社内アンケートの回答率の目安は？効果的な向上方法も解説

社内アンケートを有効に活用するためには、一定以上の回答率を確保することが欠かせません。回答率が低いままだとデータの信頼性が下がり、せっかくの調査結果が組織改善に結びつかない恐れもあります。

この記事では、社内アンケートの平均的な回答率の目安や、回答率が低い場合に起こりうる問題、効果的に向上させるための具体策を解説します。自社のアンケート運用を見直し、より信頼性の高いデータをもとにした組織改善につなげるためのヒントとしてお役立てください。

社内アンケートの回答率の目安は？

社内アンケートの回答率については、厚生労働省や総務省といった公的機関が共通の基準値を定めているわけではありません。企業ごとにアンケートの目的や対象範囲、設問数、設計の仕方が異なるため、一律の基準を設けられないのが理由です。

そのため、回答率が適切かどうかを判断する際は、アンケートの目的や形式、自社の状況に照らし合わせて妥当性を見極めることが大切になります。

一般的な回答率の目安は50〜70％程度

公的な基準こそ存在しないものの、組織サーベイを提供する民間企業や各種調査資料では、目安として「50％を超えると一定の分析が可能」「70％以上で信頼性が高い」といった基準が示されることが少なくありません。

例えば、大手リサーチ会社マクロミルの調査では、社内アンケートの平均回答率は77％という結果が出ています。

ただし、これらはあくまで参考値であり、自社の目標をそのまま決める指標にはなりません。組織規模や業界特性、アンケートの頻度などによって適切な水準は大きく変わります。他社の数字をそのまま採用するのではなく、自社の目的や状況に合った回答率を見極める姿勢が求められます。

アンケートの種類によって適正な回答率は異なる

アンケートの種類によって、求められる回答率が変わる点にも注意が必要です。

例えば、従業員満足度調査（ES調査）は経営施策の判断材料になるため、60〜70％以上を目標にする企業が多く見られます。エンゲージメント調査も改善施策の精度を高める必要があることから、より高い回答率を求めるケースが一般的です。

一方で、スポット的に行う意識調査や簡易アンケートは内容が軽く、対象も限定されることが多いため、50％前後でも十分な場合があります。このように、どの程度の精度で分析したいかによって、目標とすべき回答率は大きく変わります。

重要なのは、アンケートの目的をはっきりさせ、その目的を達成するために必要な回答率を逆算して設定することです。目的と分析レベルに合った目標値を定めることで、より意味のあるアンケート運用が実現できます。

社内アンケートの回答率が低いと何が問題なのか？

社内アンケートの回答率が低いままだと、集まったデータの信頼性が下がり、組織改善の根拠として活用しづらくなります。加えて、重要な課題を見落としたり、施策の方向性を誤ったりするリスクも高まります。ここでは、回答率の低さが企業の意思決定にどんな影響を及ぼすのかを解説します。

データの信頼性が低くなる

社内アンケートの回答率が低い場合、母集団を十分に反映したデータが集まらず、統計的な偏りが生じやすくなります。特定の層だけが回答している可能性が高まり、従業員全体の実態を正しく捉えにくくなる点が大きな問題です。

例えば、アンケートに前向きな人だけが回答し、課題を抱えている層の声が吸い上げられないまま終わってしまうケースも考えられます。こうした偏りが発生すると、データから導き出した結論が実際の組織状況とかけ離れてしまい、改善施策の方向性を誤るリスクが高くなります。

課題の見落としが発生する

不満を抱えている従業員や、日々の業務で忙しい従業員ほどアンケートへの回答を後回しにしがちです。そのため、組織が把握すべき重要な課題がデータに反映されない危険があります。

特に、離職リスクの高い層や職場環境に不満を抱く従業員の声が集まらない状況では、人材流出のサインを見逃したり、深刻な問題を放置してしまったりする恐れが生まれます。

改善施策の根拠が弱くなる

回答者に偏りがあると、アンケート結果を施策の根拠として提示したときの説得力が大きく下がってしまいます。部署や職種ごとの課題を比較しづらくなり、どこに優先的に取り組むべきか、どの施策が効果的かといった判断も不明確になります。

また、経営層や管理職へ改善提案を行う際にも「このデータは本当に信頼できるのか？」という懸念が生まれ、必要な予算や人員を確保しにくくなる恐れがあります。信頼性の低いデータは、組織改善のスピードや質に影響を与えてしまうのです。

従業員の信頼を失う可能性がある

アンケートを実施しても改善が見えない状況が続くと、従業員の間に「どうせ反映されない」という不信感が広がり、回答率がさらに下がる悪循環に陥りがちです。こうした状態が続くと、アンケート文化自体が形だけのものとなり、組織と従業員の間で本来生まれるはずの建設的な対話の機会が失われてしまいます。

一度損なわれた信頼を取り戻すには多くの時間と労力が必要になるため、早い段階から適切にアンケートを運用し、回答が確実に改善施策へつながることを示す姿勢が欠かせません。

組織の意思決定が誤った方向へ進むリスクが生まれる

回答率の低いデータを前提に施策を進めてしまうと、組織の実態とズレた判断を下す危険があります。特に、人的配置や離職防止、働き方改革といった重要な領域では、その影響がより深刻です。

誤った方針に基づいて投資を行えば、時間やコストが無駄になるだけでなく、従業員の不満を増幅させてしまう可能性もあります。

社内アンケートの回答率を上げる方法

社内アンケートの回答率を高めるには、適切な工夫と仕組みづくりが欠かせません。ここでは、効果が高い具体的な施策を紹介します。

アンケートの目的を明確に伝える

回答率が伸びない大きな要因の1つが、従業員が「なぜ答える必要があるのか」を理解できていないことです。アンケートの目的や、結果をどのように改善施策へつなげるのかを事前にわかりやすく伝えることで、参加へのモチベーションは大きく変わります。

例えば、アンケートを実施する背景や、過去の結果が実際の施策にどう反映されたのかを具体例とともに説明すると、回答する価値をイメージしやすくなります。また、経営陣からのメッセージを添えることで、組織として真剣に取り組んでいる姿勢を示すことができ、協力を得やすくなるでしょう。

設問数を絞って回答負担を減らす

質問数が多すぎるアンケートは、途中離脱が増えやすく、結果として回答率の低下につながります。目的達成に必要な項目に絞り込み、短時間で答えられる構成にすることが重要です。一般的には、5〜10分程度で完了できる分量が理想とされています。

また、設問の内容が複雑だったり、表現が曖昧だったりすると回答のハードルが上がってしまいます。誰でも迷わず選べるよう、明確な選択肢を用意し、シンプルで理解しやすい質問設計を意識することが効果的です。

回答しやすい環境（心理的安全性）を整える

回答内容から個人が特定される可能性があると、従業員は正直な回答を避けたり、そもそもアンケートに参加しなくなったりします。そのため、回答を匿名化し、個人が識別されない形でデータを扱うことを明確に示すことが欠かせません。

特に、管理職への評価や職場の人間関係など、センシティブな内容を含むアンケートでは、匿名性の担保が信頼形成の鍵になります。

さらに、収集したデータの扱い方や、誰が閲覧できるのかといった運用ルールを事前に整理し、従業員へ丁寧に説明することで、「安心して回答できる」という心理的安全性を高められます。こうした配慮が、回答率向上につながる大きな要素になります。

回答しやすいタイミングを選ぶ

繁忙期や業務が立て込みやすい時期にアンケートを実施すると、どうしても回答が後回しになり、結果として回答率が下がりがちです。業務負荷が比較的落ち着いているタイミングを選べば、従業員の負担を軽減でき、参加しやすい環境をつくれます。

そのためには、各部署の業務サイクルを把握し、全社的に余裕がある時期を見極めることが重要です。特に、月末・月初、年度末・年度始めといった繁忙期は避け、できるだけ平常運転の時期を選ぶことで、回答率を高めやすくなります。

リマインドを適切な間隔で実施する

初回の案内だけでは見落としや後回しが起きやすいため、締切前に適度なタイミングでリマインドを行うことは非常に効果的です。ただし、何度も催促すると負担感や反発を生み、かえって回答率が下がる恐れがあるため、回数は必要最小限に絞ることが大切です。

一般的には「実施開始から3〜5日後」と「締切の2〜3日前」に送る2回パターンがよく使われています。

また、リマインドを送る際は未回答の従業員のみに配信し、すでに回答している人にはお礼のメッセージを届けることで、より丁寧で心地よいコミュニケーションが保てます。この小さな配慮が、アンケートに対する従業員の協力度を高めるポイントになります。

スマホで回答できる仕組みを整える

PCが使えない時間帯でも回答できるようにスマホ対応を整えておくと、従業員が回答できる場面が格段に広がります。通勤中や休憩中など、ちょっとした隙間時間を活用して回答してもらえるため、結果として回答率の向上につながります。

さらに、スマホ画面に最適化したレイアウトや、タップしやすいボタン配置を工夫することで、ストレスなく回答できる環境を整えられます。ユーザビリティを高めることで、「面倒だから後でいいや」という離脱も防ぎやすくなります。

結果の活用状況をフィードバックする

アンケートの結果が実際の改善につながっていると感じられると、従業員は「回答すれば職場がよくなる」と実感しやすくなります。この認識が広がることで、次回以降の回答率が着実に上がっていきます。

そのためには、前回のアンケート結果をもとにどんな改善施策を実行し、どのような効果があったのかを丁寧に共有することが不可欠です。従業員の声がきちんと経営に届き、実際のアクションにつながっていることを示すことで、アンケートへの信頼が高まり、協力も得やすくなります。

回答率向上のために従業員アンケートツールを活用しよう

回答率を高めるためには、「回答しやすい環境づくり」「運用プロセスの効率化」「集めたデータの適切な活用」という3つの要素が揃っている必要があります。

従業員アンケートツールを活用すれば、これらの条件をまとめて整えられ、担当者の負担が大きくなりがちなアンケート運用を標準化できます。ここでは、従業員アンケートツールが回答率の向上に寄与する主な理由を紹介します。

入力フォームが見やすく負担が少ない

従業員アンケートツールは、回答画面が見やすく操作も直感的にできるよう設計されています。そのため、回答にかかる負担を大幅に軽減でき、途中離脱を防ぎやすくなります。

例えば、プログレスバーで回答の進捗がひと目でわかるようになっていたり、選択肢がタップしやすい大きさで配置されていたりと、ユーザーエクスペリエンスを高める工夫が随所に施されています。

また、入力ミスが起きた際にはわかりやすいエラーメッセージやガイダンスが表示されるため、回答者が迷わず最後までスムーズに回答できる仕組みが整っています。

スマホ・マルチデバイス対応で回答しやすくなる

従業員アンケートツールを導入すると、スマホやタブレットからもストレスなく回答できる環境が整います。これにより、従業員は空いた時間を使って気軽に回答しやすくなり、参加率が自然と高まりやすくなります。

また、どのデバイスでも同じ操作感で利用でき、画面サイズに合わせてレイアウトが自動で最適化されるため、端末による不便さがありません。

特に、外回りが多い営業職や、現場で作業する従業員など、PCに触れる機会が少ない人にとっては大きなメリットです。利用シーンを問わずスムーズに回答できる環境が整えば、組織全体の回答率向上にもつながります。

自動リマインド機能で回答漏れを防げる

担当者が手作業でリマインドメールを送る場合、送信のタイミングがバラついたり、対象者の選定に漏れが出たりしがちです。また、忙しい業務の合間に個別対応を行うのは負担も大きく、運用が属人化する原因にもなります。

従業員アンケートツールを使えば、未回答者に対して自動でリマインドが送られるため、必要な人に必要な頻度で確実に通知が届きます。これにより回答漏れを防止でき、回答率向上に直結します。

さらに、リマインドの送信タイミングや文面も事前に設定できるため、担当者の手間をかけずに一貫性のあるコミュニケーションを維持できます。運用の負担を減らしつつ、精度の高いアンケート実施が可能になります。

集計が自動化されるため担当者の負担が軽減する

担当者が集計作業に時間を取られてしまうと、アンケートの実施頻度が下がったり、内容の質が低下したりする原因になります。従業員アンケートツールを使えば、回答データは自動で集計されるため、担当者は分析や改善施策の立案といった本質的な業務に集中できます。

さらに、回答状況や回答率をリアルタイムで確認できるため、必要に応じて追加のリマインドを送るなど、柔軟な対応が可能です。手作業での集計にありがちな入力ミス・計算ミスも防げるため、データの正確性が高まり、より信頼性の高い分析が行えるようになります。

部署別・属性別の分析で改善施策の精度が上がる

従業員アンケートツールを活用すると、回答者の属性（部署・役職・勤務地など）ごとの傾向が自動的に可視化されます。これにより、どの層にどんな課題があるのかを正確に把握でき、改善すべきポイントが明確になります。

また、施策を実施した後の効果検証もしやすくなるため、改善サイクルを回しやすくなり、結果として次回アンケートの回答率向上にもつながります。

さらに、グラフやチャートによって結果が直感的に理解できる形で表示されるため、経営陣や現場マネージャーへの報告もスムーズに行えます。見やすいレポート機能は、意思決定のスピードを高める上でも大きなメリットです。

回答率の推移を継続的にモニタリングできる

従業員アンケートツールを使うと、回答率の推移が自動的に記録され、年度ごとの比較や施策の効果検証が簡単に行えます。数値に基づいて回答率を管理できるため、改善に向けたPDCAサイクルを回しやすくなる点が大きなメリットです。

また、過去データとの比較により、実施した施策がどの程度効果を発揮したのかを客観的に評価でき、次回のアンケート設計や実施タイミング、リマインド方法などの改善にもつなげられます。こうした継続的なデータ活用が、回答率の安定向上とアンケート文化の定着に貢献します。

まとめ

社内アンケートの回答率には公的な基準こそありませんが、多くの企業では50〜70％程度が妥当な目安として扱われています。ただし、実際にどの水準を目標とするかは、アンケートの目的や対象、種類によって変わるため、自社の状況に合わせて判断することが欠かせません。

従業員アンケートツールを活用すれば、回答しやすい環境の整備と運用の効率化を同時に実現できます。アンケートを実施して終わりにするのではなく、結果を確実に組織改善へ反映し、その成果を従業員へフィードバックすることで、次回以降の回答率が自然と高まる「よい循環」をつくることが大切です。

自社に最適な従業員アンケートツールを見つけるには？

従業員アンケートツールは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。

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