。
この記事では、給与計算の基本的なやり方や手順を解説します。また、実務で注意すべきポイントや効率化の方法なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
給与計算のやり方
給与計算は、社員に支払うべき給料を正確に算出し、法律に基づいた控除を行う重要な業務です。間違いがあってはならないため、正しいやり方を理解する必要があります。以下で、給与計算の方法をステップごとに詳しく解説します。
①勤怠情報を集計する
まずは、出勤日数・勤務時間・残業・有給・遅刻・早退・欠勤などの従業員の勤怠情報を収集します。給与の支給額や控除額に大きく関わるため、正確なデータ取得が不可欠です。
タイムカードや勤怠管理システムから情報を収集する際は、データの漏れや重複がないか必ず確認してください。特に、月をまたいだ勤務や深夜勤務がある場合は、労働基準法に基づいた時間外労働の集計が必要になります。
また、有給休暇の取得日数や欠勤控除の対象となる日数も正確に把握する必要があります。
②支給額を計算する
基本給をベースに、残業代や手当などを加えて「総支給額」を計算します。
【例】
- 基本給:250,000円
- 残業代:20,000円(20時間 × 1,250円)
- 通勤手当:10,000円
- 家族手当:5,000円
- 総支給額:285,000円
残業代の計算では、基本給から時間単価を正確に算出することが重要です。月給制の場合は「基本給 ÷ 所定労働時間」で時間単価を求め、時間外労働には1.25倍、深夜労働には0.25倍の割増率を適用します。
また、各種手当も支給要件を満たしているか確認が必要です。通勤手当は非課税限度額を超えないか、家族手当は扶養家族の変更がないかなど、詳細な確認を怠らないようにしましょう。
③控除額を計算する
総支給額から法律や制度に基づいた「控除」を行います。
- 所得税:給与額と扶養人数に基づく源泉徴収税額表で算出
- 住民税:前年所得に応じて自治体から通知される金額
- 健康保険:加入している健康保険組合の保険料率に基づいて計算
- 厚生年金:標準報酬月額に応じて国で定められた保険料率を適用
- 雇用保険:総支給額に対して一定の料率をかけて算出
控除計算では、それぞれの算出基準や料率が異なるため注意が必要です。所得税は月額表と日額表があり、給与の支払い方法によって使い分けます。
健康保険や厚生年金は、標準報酬月額に基づいて計算されるため、昇給や手当の変更があった場合は標準報酬月額の見直しも必要になります。また、雇用保険料は業種によって料率が異なるため、自社の業種に適用される料率を正確に把握しておくことが大切です。
④差引支給額(手取り)を算出する
最終的に社員に支払う「差引支給額(手取り給与)」を算出します。差引支給額は、「総支給額 - 控除額」で求められます。
この段階では、計算結果に明らかな異常値がないか確認することが重要です。前月との差額が大きい場合は、その理由を明確にしておきましょう。昇給や手当の変更、控除項目の増減など、変更要因を把握しておくことで、従業員からの問い合わせにも適切に対応できます。
また、差引支給額がマイナスになる場合(控除額が総支給額を上回る場合)は、労働基準法に基づいた適切な処理が必要になります。そのため、専門知識を持つ担当者や社会保険労務士に相談することをおすすめします。
⑤給与明細の発行と給与振込を行う
計算結果をもとに給与明細を作成し、社員へ配布します。また、指定された銀行口座に差引支給額を振り込みます。
⑥税金や保険料の納付・申告を行う
給与から差し引いた税金や社会保険料は、期日までに所定の機関に納付・申告します。
- 所得税:翌月10日までに源泉所得税として納付
- 社会保険料:翌月末までに支払い
- 労働保険(年1回または分割)、住民税(特別徴収)なども対応が必要
各種納付には厳格な期限が設けられています。源泉所得税の納付が遅れると、不納付加算税が課される可能性があるため注意しましょう。
また、社会保険料も延滞金が発生する場合があるため、計画的な資金準備と確実な手続きが必要です。特に、年末調整や労働保険の年度更新など、年次で行う手続きは、必要書類の準備期間も考慮して早めに取り組むことをおすすめします。
【チェックリスト】給与計算を行う上で押さえるべきポイント
給与計算を正しく行うためには、単に計算方法・手順を覚えるだけでなく、周辺のルールや実務上の重要ポイントも押さえておく必要があります。以下に、実務で見落とされがちな給与計算で押さえておくべきポイントをチェックリストとしてまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 雇用形態と社会保険 | 正社員・パート・契約社員など雇用形態別に、計算方法や社会保険加入要件(例:週20時間以上)を確認しているか |
| 勤怠情報 | 出勤・欠勤・残業・有給などの勤怠データを正しく取得・管理しているか(年5日の取得義務含む) |
| 支給項目 | 基本給、各種手当(通勤・住宅・家族など)、賞与を正確に計算・反映しているか |
| 残業・深夜・休日手当 | 法定割増率(残業125%、深夜25%、休日35%など)や36協定の上限を正しく反映しているか |
| 最低賃金 | 各地域の最低賃金・特定最低賃金を時給換算で下回っていないか |
| 非課税限度額 | 通勤手当(月15万円)、出張旅費などの非課税枠を超えていないか |
| 控除項目 | 所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険などの控除が正しく処理されているか |
| 扶養控除・控除要件 | 扶養控除、配偶者控除などの適用条件と金額が正しいか |
| 雇用保険料率 | 業種に応じた正しい雇用保険料率を適用しているか |
| 標準報酬月額 | 昇給・降給・手当変更があった場合、社会保険の算定基礎を見直しているか |
| 差引支給額 | 総支給額から控除額を引いた手取り金額が正確か |
| 給与明細の作成・配布 | 給与明細を適切な形式(紙・PDF・Web)で配布しているか |
| 給与支給日 | 労基法に則り、就業規則どおりの支給日で振込されているか |
| 税・保険料の納付 | 所得税(翌月10日)、社会保険(翌月末)、住民税(特別徴収)の納期を守っているか |
| 年末調整・賞与支払届 | 年末調整や賞与支給時の必要処理(賞与支払届提出など)を行っているか |
| 住民税の更新 | 6月からの新年度住民税額を反映し、特別徴収で正しく処理しているか |
| マイナンバー | 給与関連で取得したマイナンバーを厳重に保管・管理しているか |
| 情報セキュリティ | 給与データや個人情報を適切に暗号化・アクセス制御しているか |
| 法改正への対応 | 社会保険料率や税制改正などの最新情報を常に把握・反映しているか |
給与計算を正確に行うためには給与計算ソフトが必要
上記で示したように、給与計算には、法令順守・正確性・業務効率・情報管理といった多くの要素が求められます。これらを手作業で行うのは負担もリスクも大きいため、給与計算ソフトの導入が必要となります。ここでは、給与計算ソフトの導入が特に重要な理由を解説します。
複雑な計算を自動化してミスを防げる
給与計算では、基本給や残業代、各種手当、税金、社会保険料など、多くの変数が複雑に絡み合います。給与計算ソフトは、これらの計算をすべて自動化し、手作業によるミスを防げます。特に、割増賃金や扶養人数による源泉所得税の違いなど、人が見落としやすい要素も正確に処理されます。
また、計算過程が透明化されるため、結果に疑問が生じた場合でも簡単に検証できます。残業代の端数処理や社会保険料の等級判定なども、法令に基づいて自動的に処理されるため、担当者の知識不足による誤りも防げます。
法改正や保険料率変更に自動対応できる
税制や社会保険料の料率は毎年変更されることが多く、常に最新情報を把握し手計算に反映するのは困難です。給与計算ソフトなら、法改正に自動で対応するため、担当者が細かくチェックする必要がなくなります。常に最新の法令に基づいた正確な計算が可能になるため、法令順守の観点でも安心です。
給与明細や年末調整を簡単に作成・配布できる
給与計算ソフトは、毎月の給与明細の作成・配布、年末調整、賞与の処理など、特別な手続きにも対応しています。紙やExcelで対応するよりもはるかに手間が省け、人的ミスの削減と時間短縮につながります。
また、電子配布機能を活用することで、印刷・配布コストの削減やペーパーレス化にも貢献します。賞与計算でも、通常の給与とは異なる税率や社会保険料の取り扱いを正確に処理できるため、安心して運用できます。
情報漏洩リスクを減らせる
給与情報には、マイナンバーや個人の収入・扶養状況といったセンシティブなデータが含まれます。給与計算ソフトでは、ユーザーごとのアクセス権限設定により、必要な人だけが必要な情報にアクセスできる仕組みが整っています。
また、データの暗号化やバックアップ機能により、情報漏洩や データ消失のリスクを最小限に抑えられます。操作ログの記録機能もあるため、万が一の際には迅速な原因究明と対応が可能です。個人情報保護法や マイナンバー法の要求水準を満たすセキュリティ対策が標準装備されている点も、企業にとって大きな安心材料となります。
属人化を防げる
給与計算を特定の担当者のみに依存していると、急な退職や休職時に業務が止まってしまう恐れがあります。給与ソフトを導入すれば、計算ロジックや履歴がシステム上に残るため、誰でも引き継ぎやすい仕組みが整い、業務の標準化にもつながります。
新しい担当者でも、システムの操作方法を覚えることで同じ品質の給与計算が可能になります。また、過去の計算履歴や設定変更の記録も保持されるため、疑問点が生じた際の確認作業も効率的に行えます。
まとめ
給与計算は、法令順守・社員の信頼・経営リスクの管理にも関わる重要な業務です。基本的な計算手順を理解し、法改正への対応や正確性の確保を継続的に行うことが求められます。
ただし、手作業での給与計算には限界があり、ミスのリスクや業務効率の問題を抱えています。給与計算ソフトを活用することで、業務の効率化だけでなく、正確性・セキュリティ・法令対応も強化できます。特に、複雑な計算の自動化や法改正への自動対応、情報管理の安全性向上、業務の標準化など、多くのメリットを得られます。
適切な給与計算システムの導入と運用により、従業員との信頼関係を維持し、企業としてのコンプライアンス体制を確立することができるでしょう。
自社に最適な給与計算ソフトを見つけるには?
給与計算ソフトは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。
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