勤怠管理表の役割と必要性！効率的に作成・管理する方法も紹介

勤怠管理表は企業運営に欠かせない重要な業務ツールです。しかし、適切に設計・運用されていないと、労務トラブルや業務効率の低下を招く原因となります。

本記事では、勤怠管理表の基本的な役割や作成方法を紹介します。また、よくある課題とその解決策など、実務担当者が今すぐ活用できる情報を詳しく解説します。

勤怠管理表とは？

勤怠管理表は、従業員の出退勤時間や休憩時間、残業時間、有給休暇などの勤務状況を記録・管理するための業務ツールです。単純な記録表ではなく、企業の労務管理を支える基盤として法的義務と密接に関わっています。

労働基準法では、使用者に対して労働時間の適正な把握義務が定められており、勤怠管理表はその根拠資料として機能します。また、給与計算の基礎データとなり、従業員への適正な賃金支払いを確保する役割も担っています。

近年の働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の確実な取得が求められる中、勤怠管理表の重要性はますます高まっています。

勤怠管理表で管理すべき項目

勤怠管理表では、法的要件を満たし、給与計算を正確に行うために次の項目を管理する必要があります。

項目	概要
社員情報	社員番号、氏名、部署、役職など個人を特定する情報
出勤日	出勤した日付
出勤時刻	実際の出勤時間（打刻時間）
退勤時刻	実際の退勤時間（打刻時間）
勤務時間	出勤〜退勤までの総勤務時間（休憩を除いた実働時間）
休憩時間	休憩取得時間（法定休憩やシフト上の休憩含む）
残業時間	所定労働時間を超えた時間外労働時間
深夜労働時間	22 〜翌5
休日出勤時間	法定休日や会社指定休日に勤務した時間
遅刻時間	始業時刻から遅れた時間
早退時間	終業時刻より早く退勤した時間
欠勤日数	無断欠勤・有給以外の欠勤日数
有給休暇取得日数	有給休暇を取得した日数と取得日
特別休暇取得日数	慶弔休暇、産休、育休などの特別休暇日数と取得日

勤怠管理表が必要な理由

企業にとって勤怠管理表は、法令遵守や適正な労務管理、経営リスクの回避において欠かせません。その必要性は、法的義務の履行から経営戦略の支援まで多岐にわたります。

法令遵守

労働基準法第109条により、企業には賃金台帳と労働者名簿の3年間保存が義務付けられています。勤怠管理表は、賃金台帳の基礎資料として位置づけられ、労働基準監督署による調査時には必ず確認される重要な証拠書類です。不適切な管理により労働時間の把握ができていない場合は、是正勧告や企業名公表などの行政処分を受ける可能性があります。

給与計算

勤怠管理表の記録が賃金計算の根拠となります。残業代の未払いは、労働基準監督署への申告や民事訴訟のリスクを招き、遡及して2〜3年分の未払い賃金と付加金の支払いを求められることもあります。実際に、勤怠管理が不適切であったために、数百万円から数千万円の未払い残業代を支払うことになった企業事例も少なくありません。

労務リスク管理

適切な勤怠管理により長時間労働を防止し、従業員の健康管理と企業の安全配慮義務を果たします。過労死や精神疾患の労災認定基準では、発症前の労働時間が重要な判断要素となるため、正確な勤怠記録は企業を守る重要な証拠となります。また、ハラスメント事案でも、労働時間の記録が状況証拠として活用されることがあります。

Excelを使った勤怠管理表の作り方

Excelで勤怠管理表を作成する際は、入力の簡便性と計算の正確性を両立させることが重要です。以下の基本的な作成手順を押さえることで、実務でスムーズに活用できる管理表を構築できます。

1. 必要な入力項目を整理する
2. 計算式で勤務時間を自動集計する
3. 月別・社員別に集計できるフォーマットを整える
4. ミスを防ぐための工夫やチェック項目を設定する

必要な入力項目を整理する

従業員の基本情報（氏名、社員番号、所属部署）や、日付、出勤時刻、退勤時刻、休憩時間、有給休暇使用日数などを設定します。項目設計時は、自社の就業規則や給与計算方法に合わせたカスタマイズが必要です。例えば、フレックスタイム制を導入している場合は、コアタイム内の勤務時間を別途管理する項目を追加します。

計算式で勤務時間を自動集計する

TIME関数やIF関数を組み合わせて実労働時間や時間外労働時間を自動計算します。出退勤時刻から休憩時間を差し引いた実労働時間の計算や、所定労働時間を超えた時間外労働の算出、深夜労働時間（22時〜5時）の抽出などを数式で処理することで、手計算によるミスを防げます。

月別・社員別に集計できるフォーマットを整える

日々の勤怠データから月次集計を行う仕組みを構築します。SUMIF関数やPIVOTテーブルを活用して、従業員ごとの総労働時間や時間外労働時間、有給取得日数を自動集計できるようにします。また、部署別の集計や年間の累計管理も並行して行えるよう設計することで、人事労務業務の効率化が図れます。

ミスを防ぐための工夫やチェック項目を設定する

データ入力規則により時刻の入力形式を統一し、条件付き書式で異常値（24時間を超える勤務など）を自動で色分け表示します。さらに、月末には労働時間の合計が上限規制に抵触していないかを確認できるアラート機能を設けることで、法令違反の未然防止が可能です。

詳細な作成手順や具体的な関数の設定方法は、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

勤怠管理表だけでは限界？よくある課題とトラブル

Excelで作成した勤怠管理表の運用では、規模や業務の複雑化に伴ってさまざまな課題が顕在化します。課題を事前に理解し、対策を講じることで、より安定した勤怠管理体制を構築できます。

特に従業員数が増加したり、勤務形態が多様化したりする段階で、従来の管理方法では対応しきれない問題が発生しやすくなります。また、法改正への対応や労務監査への準備においても、手作業による管理では限界があることが多く見受けられます。

入力・集計ミスによる給与計算トラブル

手動入力による勤怠管理では、ヒューマンエラーが避けられず、給与計算や労務トラブルの原因となるケースが多発しています。特に月末の集計作業では、時間的な制約のなかで確認作業が不十分になりがちです。

典型的な入力ミスでは、出退勤時刻の入力間違い（17:00を7

）や、休憩時間の記録漏れ、有給休暇の重複入力などがあります。従業員の給与に直接影響するため、発見が遅れると大きな問題に発展します。

また、給与計算への影響では、残業代の過払いや未払いが発生し、従業員との信頼関係に悪影響を与えます。特に未払い残業代は、労働基準法違反として行政指導の対象となり、遡及して2〜3年分の支払いが必要となる場合があります。

さらに、労務トラブルの拡大リスクとして、従業員から労働基準監督署への申告や、労働審判・民事訴訟に発展するケースがあります。この場合、企業は適正な勤怠管理を行っていたことを立証する責任を負いますが、手作業による管理では記録の信頼性に疑義が生じやすく、企業に不利な判断が下される可能性が高まります。

複雑化する勤務形態への対応不足

現代の働き方の多様化により、従来の固定時間勤務以外の勤務形態が急速に普及しています。しかし、Excelなどの手作業による勤怠管理では、複雑な勤務形態に適切に対応することが困難になっています。

特に24時間営業や交代制勤務を行う企業では、夜勤手当や深夜割増の計算が複雑になります。勤務時間が日付をまたぐ場合の労働時間集計や、シフトパターンごとの所定労働時間の管理は、手作業では計算ミスが頻発します。また、急なシフト変更への対応や、代替要員の管理も煩雑になりがちです。

テレワーク・在宅勤務では、従業員が自己申告する勤務時間の正確性の担保が課題となります。オフィス勤務と在宅勤務が混在する場合、労働時間の実態把握が困難になり、長時間労働の隠れた発生や、逆に勤務時間の過少申告などのリスクが生じます。労働基準法では、テレワークでも適正な労働時間管理が求められているため、企業の管理責任は変わりません。

加えて、フレックスタイム制を導入している企業では、コアタイムの管理や総労働時間の上限チェック、深夜・休日労働の把握などが複雑になります。清算期間内での労働時間調整や、時間外労働の正確な算定が困難になり、適切な給与計算ができなくなる企業も多く見受けられます。

法改正対応が漏れるリスク

労働法制は頻繁に改正されており、企業は常に最新の法令に対応した勤怠管理を行う必要があります。しかし、手作業による管理では、時間外労働の上限規制（月45時間、年360時間等）や年次有給休暇の確実な取得（年5日）への対応が不十分になりがちです。

Excel管理では、上限値に対する自動チェック機能を設けることが困難で、違反に気づかずに運用を続けてしまう企業が散見されます。法違反が発覚した場合、企業名の公表や罰金刑などの厳しい処分が科される可能性があります。

また、36協定において、特別条項の発動要件や回数制限、労働者代表との合意内容の管理が複雑になります。手作業では、個々の従業員が36協定の範囲内で勤務しているかを継続的に監視することが困難で、知らないうちに協定違反となるリスクがあります。

今後の法改正への備え不足として、デジタル化推進や労働者保護の観点から、今後も労働法制の改正が予想されます。手作業による管理では、新たな要求事項への迅速な対応が困難で、法改正のたびに大幅なシステム変更や業務見直しが必要となり、企業の負担が増大します。また、対応の遅れにより、コンプライアンス違反のリスクも高まります。

勤怠管理表を効率的に作成・管理する方法

勤怠管理の課題を根本的に解決するためには、勤怠管理システムの導入が有効です。システム化により、手作業による煩雑な業務から解放され、より戦略的な人事労務管理に時間を割けるようになります。

勤怠管理システムは、従来のExcel管理では実現困難だった自動化や正確性の向上、法令対応の強化を同時に実現できます。また、リアルタイムでの労働時間把握により、問題の早期発見と迅速な対応が可能になり、労務リスクの大幅な軽減が期待できます。

Excelの勤怠管理表と勤怠管理システムの違い

勤怠管理システムとExcel管理では、機能面や効率性、正確性、拡張性において大きな差があります。以下の比較表で両者の違いを詳しく確認してみましょう。

項目	Excelの勤怠管理表	勤怠管理システム
初期導入	無料・自社作成可能	初期費用・月額費用が必要
入力方法	手動入力（転記作業）	打刻機器との連携・自動記録
計算処理	手動計算・関数設定	自動計算・即座に結果反映
ミス発生率	月20〜30件（200名規模）	月2〜3件程度に削減
集計作業	月末8〜10時間の作業	1〜2時間で完了
法改正対応	手動で表を修正	自動アップデートで対応
アクセス管理	ファイル共有の課題	権限設定・セキュリティ確保
バックアップ	手動保存・紛失リスク	自動バックアップ・クラウド保存
拡張性	従業員増加で限界	スケーラブルな対応
分析機能	基本的な集計のみ	多角的分析・レポート機能

Excelでは個人のスキルに依存する部分が大きく、担当者の異動時に業務の引き継ぎが困難になることがあります。一方、勤怠管理システムでは標準化された操作により、誰でも一定レベルの管理ができるため、属人化リスクを回避できます。

また、Excelでは入力者による改ざんや意図しない変更のリスクがありますが、勤怠管理システムでは打刻データの改ざん防止機能や承認ワークフローにより、データの信頼性が確保されます。労働基準監督署の調査時においても、システムによる客観的な記録は証拠能力が高く評価されます。

勤怠管理システムの導入効果

勤怠管理システムの導入により、企業は定量的・定性的な両面で大きな効果を実感できます。特に以下の条件を満たす企業では、業務効率化と精度向上の効果が即座に現れる傾向にあります。

• 従業員数が50名以上の企業
• 多様な勤務形態を採用している企業（シフト制・フレックスタイム制・テレワークなど）
• 事業拡大により従業員数が急増している企業
• 新拠点の開設を計画している企業
• 高度な法令遵守体制の構築が求められる企業

業務時間の削減

勤怠管理システムの導入により、月末の集計作業が従来の8〜10時間から1〜2時間程度に短縮されることが一般的です。ある企業（従業員200名）では、人事担当者の勤怠管理業務時間が月30時間から5時間に削減され、年間で約300時間の工数削減を実現しています。

人事担当者は、採用活動や人材育成、労務相談など、より付加価値の高い業務に注力できるようになります。

計算精度の向上

勤怠管理システムの導入により、手計算によるミスがほぼゼロになります。導入前は月平均で20〜30件発生していた勤怠記録の修正作業が、導入後は2〜3件程度に激減したという事例も多くあります。これにより、給与計算の再計算や従業員への謝罪・説明などの二次的な業務負担も大幅に軽減されます。

法令遵守体制の強化

勤怠管理システムによる自動チェック機能により、時間外労働の上限規制や36協定の遵守状況をリアルタイムで監視できます。違反の恐れがある場合は事前にアラートが発信されるため、問題の未然防止が可能です。

経営判断への活用

勤怠管理システムに蓄積されたデータは、人件費の分析や生産性の向上、適正な人員配置の検討などに活用できます。部署別・時期別の労働時間分析により、業務の繁閑差を把握し、効率的な人員配置や業務改善の施策立案に役立てられます。

まとめ

勤怠管理表は企業運営において法的義務を果たし、適正な労務管理を実現するための重要な基盤です。しかし、Excelなどの手作業による管理では、規模の拡大や勤務形態の多様化に伴ってさまざまな課題が顕在化します。

勤怠管理システムの導入により、業務効率化や計算精度の向上、法令遵守体制の強化、戦略的な人事労務管理への転換が実現できます。導入効果を最大化するためには、自社の業務特性と将来計画を踏まえた適切なシステム選定が重要です。

現在の勤怠管理に課題を感じている企業は、現状の問題点を整理し、システム導入による解決効果を具体的に検討することがおすすめです。勤怠管理システムにより、労務管理の質的向上と業務効率化を同時に実現し、企業の持続的成長を支える基盤を構築できるでしょう。

自社に最適な勤怠管理システムを見つけるには？

勤怠管理システムは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。

自社に最適な勤怠管理システムを見つける際には「FitGap」をご利用ください。FitGapは、自社にぴったりの製品を選ぶための無料診断サービスです。簡単な質問に答えていくだけで、自社に必要なシステム要件が整理でき、各製品の料金や強み、注意点、市場シェアなどを知ることができます。

自社に最適な勤怠管理システムを選ぶために、ぜひFitGapをご利用ください。