OCRで表をデータ化して業務効率を図ろう!活用シーンや処理手順を解説
請求書・領収書・勤怠表・納品書など、日々の業務で扱う帳票には、表形式のデータが多く含まれており、手作業で入力すると時間がかかる上、ミスも発生しやすくなります。
そこで役立つのがOCR(光学文字認識)です。紙の表やPDF内の表データを自動で読み取り、ExcelやCSVといった編集可能な形式に変換できます。入力作業の削減だけでなく、業務効率の改善やヒューマンエラーの防止にもつながります。
この記事では、OCRで表をデータ化する活用例や具体的な処理手順を紹介します。
OCRを活用すれば画像・PDFの表をデータ化できる
OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)は、紙の表や手書きの表、PDF内の表データを自動でテキスト化し、Excel・CSVといった編集可能な形式に変換できる技術です。大量の書類から必要な情報を手入力する必要がなくなるため、作業時間の削減と転記ミスの防止に役立ちます。
さらに、近年はAI OCRの活用が進み、定型帳票だけでなく、手書き文字やレイアウトがバラバラな非定型帳票にも対応しやすくなっています。AI OCRは、実務で扱う多様な表データを、よりスムーズかつ高精度でデジタル化できる点が大きな特徴です。
画像やPDFの表をExcel・CSVに変換できる
画像PDFやスキャンPDFに含まれる表は、OCRで読み取ることで行・列の構造を解析し、ExcelやCSV形式として出力できます。これまでは紙の書類をスキャンした後、内容を手作業で入力し直す必要がありましたが、OCRを使えば表データを自動で抽出できるため、作業時間を大幅に削減できます。
さらに、AI OCRは罫線が薄い、欠けているといった不完全な表でも、構造を推測して補完できる場合があります。そのため、古い帳票や印刷状態の悪い書類であっても、実務で使える精度でデータ化できます。
表の構造を理解してセルごとに抽出できる
AI OCRは、表の行・列だけでなくセルのグループや項目の意味まで把握しながら読み取れるため、明細表のような複雑な表でも正確に抽出できます。従来のOCRが文字の読み取りに特化していたのに対し、AI OCRは表の構造そのものを理解する点が大きな違いです。
例えば、請求書の明細欄では、品目・数量・単価・金額といった複数列が並びます。AI OCRは、それぞれのセルがどの項目に相当するのかを判断し、適切な形式でデータ化できます。企業ごとにレイアウトが異なる帳票や、不定形のフォーマットで作られた書類にも対応しやすいため、幅広い業務で活用されています。
表のデータ化により業務効率が大幅に向上する
OCRで表をデータ化すると、手入力の工数を大幅に減らせる上、人為的なミスも避けられます。特に書類が集中しやすい経理・総務では、月末の締め作業の負担が軽くなり、分析や判断といった本来注力すべき業務に時間を回せるようになります。
さらに、一度データ化した情報は自動集計や分析、システム連携にも活用できます。経費精算システムへの自動取り込み、会計ソフトとのデータ連携、ダッシュボードによるリアルタイム集計など、データを基点にした業務の自動化が進み、バックオフィス全体の生産性向上につながります。
OCRを活用した表のデータ化の活用シーン
手書き・印刷・PDFなどの表をOCRでデータ化すれば、バックオフィスだけでなく現場業務まで、さまざまな領域で効率化が進みます。ここでは、企業が実際にOCRを使って表データをどのように活用できるのか、代表的なシーンを具体的に紹介します。
請求書・領収書の明細を集計する
OCRで請求書や領収書の明細表をデータ化すると、金額・品目・数量などを手入力する必要がなくなり、経理処理が大幅に効率化します。取引先から受け取る請求書には品目別の明細が並ぶことが多く、本来は1件ずつ転記していた作業を自動化できる点が大きなメリットです。
データ化した情報は、会計ソフトへのインポートや月次の集計作業にもすぐ活用できます。請求内容のチェックや予算管理の正確性が高まるほか、取引件数が多い企業では月末締めにかかる時間を大幅に短縮でき、経理担当者の負担軽減にもつながります。
納品書・発注書の明細を仕入・在庫管理に活用する
納品書や発注書の表データをOCRで読み取れば、仕入数量や単価を自動登録でき、在庫管理・購買管理の精度が向上します。
納品書には商品コードや商品名、数量、単価などが表形式で記載されています。OCRを導入することで、入力作業を自動化でき、大量の取引を扱う企業ほど効果が高まります。
在庫更新の遅れや入力ミスによる在庫差異を防げるほか、データ化した情報を基幹システムと連携することで、発注から入庫までの流れを一元的に把握しやすくなります。結果として、適正在庫の維持にも役立ちます。
勤怠表・出欠表を集計する
紙の勤怠表や出欠管理表をOCRで読み取れば、出勤日数や勤務時間の集計を自動化できます。手書きの勤怠表や現場で使われる紙のタイムシートをスキャンするだけで、勤務時間や休暇取得状況をデータとして取り込めるため、集計作業の手間が大きく減ります。
人事システムとの連携もしやすくなり、月末処理の負担も軽減されます。給与計算に必要な労働時間の集計が自動化されることで、計算ミスを防ぎながら処理時間も短縮でき、人事担当者はより戦略的な人材マネジメントに時間を割けるようになります。
アンケート結果や調査票の表を集計する
調査票やアンケートの表データをOCRで読み取れば、複数行・複数列にわたる回答も自動で集計できます。選択式の回答や自由記述欄が表形式で配置された用紙でも、OCRが項目を識別してデータ化するため、手作業での転記は不要になります。
その結果、分析やレポート作成のスピードが大幅に向上します。回収したアンケートをすぐにデータ化できるため、集計結果の可視化やクロス分析を迅速に行え、マーケティング施策や業務改善の意思決定を早めることにつながります。
契約書や申込書の一覧表をデータベース化する
契約書や申込書に含まれる一覧表(料金表・条件表など)をOCRで抽出すると、検索可能なデータベースとして管理できるようになります。表形式で記載された契約内容をデジタル化することで、必要な情報をすぐに検索でき、紙書類をめくって探す手間がなくなります。
これにより、紙文書の管理コストが削減されるだけでなく、契約内容の確認や更新時期の把握が簡単になり、コンプライアンス管理の強化にもつながります。過去の契約条件を参照したい場合も、キーワード検索で該当書類を即座に探せるため、業務の効率性が大幅に向上します。
製造・物流のチェックシートや検査表をデータ化する
現場で使用される検査表・点検表・チェックシートをOCRでデータ化すると、品質管理やトレーサビリティの記録を自動化できます。製造現場や物流倉庫では紙による記録がいまだ多く残っていますが、これらをデータ化することで品質データを一元管理できるようになります。
紙の提出が減ることで現場負担も軽くなり、検査結果をリアルタイムで共有することも可能です。不良品の発生傾向の分析や設備の予防保全にもデータを活用でき、製造品質の向上と業務効率化を同時に実現できます。
表形式の営業日報や現場日報を集計する
表形式で記録された日報をOCRで読み取れば、訪問件数・工数・対応内容などのデータを自動で集計し、管理指標として活用できます。営業担当者の手書き日報や、現場作業員の作業日報に含まれる表データを取り込むだけで、日次・週次の活動量を簡単に可視化できます。
集計されたデータは営業戦略の立案や要員配置の最適化に役立ち、マネジメント層が現場の状況を正確に把握するための基盤となります。また、手作業での集計が不要になるため、報告業務そのものの負担も軽減されます。
OCRで表をデータ化する方法
手書き・印刷物・PDFなどの表をOCRでデータ化するには、いくつかの手順を押さえておく必要があります。ここでは、OCRを使って表データを抽出するプロセスを具体的に紹介します。
①表をスキャンする
紙の書類やPDFに含まれる表をデータ化する際は、まずスキャン作業を適切に行うことが重要です。解像度、傾き補正、余白の除去、明るさ調整などを整えるだけで、OCRの認識精度は大きく向上します。
特に解像度は文字認識の成否を左右する重要なポイントで、300dpi以上に設定すれば細かい文字や罫線も鮮明に読み取れます。手書き表を扱う場合は濃淡の調整も効果的で、薄い筆跡でもコントラストを高めることで認識率を改善できます。
②OCRソフトに表を読み込ませる
PDFや画像をOCRソフトに取り込むと、表領域が自動検出されます。多くのOCRソフトは画像内の表を自動で認識し、読み取り範囲を設定してくれますが、うまく検出できない場合は手動で領域を指定することで精度を高められます。
AI OCRであれば、罫線がない表やレイアウトが崩れている表でも構造を推定できるため、従来のOCRでは対応が難しかった帳票も処理可能です。行や列を認識し、セル単位で項目名と値を抽出できるため、元の表構造を保ったままデータ化できます。
③抽出結果の誤認識を補正する
OCRで読み取ったデータには、文字の形が似ていることによる誤認識が発生する場合があります。数字の読み間違い(0/6/9、1/7など)、日付形式の崩れ、セルの結合ミスといった点は、必要に応じて修正が必要です。
特に金額や数量などの重要データは、誤りがあると業務に影響が大きいため、確認画面での目視チェックが推奨されます。多くのOCRソフトでは、認識精度が低い箇所をハイライト表示する機能が用意されており、補正作業を効率的に進められます。
④Excel・CSV形式にエクスポートする
抽出したデータは、ExcelやCSV形式で出力します。列名を整えたり、データ型(文字列・数値・日付)を統一したりすることで、その後の集計や分析がスムーズになります。
エクスポート時には、項目名の設定やデータの並び順、桁数の調整を行っておくと、業務システムへそのまま取り込みやすくなります。また、CSVで出力する場合は、文字コードや区切り文字の設定にも注意が必要です。
⑤必要に応じて会計ソフト・基幹システムへ取り込む
データ化した表は、そのまま会計ソフトや経費精算システム、購買管理システムなどへ取り込めます。システム連携機能を備えたOCRソフトであれば、エクスポートしたデータを自動でインポートする設定も可能です。
さらに、API連携やファイル監視による自動取り込みを組み合わせれば、OCRでの読み取りからシステム登録までを完全に自動化できます。これにより、人手を介さずに書類のデータ化から業務システムへの反映までを一貫して処理できるようになります。
表をデータ化する際のOCRソフトの比較・選定ポイント
表データのOCR処理では、文字の認識だけでなく、行・列・セルといった表の構造をどれだけ正確に読み取れるかが精度を大きく左右します。OCRソフトごとに機能や対応範囲が異なるため、自社の帳票形式・業務フロー・利用システムに適したものを選ぶことが重要です。ここでは、押さえておきたい比較・選定ポイントを紹介します。
表の抽出精度
罫線が薄い、罫線がない、レイアウトが崩れているといった表でも、正確に行・列を抽出できるかどうかが最も重要なポイントです。実務で扱う帳票は、スキャン品質が低かったりフォーマットが統一されていなかったりすることが多いため、こうした条件下でも高精度を維持できるかが選定の決め手になります。
手書きや非定型の表に対応できるAI OCRの有無も重要な比較軸です。導入前には、実際の帳票サンプルを使ってテストし、どの程度の精度で抽出できるかを確認することをおすすめします。
認識できる項目の範囲
表には金額・数量・日付・コードなど、多様な項目が含まれます。実務で扱う各項目をOCRが正しく抽出できるか、項目ごとの精度を事前に検証することが重要です。
例えば、「2024/12/08」「2024.12.08」「令和6年12月8日」など、複数の日付表記が混在する際に、統一形式で認識できるかどうかは業務効率に直結します。また、商品コードや管理番号のように特定フォーマットを持つ項目を、どれだけ正確に読み取れるかも確認すべきポイントです。
補正画面の使いやすさ
セル単位で修正しやすいか、誤認識箇所がひと目でわかるか、ショートカットや自動補完が使えるかなど、補正作業のしやすさは運用コストに直結します。OCRの精度が高くても誤認識を完全にゼロにすることは難しいため、いかに効率よく補正できるかが実務では重要なポイントです。
特に大量の書類を扱う場合、補正画面の操作性が低いと作業時間が大幅に増えてしまいます。導入前には実際の操作画面を確認し、作業者にとって使いやすいデザインかどうかを評価しておくことをおすすめします。
対応ファイル形式
PDFには、テキストPDFや画像PDF、スキャンPDFなど複数の種類があり、OCRソフトによって対応可否が異なります。実務で最も多く扱う形式に対応しているかは、選定時の重要なポイントです。
取引先から届く書類がどの形式かを事前に確認し、それに対応できるOCRソフトを選ぶ必要があります。あわせて、JPEG・PNG・TIFFなどの画像形式への対応状況や、複数ページPDFを一括処理できるかどうかも確認しておくと安心です。
出力形式
表データを分析やシステム連携に活用するためには、Excel・CSV・JSONなど、必要な形式で出力できるかを確認することが重要です。特にシステム連携を前提とする場合は、JSON形式での出力やAPI経由でデータを取得できるかどうかが、自動化の範囲を大きく左右します。
また、列名を自由に設定できるかどうかもポイントです。項目名を変換する手間が省ければ、システムへの取り込みがスムーズになり、運用負荷も軽減できます。複数の出力形式に対応しているOCRソフトであれば、目的に合わせて柔軟に使い分けられます。
外部システムとの連携
業務フローを自動化する上では、会計ソフトやERP、RPAとスムーズに連携できるかが重要な選定ポイントになります。OCRで読み取ったデータを手動でシステムに入力していては、自動化による効果が大幅に薄れてしまいます。
API連携やファイル連携、クラウドストレージ経由の連携など、複数の方式に対応しているOCRソフトを選べば、既存システムとの統合が進めやすくなります。あわせて、連携時のエラーハンドリングや再実行機能の有無も確認しておくと、運用がより安定します。
セキュリティ・データ保護体制
暗号化やアクセス権限管理、ログ管理といったセキュリティ要件も必ず確認すべきポイントです。機密文書を扱う企業では特に重要で、データの保存場所、通信の暗号化、ユーザーごとのアクセス制御が適切に設定できるかをチェックする必要があります。
また、個人情報や機密情報を含む帳票を扱う場合は、データの保管期間、バックアップ体制、削除ポリシーの有無も確認しておくと安心です。セキュリティ認証の取得状況も、OCRソフトを選定する際の判断材料になります。
まとめ
OCRを活用すれば、手書き・印刷物・PDFに含まれる表を効率的にデータ化でき、これまで手作業に頼っていた入力・集計・転記業務を大幅に削減できます。請求書、納品書、勤怠表、アンケートなど、日常的に扱うさまざまな表形式の書類をデータ化することで、業務の正確性と処理スピードが向上します。
ただし、OCRによる表データ化を成功させるには、自社の帳票や業務フローに合ったソフトを選ぶことが不可欠です。表の抽出精度、認識できる項目の範囲、補正画面の使いやすさ、外部システムとの連携性など、複数の視点から比較・検討し、実際の帳票でテストした上で導入を進めることをおすすめします。
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OCRソフトは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。
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