会計期間とは?正確な決算・税務申告のための基礎知識を解説
企業が正確に決算や税務申告を行うためには、会計期間の理解が不可欠です。会計期間とは、企業の経済活動を一定の区切りで把握するための期間で、この間に発生した取引を記録・集計します。
この記事では、会計期間の基本から事業年度の決め方、決算スケジュール管理のコツまで、実務で役立つ知識を解説します。
会計期間とは?
会計期間とは、企業の経済活動を一定の期間で区切り、その間に発生した取引を記録・集計するための枠組みです。企業は会計期間の取引をもとに財務諸表を作成し、税務申告を行います。
多くの企業では1年間(12か月)を1つの会計期間として設定し、開始日と終了日を明確に定めます。日本では、4月1日〜翌年3月31日を事業年度とするケースが代表的です。
会計期間は決算・税務申告・財務報告の基礎となるため、正確な理解が不可欠です。法人税や消費税の申告期限は「事業年度終了日から原則2か月以内」と決まっており、会計期間を誤ると申告スケジュールに影響が出ます。また、会計期間は企業が任意に設定できますが、変更する際は定款変更などの正式な手続きが必要になります。
会計期間の期首・期中・期末
会計期間は「期首(きしゅ)」「期中(きちゅう)」「期末(きまつ)」の3つに区分すると、日々の記帳から決算までの流れを把握できます。ここでは、企業会計の実務で必ず押さえておくべき期首・期中・期末の概要と役割を解説します。
期首(会計期間のスタート)
期首とは、事業年度の開始日であり、その年度の会計期間がスタートするタイミングです。期首では、前期からの繰越残高の確定、仕訳帳・総勘定元帳の残高引き継ぎ、固定資産や棚卸資産の期首評価の確認などを行います。
期首残高はその年度の財務数値の土台になるため、残高に誤りがあると期中・期末の処理にも影響します。前期末の資産・負債・純資産の残高を正確に引き継ぎ、新しい年度の会計処理を適切にスタートさせることが重要です。
期中(取引が発生する会計期間の本編)
期中とは、期首から期末までの間で、日常的な取引が発生する期間を指します。期中では、売上・仕入・経費の記録、月次決算(試算表作成)、請求書・支払い・入金の管理、固定資産の減価償却計上など、日々の会計業務を行います。
期中業務は会計全体の大部分を占め、精度の高い決算に直結する重要なフェーズです。取引を適切なタイミングで記録し、月次で数値を確認しておくことで、期末の決算作業をスムーズに進められます。
期末(決算を行う会計期間の最終段階)
期末とは、会計期間の終了日と、その前後で行う決算処理のことを指します。主な作業には、棚卸資産の数量・金額の確定、売掛金・買掛金などの残高照合、前払・未払や減価償却・引当金などの決算整理仕訳、財務諸表(貸借対照表・損益計算書)の作成、法人税・消費税の申告準備が含まれます。
期末は年間の取引を締め、財務成果を確定させる極めて重要なプロセスです。期末での処理が正確に行われてこそ、株主・金融機関・税務当局に対して信頼性の高い財務情報を提供できます。
企業が会計期間を決めるポイント
会計期間は企業が自由に設定できますが、業務負荷や業界特性、税務面の影響、グループ企業との整合性など、複数の観点から自社に最適な期間を選ぶ必要があります。ここでは、企業が会計期間を設定する際に押さえておきたいポイントを紹介します。
業務の繁忙期を避ける
決算には棚卸・残高確認・決算整理など多くの作業が集中するため、通常業務の繁忙期を避けて会計期間を設定するのが合理的です。例えば、小売業では12月や年末年始が最も忙しいため、2月や8月を決算月とする企業もあります。繁忙期を外すことで決算処理の精度と効率が高まり、担当者の負担分散やミス防止にもつながります。
自社の業務サイクルを踏まえて会計期間を設定することが、スムーズで正確な決算の実現に不可欠です。
親会社・グループ企業との整合性を図る
連結決算やグループ経営を行う企業では、親会社と子会社の会計期間を揃えることで、財務データの収集効率が上がり、連結精算や監査対応もスムーズになります。
海外子会社は、現地法令との兼ね合いも考慮が必要です。例えば、米国では12月決算が一般的ですが、日本の親会社が3月決算の場合は、連結用に子会社データを調整する手間が発生します。
グループ全体で会計期間を統一できれば、決算作業が効率化されるだけでなく、経営判断のスピード向上にもつながります。
監査法人の繁忙期を避ける
日本企業では3月決算が多く、監査法人は3〜6月が繁忙期になります。国際基準を採用する企業では12月決算も多く、同様に監査が集中します。
そのため、監査法人の繁忙期を避けて決算月を設定すれば、監査スケジュールを確保しやすく、資料レビューの時間も十分に取れます。結果として業務負荷が分散され、監査品質の向上や指摘事項への対応時間の確保にもつながります。
監査法人の繁忙状況を踏まえて会計期間を決めることは、実務上大きなメリットがあります。
資金繰り・対外報告のタイミングを意識する
会計期間は、金融機関への決算報告や助成金・補助金申請にも影響します。特に中小企業では、決算書が融資判断の重要資料となるため、在庫が少なくなる時期や売上が安定する時期、イレギュラーな支出が出にくい時期を期末に設定すると、企業の財務状況をより適切に示しやすくなります。
さらに、融資更新や補助金申請のタイミングに会計期間を合わせることで、必要書類をタイムリーに提出でき、手続きもスムーズになります。
社内体制・担当者の負荷を踏まえて決める
中小企業では会計・経理担当者が少ないため、決算業務が集中するとミスが生じやすくなります。担当者の体制や外部税理士の繁忙期、社内承認フローなどを踏まえて会計期間を設定すれば、決算作業をスムーズに進められます。
経理担当者が複数業務を兼務している場合や、税理士との連携が必要な場合は、関係者全員のスケジュールを考慮した会計期間の設定が特に重要です。
会計期間に合わせた決算スケジュール管理のポイント
決算業務は、設定した会計期間に沿って正確に進めることが重要です。ここでは、会計期間の流れに合わせて決算スケジュールを効率的かつ確実に管理するためのポイントを紹介します。
会計期間ごとの年間スケジュールを作成する
決算をスムーズに進めるには、期首の段階で年間スケジュールを設定することが不可欠です。月次締めの実施日、四半期決算のタイミング(該当企業のみ)、棚卸日・残高確認の予定、決算書作成から申告書提出までの逆算スケジュールを整理し、担当者へ共有しておくことで、業務の漏れや遅延を防げます。
年間スケジュールは、社内カレンダーやプロジェクト管理ツールで共有し、関係者全員が常に確認できる状態にしておくことが理想です。
月次決算を確実に実施する
月次決算は、期末決算の精度を高める基盤となります。売掛金・買掛金の確認、経費の計上漏れチェック、在庫変動の把握、固定資産の減価償却、試算表の作成・レビューを毎月適切に行うことで、期末の負担を大幅に軽減できます。
月次が安定していれば、期末に大きな修正が発生しにくくなり、期末決算を月次決算の延長として捉えられるほど作業の見通しが明確になります。
期末に向けた棚卸と残高確認を計画的に行う
期末に実施する棚卸や残高確認は、決算書の信頼性に直結する重要な作業です。特に棚卸資産・売掛金・買掛金・預金残高は必ず確認し、棚卸方法の決定、事前のスケジュール周知、取引先への残高照合依頼などを早めに進めておくことで、期末の混乱を防げます。
棚卸は原則として実地棚卸を行いますが、規模の大きい企業では複数日に分けたり、循環棚卸を取り入れたりする方法も有効です。残高照合は相手先の対応に時間がかかることも多いため、余裕をもって依頼することが欠かせません。
決算整理仕訳の準備をする
決算では、発生主義に基づいた決算整理が必要です。決算整理仕訳は、企業会計原則と税法に沿って処理することが求められます。
主な決算整理仕訳には、減価償却費、前払費用・未払費用、貸倒引当金、棚卸資産の評価、売上・仕入の期間帰属の確認などがあります。これらは前期との整合性や税法上の要件を踏まえて処理する必要があるため、事前に仕訳パターンを整理しておくとスムーズに進められます。
監査(内部監査・外部監査)の予定を確保する
上場企業や大企業では、監査法人のスケジュール確保が欠かせません。監査計画の事前打ち合わせや、減価償却・棚卸資産・売掛金など重点監査項目に関する資料の準備を早めに進める必要があります。
内部監査制度を持つ企業の場合は、内部監査の実施時期との調整も重要です。監査対応を円滑に進めるためには、監査法人や内部監査部門と早い段階からコミュニケーションを取り、必要資料や説明内容を事前に整理しておくことが効果的です。
会計ソフトを活用して会計期間を正確に管理しよう
会計期間に沿って正確な会計処理を行うには、会計ソフトの活用が非常に有効です。ここでは、会計期間の管理において会計ソフトがどのように役立つのかを解説します。
会計期間を自動設定できる
会計ソフトでは、決算月を設定するだけで年度区切りを自動管理でき、年次・四半期・月次などの期間別の試算表も自動で作成できます。さらに、月次締めや年度締めも自動化されるため、手作業に比べて集計ミスや期間の取り違えを大幅に減らせます。
会計期間に基づいて自動で期間判定を行うため、仕訳入力時の期間誤りも防止でき、正確な会計処理につながります。
仕訳入力を自動化できる
会計期間を正しく運用するには、期中の仕訳入力が正確であることが欠かせません。会計ソフトの自動化機能を使えば、銀行・カード明細の自動連携、領収書のOCR読み取りによる自動仕訳、請求書データの取り込みなどが可能となり、手作業で起こりがちな入力ミスや記帳漏れを防げます。
会計ソフトの自動連携を活用することで、会計データをほぼリアルタイムで更新でき、月次決算の早期化にもつながります。
減価償却・消費税計算を自動処理できる
会計期間に基づく計算業務は、手作業だとミスが発生しやすい分野です。会計ソフトを利用すれば、固定資産の減価償却、消費税の集計・課税区分管理、年度途中の資産取得や税率変更への対応などを自動処理できます。
期間設定と連動しているため、期末の計算作業を大幅に軽減できる点もメリットです。減価償却の月割計算など、人が行うと複雑になりがちな処理も、会計ソフトなら取得日に応じて自動計算され、手計算の手間を省けます。
証憑管理・残高照合を効率化できる
会計期間の整合性を保つには、証憑(領収書・請求書など)と帳簿の一致確認が欠かせません。会計ソフトを使えば、電子帳簿保存法に対応した証憑の電子保存、証憑と仕訳の紐づけ、売掛金・買掛金・預金などの残高照合の自動化により、期末の確認作業を大幅に効率化できます。また、監査対応にも備えやすくなります。
電子帳簿保存法対応ソフトを使用すれば、紙の証憑保管の手間が省けるだけでなく、検索性も向上し、日常業務のスピードアップにもつながります。
決算・申告の精度が向上する
会計期間に沿った自動化・効率化により、記帳ミスの減少、決算の早期化、税務申告の正確性向上、監査リスクの軽減といった効果が得られます。企業規模を問わず、会計期間管理の質を高める手段として会計ソフトの導入は非常に有効です。
会計ソフトは、会計期間に基づいたデータの一元管理を実現し、複数の担当者が関わる場合でも情報の整合性を維持しやすくなります。
まとめ
会計期間は、企業の財務活動を区切り、決算・税務申告・財務報告を正確に行うための基盤となる重要な要素です。会計期間の理解は、決算スケジュール管理、月次・四半期の運用、棚卸・残高確認、税務申告、監査対応など、企業会計全体に大きく影響します。
会計ソフトを活用すれば、会計期間に基づく業務の自動化・効率化が進み、人的ミスの防止や決算品質の向上につながります。自社の業務特性や繁忙期、グループ構成を踏まえて適切な会計期間を設定することが、安定した会計運営の鍵となります。
会計期間を正しく理解し実務に活かすことで、財務情報の透明性と信頼性をより高められるでしょう。
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会計ソフトは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。
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