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2025.11.28

会計不正の種類や具体例!兆候の見抜き方や防止策も紹介

企業の会計不正はここ数年で急増しています。会計不正は単なるミスではなく、企業の信用を根底から揺るがす重大なリスクです。

金融商品取引法では「虚偽記載」として処分の対象になり、上場廃止や刑事責任に発展するケースもあります。会社法でも帳簿の正確な記録・保存が義務付けられており、違反すれば法的責任を問われる可能性は十分にあります。

この記事では、会計不正の種類や起きる理由、兆候の見抜き方、防止策を解説します。内部統制を強化したり、経理プロセスを見直したりするために、ぜひ参考にしてください。

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会計不正とは?

会計不正とは、企業が財務状況を実際よりよく見せるために、売上・費用・資産・負債などを意図的に操作する行為を指します。金融商品取引法では「虚偽記載」とされ、架空売上、費用隠し、在庫の水増しなどが典型例です。

会社法でも帳簿の正確な記録と保存が義務付けられており、会計不正はこれらに反する重大な違反行為となります。会計不正は企業の信用を失墜させ、投資家・取引先・金融機関など、ステークホルダーの判断を誤らせる深刻なリスクをもたらします。

会計上の誤りとの違い

不正は「意図がある」点で、単なる会計処理ミスと明確に区別されます。誤りは偶発的な計算ミスや基準理解不足によるもので、発見次第ただちに訂正すべきものです。一方、不正は虚偽記載・改ざん・記録隠しなど、故意に行われる操作を指します。

金融庁や監査法人の調査では、この意図性の有無が判断の最重要ポイントです。例えば、収益認識基準の誤解による誤計上は「誤り」ですが、数値目標達成のために売上計上時期を意図的に前倒しする行為は「不正」とみなされます。

また、内部統制上も、誤りを減らす仕組みと不正を防ぐ仕組みは役割が異なるため、両者を別の対策として設計する必要があります。

企業の会計不正は増えている

企業の会計不正は増えている

2024年度に会計不正を公表した企業は56社に達し、前年度比24%増、過去10年間で最多となりました。

参考:企業の会計不正、24年度2割増 統治改革であぶり出し|日本経済新聞

特に中堅・成長企業では、急速な事業拡大に管理体制が追いつかず、不正リスクが高まりやすい傾向があります。さらに、電子帳簿保存法やインボイス制度などの法改正が相次ぎ、対応不備が不正発生の温床となるケースも見られます。

加えて、金融庁や監査法人による監視強化が進んだことで、これまで表面化しにくかった不正が発覚しやすくなっている点も、件数増加の一因といえます。

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会計不正の主な種類と具体例

会計不正はいくつかの種類に分類でき、手口ごとに特徴や発見のポイントが異なります。そのため、どのタイプの不正が起こり得るかを把握しておくことが重要です。ここでは、代表的な会計不正の種類と具体例を紹介します。

売上の不正計上

売上の不正計上には、存在しない取引を計上する架空売上と、契約・出荷が完了していないのに売上を計上する前倒し計上が代表的です。いずれも決算数値を一時的によく見せる際によく使われる典型的な手口です。

架空売上では、実在しない顧客との取引を作り上げたり、関連会社間で実体のない売買を計上したりします。前倒し計上では、本来は翌期に計上すべき売上を当期に組み込み、目標達成を装います。

これらはいずれも金融商品取引法上の虚偽記載に該当し、有価証券報告書の訂正命令や課徴金納付命令の対象になります。金融庁の公表事例でも、売上不正は最も多い不正類型として知られています。

費用・損失の隠蔽

費用・損失の隠蔽とは、本来当期に計上すべき費用を翌期以降へ先送りしたり、損失計上を意図的に避けたりする行為です。研究開発費や広告費、棚卸減耗費など、多くの費用項目で発生し得ます。

例えば、当期の広告費を前払費用として資産計上し、翌期以降に費用化することで、当期の利益を実際より大きく見せるケースがあります。また、不良債権が発生しているにもかかわらず貸倒引当金を適切に計上しない、減損の兆候がある固定資産に対して減損処理を行わないといった行為も同様です。

費用を先送りすれば一時的に利益を改善できますが、翌期以降に負担が押し寄せるため、継続的かつ深刻な不正に発展しやすい点が大きなリスクとなります。

在庫・資産の不正

在庫・資産に関する不正には、棚卸資産を実際より多く計上する架空在庫や、価値が下落した資産に評価損を計上せず帳簿価額を維持する行為が含まれます。棚卸資産の不正は、有価証券報告書の訂正命令でも頻出する典型的な類型です。

架空在庫では、存在しない商品・原材料を帳簿上に計上し、売上原価を実際より小さく見せることで利益を水増しします。また、滞留在庫や陳腐化した在庫に対して評価損を計上しないことで、資産を過大に表示するケースもあります。

棚卸資産は期末に実地棚卸が行われるため不正が発覚しやすい一方、倉庫が複数ある場合や外部倉庫を利用している場合は確認が甘くなり、不正が見抜きにくくなるという弱点もあります。

循環取引

循環取引とは、複数の企業が資金や商品をぐるぐると循環させ、実態のない売上や仕入を計上する不正です。売上を水増しする典型的な手口として扱われています。

代表的な例では、A社→B社→C社→A社のように資金や商品が環状に移動し、各社が売上を計上します。しかし、実際には商品の移動が存在しなかったり、形だけの移動で実需が伴わなかったりするため、実質的な取引とはいえません。

循環取引は複数企業が関与するため発覚しにくく、関係会社間で行われるケースも多いのが特徴です。外部からの指摘が入らない限り、長期間継続してしまうこともあります。金融庁の監査事務所検査でも、循環取引の見逃しは繰り返し問題視されています。

固定資産・投資有価証券の評価操作

固定資産や投資有価証券の評価操作は、減損を適切に認識せず、企業価値を実態以上に見せるための不正です。特に、不動産や投資有価証券では、減損処理を意図的に先送りする事例が多く見られます。

固定資産は、収益性が低下して回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、減損損失の計上が必要です。しかし、この判定を意図的に行わない、将来キャッシュフローを過大に見積もるなどして減損を回避するケースがあります。

投資有価証券でも、時価が著しく下落した際には評価損を計上すべきところを、「一時的な下落」と判断して処理を先送りする不正が生じます。これらの評価操作は財務数値への影響が大きく、監査でも重要な不正リスク領域として位置付けられています。

意図的な会計基準の逸脱・不適切な会計処理

意図的な会計基準の逸脱・不適切な会計処理とは、単なる基準の誤解ではなく、会計基準の適用を故意にゆがめる行為を指します。収益認識や引当金、リース、減価償却など、基準の解釈に幅がある領域で発生しやすい不正です。

例えば、収益認識基準では「支配が移転した時点」で収益を認識しますが、この判断を意図的に誤り、実質的に支配が移っていない段階で売上を計上するケースがあります。また、退職給付引当金や賞与引当金の計算で、意図的に見積額を過少にして負債を小さく見せる行為も不適切な処理に該当します。

会計基準は複雑で、解釈の余地がある項目も多いため、その曖昧さを悪用した不正が生じやすい点が大きな特徴です。

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会計不正が発生する要因・背景

会計不正は単なる不注意ではありません。動機(プレッシャー)・機会(内部統制の弱さ)・正当化(自己理由付け)の3つが揃ったときに起こりやすくなります。これは一般に「不正のトライアングル」として知られています。ここでは、会計不正が発生する主な要因を解説します。

業績プレッシャーや財務目標の過度な重視

不正の動機として最も多く指摘されるのが業績プレッシャーです。利益計画の達成が強く求められる環境では、売上の前倒しや費用の先送りといった不正に手を染めやすくなります。

特に上場企業では、市場予想や前年実績を上回る業績が期待され、目標未達による株価下落や経営陣の評価低下を避けるために不正が行われるケースがあります。また、報酬制度が業績連動型の場合、個人の報酬を増やす目的で数字を操作する動機が生まれることもあります。

内部統制の弱さ

不正が発生する機会を生む最大の要因が、内部統制の不備です。承認フローが形骸化している、職務分掌が曖昧、監査が適切に行われていないといった状況では、不正が実行されても気づかれにくくなります。

例えば、承認印はあるものの中身が確認されていない、証憑との突合が省略されているといった状態は、不正を容易にします。また、システムのアクセス権限が不適切で、担当者が自由に仕訳を修正・削除できる環境も、不正の機会を広げる典型例です。

金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX)でも、内部統制の不備は重要な欠陥として指摘されており、企業にとって重大なリスクとなります。

経理部門の少人数体制・属人化

担当者が仕訳・承認・振込を1人で兼務している場合、牽制(チェック)が事実上働かず、不正が発生しやすい環境になります。中小企業で特に多く見られる典型的な要因です。

経理業務が特定の担当者に集中すると、その人だけが業務全体を把握する状態になり、不正を行っても発見されにくくなります。さらに、長期間同じ担当者が同じ業務を担当し続けると、不正の隠蔽手法が巧妙化し、リスクが高まります。

ガバナンス機能の低下

取締役会・監査役・内部監査部門が本来の役割を果たしていない場合、不正の発見や抑止は極めて難しくなります。例えば、以下のような状況ではガバナンスが機能しているとはいえません。

  • 取締役会が形式的な報告の場にとどまり議論が行われていない
  • 監査役が経営陣に遠慮して厳しい指摘を避けている
  • 内部監査部門の独立性が弱く経営陣の意向に左右されている

会社法では監査役に帳簿閲覧権などの権限が与えられていますが、実効性のある監査が行われなければ、不正の抑止にはつながりません。

不正を正当化する心理(自己合理化)

「一時的に数字を整えるだけ」「会社のためだから問題ない」といった自己正当化は、不正の最後の引き金となります。

不正を行う人の多くは「悪いことだ」と自覚しつつも、「次の期で取り戻せる」「上司の指示だから仕方ない」「会社の存続のために必要」といった理由付けを行い、自らの行為を正当化します。自己正当化の心理は、動機と機会が揃った状態で不正の実行を後押しします。

企業文化・組織風土の問題

成果主義の過度な強調や上層部への忖度、指摘しづらい雰囲気など、不正を許す組織風土が背景にある場合も、不正は発生しやすくなります。

例えば、達成困難な目標を課しながら手段を問わない文化、悪い報告をすると叱責される環境、経営陣に意見を言いづらい雰囲気は、不正の温床となります。また、前例踏襲を重んじ、新しいチェック体制の導入が進まない、不正の疑いがあっても波風を立てたくないと見過ごされるといった風土も問題です。

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会計不正が発覚した場合の法的リスクと企業の責任

会計不正が発覚すると、企業や経営陣は重大な法的責任を負います。行政処分や刑事責任だけでなく、株主・取引先からの損害賠償請求、社会的信用の失墜など、経営に深刻な影響が及びます。ここでは、企業が認識しておくべき主な法的リスクを紹介します。

金融商品取引法違反

上場企業が有価証券報告書や四半期報告書に事実と異なる内容を記載した場合、金融商品取引法上の「虚偽記載」に該当します。これにより、課徴金納付命令、訂正報告書の提出、行政処分などが科される可能性があり、過去にも多くの企業が処分対象となっています。

金融商品取引法では、虚偽記載があった場合に課徴金を科すことが定められており、その金額は違反内容や影響の大きさに応じて決まります。また、金融庁から訂正報告書の提出命令が出されれば、投資家に対して正しい情報を改めて開示しなければなりません。さらに、悪質なケースでは刑事告発に発展する可能性もあります。

上場廃止・取引停止

会計不正は、取引所規則に基づく上場廃止基準(重大な虚偽記載)に抵触する場合があります。虚偽記載によって投資家の判断が誤らされれば、株価急落・取引停止といった市場リスクが生じ、企業価値に大きな打撃を与えます。

東京証券取引所の上場廃止基準では、虚偽記載や不適正意見が重大と判断されると、上場廃止となる可能性があります。上場廃止になれば資金調達が困難になるだけでなく、企業としての社会的信用も失われます。

また、上場廃止に至らなくても「特設注意市場銘柄」への指定など、投資家からの信頼低下は避けられず、企業に大きな影響を及ぼします。

会社法上の帳簿管理義務違反

会社法では、企業に対して正確な会計帳簿を作成・保存する義務が課されています。不正によって帳簿を改ざん・破棄した場合、この義務に違反し、会社法違反が成立する可能性があります。

会社法では、株式会社が「法務省令に従い、適時に正確な会計帳簿を作成しなければならない」と規定しています。会計不正によってこの規定に反した場合、100万円以下の過料が科される可能性があります。

さらに、帳簿管理の不備は、監査役や株主からの責任追及の対象となることもあり、企業にとって大きなリスクになります。

取締役の善管注意義務・忠実義務違反

取締役が会計不正を放置した場合、善管注意義務や忠実義務に違反したとして、会社や株主から損害賠償責任を追及される可能性があります。

会社法第では、取締役は「善良な管理者としての注意義務」を負い、法令・定款・株主総会決議を遵守し、会社のために忠実に職務を遂行する義務があると定められています。

会計不正を未然に防げなかった、あるいは発覚後に適切な対応を取らなかった場合、これらの義務違反として損害賠償責任を負う可能性があります。企業だけでなく経営陣個人にも大きなリスクが及ぶ点が重要です。

経営陣・担当者の個人的な刑事責任

不正に関与した経営者や担当者は、金融商品取引法違反(虚偽記載)や会社法違反により、刑事責任を問われる可能性があります。行政処分にとどまらず、個人に対して罰金や懲役刑が科されるケースもあります。

実際に、会計不正に関与した経営者が逮捕・起訴され、実刑判決を受けた事例も存在しており、個人にとっても極めて重大なリスクとなります。

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会計不正の兆候を見抜くポイント

会計不正は突然発生するものではなく、必ず何らかの兆候が表れます。これらのサインを早期に捉えることで、不正を未然に防ぎ、企業のリスク管理を強化できます。ここでは、会計不正の代表的な兆候と、その見抜き方を紹介します。

売上の異常な増減や不自然な数字の動き

架空売上や前倒し計上に関連して、期末に売上が急増する、前年対比で説明できない成長を示すといった異常値は、典型的な会計不正の兆候です。

特に注意すべきなのは以下のようなケースです。

  • 期末月・四半期末に売上が不自然に集中している
  • 季節要因では説明できない急激な売上が増えている
  • 特定の顧客・取引先への売上が突出している

また、売上高が増えているにもかかわらず売掛金の回収が遅れている、売上高営業利益率が業界平均から大きく乖離しているといった財務指標の不整合も、不正を疑うべきサインになります。

棚卸資産・在庫の不自然な増加や棚卸差異の多発

架空在庫や評価損の先送りが行われている場合、在庫が実態より過大に計上されやすく、棚卸差異の頻発が起こります。

注意すべき兆候としては、次のようなものがあります。

  • 在庫回転率が業界平均を大きく下回っている
  • 売上高に対して在庫量が不自然に増加している
  • 実地棚卸で、帳簿と実在庫の差異が繰り返し発生している

さらに、担当者が棚卸を嫌がる、倉庫への立ち入りを制限する、特定の在庫だけ確認を拒むといった行動も、不正を隠している可能性を示すサインです。

説明困難な取引先変更や急な新規取引の増加

循環取引や架空取引が行われている場合、実態を伴わない取引先が急増することがあります。取引先の実在性や取引内容の合理性に疑問がある場合は、不正の兆候として警戒が必要です。

注意すべきサインとしては、次のようなものが挙げられます。

  • これまで取引のなかった企業と突然大口取引が始まる
  • 取引先の選定理由が曖昧
  • 所在地・連絡先・代表者名など、企業情報が確認できない
  • 関連会社や役員と関係のある企業との取引が不自然に増える

さらに、商品の実際の流れが確認できない、契約書や発注書などの証憑が不自然に簡素といった点も、循環取引や架空取引の典型的な兆候です。

経理処理の修正が頻発する・説明が曖昧

売上の訂正や在庫評価の再計算が頻発する場合、基準の逸脱や意図的な操作が疑われます。特に注意すべきサインは以下の通りです。

  • 仕訳の修正・取消が異常に多い
  • 修正仕訳が期末近くに集中する
  • 修正の理由が明確に説明されない
  • 同じ担当者が何度も修正を行っている

これらは、不正の隠蔽を目的とした操作が行われている可能性を示します。また、会計処理の根拠となる社内規程や会計方針が曖昧で、担当者の裁量が大きすぎる場合も、恣意的な処理が生じやすい環境といえます。

経営陣やキーパーソンの強い関与・意思決定の集中

会計不正は経営層が関与するケースも多く、トップの意向で売上目標が不自然に変更される、意思決定が過度に集中するといった状況は不正リスクの高いサインです。

具体的には、次のようなケースに注意が必要です。

  • 経営陣が会計処理の細部にまで介入する
  • 特定の取引が経営陣の承認なしでは処理できない
  • 経営陣が監査や内部統制の整備に非協力的

これらは、トップ主導の不正が行われている可能性を示します。また、会計担当者が経営陣からの圧力を感じている、目標未達時に厳しい叱責があるなどの組織風土も、不正を生みやすい環境として警戒すべきポイントです。

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会計不正を防止するためには?

会計不正を防ぐには、内部統制の整備、日々の会計処理の正確性確保、ガバナンス機能の強化が不可欠です。これらを組み合わせることで、不正の機会を減らし、発見可能性を高められます。ここでは、会計不正を防止するための具体的な対策を紹介します。

役割を分担して1人で完結できないようにする

仕訳入力・承認・支払いなどの業務が同一人物に集中すると、不正の実行や隠蔽が容易になります。これを防ぐには、役割を分担し、牽制が働く仕組み(職務分掌)を整えることが重要です。

職務分掌の基本は、取引の実行・記録・承認・資産保管といった機能を別の担当者に割り当てることです。例えば、以下のような方法が有効です。

  • 発注と検収を異なる担当者が行う
  • 仕訳入力と承認を分離する
  • 銀行振込の実行と承認を分ける

中小企業では人員の関係から完全な分離が難しいこともありますが、重要な取引だけでも複数名でチェックする体制を整えることが求められます。

承認フローと証憑チェックを徹底する

証憑(請求書・契約書・納品書など)を確認した上で承認するプロセスを明確にし、形式だけの承認にならないようにすることが重要です。承認者は単に押印するのではなく、証憑を基に取引の実在性・妥当性・正確性を確認する必要があります。

具体的には、以下のような点を実質的にチェックすることが求められます。

  • 契約書と請求書の金額が一致しているか
  • 納品書の数量と請求書の内容が合っているか
  • 取引先名・振込先情報が正しいか

また、承認権限を金額や取引内容に応じて階層化し、重要な取引ほど上位者の承認を必要とする仕組みを整えることで、不正の抑止力がさらに高まります。

会計基準・会計方針を定める

収益認識・費用計上・在庫評価などの基準を社内で統一し、曖昧な判断を排除することは、恣意的な会計処理の防止に効果的です。企業会計基準や税法を踏まえ、自社の会計方針を文書化して全社で共有する必要があります。

例えば、以下のような重要な方針を明確にしておくことで、担当者ごとの判断のばらつきを防げます。

  • 売上の計上基準(出荷基準か検収基準か)
  • 引当金の計上方法
  • 減価償却の方法

また、会計基準が改正された場合は、速やかに社内ルールを更新し、周知徹底することも欠かせません。

定期的な残高確認・照合を仕組み化する

売掛金・買掛金・在庫・預金などの残高照合を定期的に行うことは、異常値や差異の早期発見に直結します。具体的には、以下のような作業を仕組み化することが重要です。

  • 取引先との残高確認を月次で実施する
  • 銀行残高と帳簿残高を照合する
  • 定期的に実地棚卸を行い、帳簿在庫と実在庫を突合する

差異が発生した場合は原因を調査し、記録として残すことで、不正の兆候を見逃さない体制を構築できます。また、照合作業そのものを経理担当者以外がチェックする仕組みを設ければ、牽制機能はさらに強化されます。

内部監査を実施する

内部監査部門や外部の専門家が、独立した立場で会計処理や業務フローをチェックすることは、不正防止に大きく役立ちます。内部監査では、会計処理の正確性だけでなく、以下のような点を重点的に確認します。

  • 内部統制が適切に運用されているか
  • 職務分掌が守られているか
  • 承認フローが形骸化していないか

監査結果は経営陣に報告され、必要に応じて改善策が実施されます。中小企業では専任の内部監査部門を設置できないケースもありますが、外部の税理士・公認会計士に依頼する、あるいは親会社の監査部門の支援を受けるなど、外部リソースを活用する方法も有効です。

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会計ソフトで会計不正を防ごう

会計不正を防止する上で、会計ソフトは非常に有効なツールです。属人化しやすい会計業務を標準化し、証憑管理や承認フローをシステム上で可視化することで、不正が起きにくい環境を整えられます。

ここでは、会計ソフトが不正防止にどのように役立つのか、その効果を解説します。IT統制を適切に整備することで、内部統制の実効性を大きく高めることが可能です。

改ざん防止・ログ管理で不正を抑止できる

多くの会計ソフトには、取引の修正履歴や操作ログを自動記録する機能が備わっています。こうしたログ管理は強力な不正抑止力となり、改ざんの難易度を大幅に高めます。

会計ソフトでは、「いつ・誰が・どの取引を・どのように修正したか」が明確に記録されるため、不正な修正があった場合でも後から追跡できます。また、ログが必ず残ることを担当者が認識することで、心理的な抑止効果も働きます。

さらに、ログを定期的にレビューし、不自然な操作や異常な修正がないか確認することで、内部統制が適切に運用されているかどうかも把握できます。

権限設定により不正の機会を減らせる

会計ソフトでは、仕訳入力・承認・支払いなどの操作権限を細かく設定できるため、1人がすべての操作を行う属人化を防げます。不正の機会を減らす上で非常に有効で、内部統制の観点からも重要な対策です。

例えば、以下のような細かな制御が可能です。

  • 経理担当者には仕訳入力のみを許可し、承認・削除は管理者に限定する
  • 支払実行は経理部長のみが行えるように設定する
  • 現金・預金など特定科目への仕訳を制限する
  • マスタデータの変更権限を限定する

このように、職務分掌をシステム上で強制できるため、人為的な不正を防ぎ、不正リスクを大幅に低減できます。

証憑管理をシステム化してチェックの形骸化を防げる

会計ソフトを活用すれば、請求書・領収書・契約書などの証憑をシステム上で一元管理できます。証憑と仕訳を紐付けることで、架空取引や不正計上の発見もしやすくなります。

証憑をスキャンまたは電子データとして取り込み、該当する仕訳と関連付けて保存すれば、後から証憑を確認する手間を大幅に削減できます。さらに、証憑が添付されていない仕訳を自動検出する機能を使えば、証憑管理の漏れ防止にもつながります。

電子帳簿保存法に準拠した会計ソフトであれば、タイムスタンプ付与や検索機能などの要件も満たせるため、法令遵守と不正防止の双方で高い効果を発揮します。

承認フローを標準化して内部統制を強化できる

会計ソフトやワークフローシステムを連携させることで、承認プロセスを統一・可視化できます。これにより、形式的な承認や押印だけの承認を防ぎ、実質的なチェックが行われやすくなります。

システム上で承認ルートを設定すれば、誰が承認するのか、どの順序で承認するのかが明確になります。承認者には通知が届き、証憑を確認しながら承認・差戻しを判断できるため、承認の実効性も高まります。

さらに、承認履歴が自動で記録されるため、誰がいつ承認したかを後から確認でき、責任の所在も明確になります。

残高照合を自動化して異常値を早期に発見できる

会計ソフトでは、預金残高照合や売掛金・買掛金の消込、在庫データとの連動などを自動化できるため、異常な増減を早期に把握できます。

例えば、以下のような機能を活用できます。

  • インターネットバンキングと連携して銀行残高を自動取得し、帳簿残高と照合
  • 売掛金の入金を自動消込
  • 在庫管理システムと連動し、棚卸資産の数量・金額を自動同期

これにより、手作業での照合作業が大幅に削減されるだけでなく、リアルタイムで差異を検出できるため、不正や誤りの早期発見につながります。

経理業務の標準化で属人化を防止できる

会計ソフトで業務フローを統一すると、担当者ごとの手作りExcelや独自ルールが排除され、属人化リスクを大幅に軽減できます。

会計ソフトによって、仕訳入力の手順や勘定科目の使い方、月次決算の流れといった基準が標準化され、誰が担当しても同じ品質で業務を行えるようになります。

また、業務手順がシステム上で可視化されているため引継ぎもスムーズで、特定の担当者しか把握していない「ブラックボックス化した業務」がなくなります。結果として、不正が入り込む余地を小さくできます。

外部監査や内部監査にも対応しやすい

会計ソフトは、証憑・仕訳・承認ログを自動的に記録するため、監査に必要な証跡が揃いやすいことが大きなメリットです。証憑突合や操作履歴の確認にも対応しやすく、ガバナンス強化にもつながります。

監査人から資料提供を求められた際も、会計ソフトからデータを抽出して提示できるため、監査対応の負担が軽減されます。また、内部統制の整備状況を示す資料としても活用でき、J-SOX対応や監査法人による内部統制監査でも有用です。

適切なIT統制が整っていることを示せれば、監査リスクの低減にも寄与します。

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まとめ

会計不正は、企業の信用を大きく損なう重大なリスクであり、金融商品取引法の虚偽記載や会社法上の義務違反として処分の対象となる可能性があります。不正の兆候を早期に把握し、適切な防止策を講じることが不可欠です。

また、会計ソフトの改ざん防止機能・ログ管理・権限設定・証憑管理などのIT統制を活用することで、不正の機会を減らし、発見可能性を高められます。システム化により経理業務が標準化され、属人化リスクが軽減される上、監査対応の効率化やガバナンス強化にもつながります。

自社の内部統制を見直し、必要な対策を段階的に整備することで、健全な会計処理を実現し、企業の信頼性を守っていきましょう。

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会計ソフトは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。

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