タイムカードによる勤怠管理の課題と注意点!システム化のポイントも紹介
企業の勤怠管理において、タイムカードは長年にわたって使用されてきた代表的な打刻方法です。しかし、集計作業の煩雑さや打刻ミスの頻発、法令対応の難しさなど、多くの課題を抱えているのも事実です。
特に労働基準法の改正や働き方の多様化が進む中で、従来のタイムカード運用だけでは限界を感じる担当者も増えています。本記事では、タイムカードによる勤怠管理で発生する課題や法令対応のポイントなどを解説します。
タイムカードによる勤怠管理で担当者が抱える悩み
タイムカードを使用している企業の担当者は、日々の運用においてさまざまな課題に直面しています。労働時間管理の正確性や法令遵守にも影響を与える重要な問題のため、しっかり理解しておきましょう。
集計作業に時間がかかる
月末の給与計算時期になると、人事担当者にとって負担の大きい作業がタイムカードの集計です。従業員1人ひとりのタイムカードを確認し、出勤時刻と退勤時刻を読み取って、Excelに手入力していく作業は想像以上に時間がかかります。特に従業員数が50名を超える企業では、集計作業だけで数日を要することも珍しくありません。
さらに、労働時間の計算には休憩時間の控除や残業時間の算出、深夜割増の計算なども含まれるため、単純な時間計算だけでは済まないのが実情です。手計算でミスが発生するリスクも高く、何度も確認作業を行う必要があります。
繁忙期や年末年始など、ただでさえ業務が集中する時期に、煩雑な集計作業が重なることで、担当者の負担は大幅に増加します。また、有給休暇の取得状況や各種手当の計算も手作業で行う必要があり、人事業務全体の効率化を阻害する要因となっています。
打刻漏れ・打刻ミスが多い
タイムカード運用において最も頻繁に発生するのが、打刻漏れや打刻ミスです。
- 出勤時は打刻したものの退勤時に忘れてしまう
- 急いでいるときにカードを挿入する向きを間違える
- 他の従業員のカードと間違えて打刻してしまう
上記のように、さまざまなパターンの問題が日常的に起こります。
特に問題となるのは、打刻漏れが発覚したときの対応です。従業員から申告があった場合は、その都度事実確認を行い、上司の承認を得て手書きで修正する必要があります。修正作業は時間がかかるだけでなく、労働時間の正確性にも疑問を生じさせる原因となります。
また、打刻時刻の読み取りが困難な場合もあります。印字が薄い、時刻がずれて印字されている、複数回打刻してしまい判読が困難になるなど、人的要因以外の機械的トラブルも発生します。これらの問題が積み重なると、勤怠管理の信頼性が揺らぐことになります。
保管コスト・管理リスクが発生する
労働基準法により、賃金台帳や出勤簿などの労働者名簿は3年間の保存が義務付けられています。タイムカードも勤怠記録として同様の保存期間が求められるため、大量の紙カードを長期間保管する必要があります。月に数十枚から数百枚のタイムカードが発生する企業では、年間で相当な量の書類保管が必要となります。
保管には物理的なスペースとファイリング用品のコストがかかります。また、ファイルが増えることで必要な情報を探し出すのに時間がかかり、労働基準監督署の調査や監査対応時に迅速な資料提出が困難になる場合があります。
さらに深刻なのは、紙媒体特有の管理リスクです。火災や水害による紛失、カードの劣化による判読不能、不適切な保管による情報漏洩などのリスクが常に存在します。一度失われた勤怠記録は復元が困難で、法令遵守の観点からも重大な問題となります。
タイムカードによる勤怠管理で注意すべき法令・運用ポイント
勤怠管理は労働基準法をはじめとする法令に基づいて適切に行う必要があります。タイムカードを使用する場合でも、法的要件を満たした運用を心がけることが重要です。
労基法に基づく保存義務
労働基準法第109条では、使用者に対して労働者名簿や賃金台帳、雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存することを義務付けています。タイムカードは出勤簿に該当するため、この保存義務の対象となります。
保存期間の起算点は、労働者が退職した日、または該当する労働関係が終了した日からとなります。つまり、在職中の従業員のタイムカードは退職するまで保存し続ける必要があり、退職後も3年間は保管が必要です。アルバイトやパート従業員も正社員と同様の取り扱いとなるため、雇用形態に関係なく保存義務があります。
また、保存方法については明確な規定はありませんが、労働基準監督署の調査時に速やかに提出できる状態で保管する必要があります。電子データでの保存も認められていますが、改ざんや紛失のリスクを避けるため、適切なバックアップ体制を整えることが求められます。
違反した場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、確実な保存管理体制の構築が不可欠です。
36協定と労働時間管理
時間外労働を行わせる場合は、労働基準法第36条に基づく協定(36協定)を労働基準監督署に届け出る必要があります。36協定では、月間の時間外労働時間の上限や特別条項の適用条件などを定めており、基準を遵守するためには正確な労働時間管理が必要不可欠です。
タイムカードによる管理では、時間外労働時間の算出を手作業で行うため、計算ミスや集計漏れが発生するリスクがあります。特に変形労働時間制を採用している企業では、所定労働時間の設定が複雑になるため、より注意深い管理が求められます。
また、2019年4月から施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が設けられました。月45時間、年360時間を原則とし、特別条項を設けた場合でも年720時間以内、単月100時間未満、複数月平均80時間以内という厳格な基準が設定されています。これらの基準に抵触しないよう、リアルタイムでの労働時間把握と適切な労務管理が重要です。
タイムカードでは月末まで正確な労働時間が把握できないため、上限に近づいている従業員の管理が困難になる場合があります。
タイムカードによる勤怠管理の限界
働き方の多様化や労働関連法規の厳格化が進む中で、従来のタイムカード運用では対応しきれない課題が顕在化しています。タイムカードによる勤怠管理の限界を理解し、適切な対策を検討することが重要です。
人為的ミスがなくならない
タイムカード運用における最大の課題は、人的要因によるミスが構造的に発生し続けることです。打刻時点でのミスや集計時の転記ミス、計算ミスなど、いくら注意深く作業を行ってもミスを完全になくすことは困難です。特に月末の忙しい時期には、時間に追われて確認作業が不十分になりがちです。
これらのミスは単なる業務効率の問題にとどまらず、給与計算の間違いや労働時間管理の不正確さにつながり、最終的には従業員との信頼関係や法令遵守に影響を与える深刻な問題となります。
リアルタイムで勤怠状況が把握できない
現代の労務管理では、従業員の勤務状況をリアルタイムで把握し、適切な労働時間管理を行うことが求められています。しかし、タイムカードによる管理では、月末の集計まで正確な労働時間がわからないという根本的な問題があります。
また、急な欠勤や遅刻が発生した場合の人員配置調整、プロジェクトの進捗管理における労働時間の配分見直しなど、日常的な労務管理においてもリアルタイム性の欠如は大きな制約となります。
テレワークや外出先打刻に対応できない
近年では、テレワークや営業職の直行直帰など、オフィス以外での勤務が増加しています。しかし、タイムカードは物理的にオフィスに設置されたタイムレコーダーでの打刻が前提となっているため、これらの働き方に対応できません。
さらに、複数の事業所を持つ企業では、出張先や別事業所での勤務時の打刻方法も問題となります。出張先にタイムレコーダーを設置することは現実的ではなく、結果として労働時間管理に空白が生じてしまいます。
働き方改革の推進により、今後もこのような多様な勤務形態は増加すると予想されるため、タイムカードによる管理では限界があることは明らかです。
タイムカードから勤怠管理システムに移行するメリット
タイムカードによる勤怠管理には、さまざまな問題が生じやすいです。そこで、上記のような課題を根本的に解決できる手段として、勤怠管理システムの導入が推奨されています。ここでは、タイムカードから勤怠管理システムへ移行することのメリットを紹介します。
集計業務を削減できる
勤怠管理システムでは、数日かけて行っていたタイムカードからの転記や計算作業が自動化されます。打刻データは即座にデータベースに保存され、設定したルールに基づいて労働時間の計算が行われます。
残業時間の算出や深夜割増の計算、休憩時間の控除なども自動で処理されるため、計算ミスのリスクがありません。有給休暇の取得日数管理や各種手当の計算、給与システムとの連携など、人事業務全体の効率化が実現します。
また、月末を待たずに随時労働時間の確認ができるため、給与計算の前倒しや、労働時間に関する問い合わせへの迅速な対応が可能になります。担当者は集計作業から解放され、より戦略的な人事業務に時間を割けるようになります。
打刻ミスを防止できる
勤怠管理システムでは、打刻時点でのチェック機能により、多くのミスを事前に防げます。重複打刻の防止や打刻忘れのアラート表示、不正な時刻での打刻の検知など、さまざまな機能が備わっています。
ICカードやスマートフォンを使用した打刻方式では、個人認証が確実に行われるため、他人のカードでの誤打刻が発生しません。また、打刻時刻がリアルタイムでシステムに記録されるため、印字の読み取り困難や時刻のずれといった問題も解消されます。
システムによっては、GPS機能を活用して打刻場所の記録や、設定エリア外での打刻を制限する機能もあります。これにより、不正打刻の防止や、テレワーク時の適切な勤務場所管理が可能になります。
打刻修正が必要な場合も、システム上で申請・承認のワークフローを設定できます。修正理由の記録や承認者による確認、修正履歴の保持など、透明性の高い修正プロセスを構築できます。結果として、労働時間管理の信頼性が大幅に向上します。
法令対応を効率化できる
勤怠管理システムは、労働基準法をはじめとする各種法令への対応を効率化する機能を備えています。36協定の上限管理では、リアルタイムで時間外労働時間を監視し、設定した基準に近づいた段階でアラートを表示します。これにより、上限を超過する前に適切な対応を取れます。
また、システム上で自動的にデータのバックアップが取られ、法定保存期間中のデータ紛失リスクを大幅に軽減できます。労働基準監督署の調査時には、必要な期間のデータを瞬時に抽出・出力できるため、対応時間の短縮と資料の正確性確保が実現します。
労働安全衛生法に基づく長時間労働者の管理では、月80時間以上の時間外労働者を自動で抽出し、産業医面談の対象者リストを作成できます。健康管理と法令遵守の両面で効果を発揮します。
多様な勤務形態に対応できる
勤怠管理システムでは、PCやスマートフォンからの打刻により、在宅勤務時の労働時間を正確に記録できます。GPS機能やIP制限により、適切な場所からの打刻であることも確認できます。
直行直帰が多い営業職では、外出先からのスマートフォン打刻により、移動時間を除いた正確な労働時間の把握が可能になります。訪問先の記録と連携することで、業務内容と労働時間の関連性も明確にできます。
また、個人別の勤務パターン設定や、コアタイムの管理、清算期間における労働時間の自動計算など、フレックスタイム制や変形労働時間制に関する管理を正確に行えます。
タイムカードと勤怠管理システムの比較
タイムカードと勤怠管理システムには、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットがあります。自社の規模や業種、予算、運用体制を考慮して最適な選択を行うことが重要です。
| 項目 | タイムカード | 勤怠管理システム |
|---|---|---|
| 導入・運用コスト | タイムレコーダー・カード | 初期導入費用・ライセンス料 |
| 集計方法 | 手作業・Excel転記が必要 | 自動集計・リアルタイム反映 |
| 打刻方法 | 機械打刻(紙カード) | ICカード、スマホ、PCなど |
| 打刻ミス対応 | 修正作業が煩雑 | 修正申請ワークフローで簡易対応 |
| 法令対応 | 手動で保存・計算が必要 | 保存義務・36協定管理も自動対応 |
| テレワーク対応 | 不可 | 可能(外出先打刻・GPS打刻など) |
| リアルタイム把握 | 不可 | 可能 |
| 保管コスト | 紙カード保管が必要 | データ保存で物理保管不要 |
初期費用
タイムカードは、タイムレコーダー本体とカードの購入だけで運用を開始できるため、比較的低コストで導入できます。一方、勤怠管理システムは、初期導入費用やライセンス料が必要です。ただし、長期的な運用コストを考慮すると、中長期的にはコストメリットが生まれる場合が多くあります。
運用
タイムカードは、操作が簡単で従業員の教育コストが少ない反面、集計作業や修正対応に多大な人的コストがかかります。勤怠管理システムは、初期の設定や従業員への説明に時間がかかりますが、その後の運用は大幅に効率化されます。
正確性と信頼性
タイムカードは、手作業によるミスのリスクが常に存在し、月末まで正確な労働時間がわからないという制約があります。勤怠管理システムは、自動計算により人的ミスが排除され、リアルタイムでの状況把握が可能になります。
法令対応力
勤怠管理システムは、36協定管理や有給休暇管理など、法的要件への対応機能が充実しています。アラート機能により事前の対策も可能で、コンプライアンス強化に大きく貢献します。
従業員数20名以下の小規模企業で、出勤パターンが単純で、テレワークなどの多様な働き方がない場合は、タイムカードでも十分対応可能です。しかし、従業員数が30名を超える企業や、複雑な勤務制度を採用している企業、法令対応の確実性を重視する企業では、勤怠管理システムの導入を強く推奨します。
タイムカードから勤怠管理システムへ移行する際の注意点
タイムカードから勤怠管理システムへの移行を成功させるためには、事前の準備と適切な進行管理が重要です。計画的な移行により、業務への影響を最小限に抑えながらスムーズな導入を実現できます。
導入前の運用フローを整理する
勤怠管理システムの導入前に、現在の勤怠管理フローを詳細に分析し、課題と改善点を明確にすることが重要です。タイムカードでの打刻から集計、給与計算までの一連の流れを可視化し、どの工程に時間がかかっているか、どこでミスが発生しやすいかを把握しましょう。
また、正社員やアルバイト、パートなどの雇用形態別の勤務時間や、休憩時間の設定、残業ルール、有給休暇の取り扱いなど、現在の運用ルールを文書化します。複数の勤務パターンがある場合は、それぞれの特徴と勤怠管理システムでの設定方法を検討します。
加えて、打刻修正の承認者、有給休暇申請の承認ルート、残業申請の手続きなど、現在の運用を参考にしながら、システム上での効率的なワークフローを設計しましょう。
従業員に運用ルールを周知する
勤怠管理システムの円滑な運用には、従業員への適切な説明と教育が不可欠です。導入前に説明会を開催し、システム導入の目的、新しい打刻方法、運用ルールの変更点などを丁寧に説明しましょう。同時に操作マニュアルを作成・配布するのもおすすめです。
移行初期には、タイムカードとシステムを並行運用する期間を設けることで、システムの動作確認と従業員の習熟を図りながら、段階的な移行を実現できます。また、質問窓口の設置や、システムに詳しい担当者による巡回サポートなど、導入後のフォロー体制も整備します。
タイムカード対応の勤怠管理システムもある
既存のタイムカード運用を活かしながらシステム化を図りたい企業向けに、タイムカード読み取り機能を持つ勤怠管理システムも提供されています。タイムカード対応の勤怠管理システムは、タイムカードをスキャンして打刻データを自動で読み取り、システムに取り込む機能を備えています。
そのため、従業員は今まで通りタイムレコーダーで打刻を行い、システム側でカードの画像を解析して時刻データを抽出します。OCR(光学文字認識)技術の向上により、印字された数字を高精度で読み取れ、手入力による転記作業を大幅に削減できます。
従業員の操作方法を変更する必要がないため、システム移行への抵抗感も少なく、スムーズな導入が期待できます。以下のページで、タイムカード対応の勤怠管理システムのおすすめ製品を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
タイムカードによる勤怠管理は、集計作業の負担や打刻ミスの頻発、法令対応の困難さ、多様な働き方への対応不足など、さまざまな課題を抱えています。勤怠管理システムへの移行も視野に入れ、課題にしっかりと向き合うことが大切です。
勤怠管理の改善は、従業員の働きやすさの向上と企業のコンプライアンス強化を同時に実現する重要な投資です。現在の課題を正確に把握し、将来を見据えた適切な選択を行うことで、より効率的で信頼性の高い勤怠管理体制を構築できるでしょう。
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勤怠管理システムは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。
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