Excelでワークフローを作成・管理する方法!課題や限界も解説
業務プロセスの見直しやワークフローの整備を検討する際、多くの企業がまず思い浮かべるのがExcelを活用した管理方法です。
Excelは身近なツールとして多くの企業で使われており、基本的なワークフロー管理であれば十分対応できます。経費精算や稟議申請、在庫管理といった日常業務のフローを図表化し、関係者間で共有することも可能です。ただし、運用を続けていくうちに管理の煩雑さや限界も見えてくるのも実情です。
本記事では、Excelを使ったワークフロー作成の具体的な手順や運用時のポイント、そしてシステム導入を検討すべきタイミングまで、段階的に解説していきます。
Excelでワークフローを作成する方法
Excelを使ったワークフロー作成には、体系的なアプローチが欠かせません。ここでは、Excelでワークフローを作成する方法を順番に説明します。
①目的を明確化する
Excelでワークフローを作成する前に最初に取り組むべきは、何を目指すのかを明確にすることです。経費精算や稟議申請、在庫管理など、対象となる業務領域を具体的に決めることで、以降の作業がスムーズに進みます。
目的が曖昧なまま作業を進めると、必要な要素が抜け落ちたり、逆に不要な項目が盛り込まれたりして、使いにくいワークフローが出来上がってしまいます。
また、ワークフローで解決したい課題もあわせて整理しておきましょう。承認期間の短縮が目的なのか、作業の標準化が目的なのか、それとも監査対応の強化が目的なのかによって、必要な機能や項目が変わってきます。目的と課題を明確にすることで、Excelを活用する方向性が定まり、後の工程で迷うことが少なくなります。
②業務プロセスを洗い出す
目的が決まったら、現在の業務プロセスを詳しく調べます。関係部署や担当者に対するヒアリングを通じて、実際の作業内容や承認ステップを漏れなく把握することが重要です。
ヒアリングでは、単に作業手順を聞くだけでなく、実際にかかる時間や頻度、発生しやすい問題点も確認しましょう。例えば、稟議申請プロセスの場合は、申請書作成にどのくらいの時間がかかるのか、承認者の判断期間はどの程度なのか、差し戻しが発生するケースはどんな時なのかといった情報を集めます。
また、例外的な処理や緊急時の対応方法も忘れずに確認しておきましょう。通常フローでは想定していない状況への対応策も含めてワークフローを設計することで、実運用での混乱を避けられます。部署間の連携が必要な場合は、情報の受け渡し方法や確認タイミングも詳しく聞き取りを行います。
③フロー図をExcelで作成する
業務プロセスが整理できたら、Excelを使ってフロー図を作成します。

開始から終了までの大まかな流れを矢印で示し、各工程を四角形のボックスで表現します。承認ポイントや判断分岐がある場合は、ひし形を使って表現するとわかりやすくなります。色分けも効果的で、例えば申請者の作業は青、承認者の作業は赤、システム処理は緑といった具合に役割別で色を変えると、一目で担当者がわかります。
レイアウトを整える際は、左から右へ、または上から下へという流れを意識しましょう。矢印の向きや文字の配置も統一することで、見栄えの良いフロー図になります。複雑なプロセスの場合は、メインフローとサブフローに分けて別々のシートに作成し、必要に応じて参照する形にすると管理しやすくなります。
④関連情報を表にまとめる
フロー図が完成したら、運用に必要な詳細情報を表形式で整理します。担当者一覧、承認者リスト、期限設定、連絡先といった情報を別シートや同じシート内の表でまとめることで、管理性が大幅に向上します。
担当者一覧では、各工程の責任者や代行者、連絡先を明記します。組織変更や人事異動があった場合でも、この表を更新するだけで対応できるため、メンテナンスが楽になります。承認者リストでは、承認権限の範囲や金額上限なども併せて記載しておくと、申請者が迷わずに済みます。
期限管理も重要な要素です。各工程でどのくらいの処理時間を見込むのか、全体でどの程度の期間がかかるのかを表にまとめておきましょう。これにより、申請者も承認者も適切なスケジュールで作業を進められます。また、遅延が発生した場合のアラート方法や対応手順もあわせて記載しておくと、トラブル時の対応がスムーズになります。
Excelでワークフローを管理するポイント
Excelを使ったワークフロー管理を成功させるには、運用面での工夫が欠かせません。複数の担当者が関わる業務では、適切なルール設定と管理体制が重要になります。ここでは、管理負担を軽減し、効率的な運用を実現するためのポイントを解説します。
バージョン管理を徹底する
Excelでのワークフロー管理で最も重要なのが、ファイルのバージョン管理です。複数の担当者が同じファイルを扱う場合、どれが最新版なのか分からなくなることがよくあります。ファイル名には必ず日付やバージョン番号を含めて、「ワークフロー管理表_v1.2_20250701」といった命名規則を徹底しましょう。
バージョン管理の仕組みを整える際は、更新履歴を記録するシートも作成しておくと便利です。更新日時や更新者、変更内容を記載することで、後から変更の経緯を確認できます。特に承認フローや担当者に変更があった場合は、その理由と影響範囲もあわせて記録しておくことで、トラブル時の原因究明がスムーズになります。
また、古いバージョンのファイルは削除せずに、別フォルダで保管しておくことをおすすめします。万が一、最新版に問題が発覚した場合でも、前のバージョンに戻せるためです。ただし、保管期間は決めておき、一定期間経過後は削除するなど、フォルダが肥大化しないよう配慮も必要です。
更新ルールを決める
誰がいつファイルを更新するのか、明確なルールを設定することが重要です。更新担当者が曖昧だと、複数の人が同時に編集してしまったり、逆に誰も更新せずに古い情報のまま放置されたりする危険性があります。更新頻度もあわせて決めておき、定期的なメンテナンスを習慣化しましょう。
また、承認者リストの更新は人事担当者のみ、業務フローの変更は業務責任者のみといった具合に、変更内容に応じて更新権限を必要最小限に絞ることで、誤った修正や不要な変更を防げます。また、更新前の確認プロセスも設けておくと、品質の担保につながります。
アクセス権限を管理する
社内共有ドライブやクラウドストレージを使ってExcelファイルを共有する場合は、適切なアクセス権限の設定が欠かせません。編集権限や閲覧権限を適切に制御することで、誤編集や情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。
編集権限は最小限の人数に絞り、その他の関係者には閲覧権限のみを与えることが基本です。特に、承認者リストや重要な業務フローを含むファイルは、管理者以外の編集を禁止しておくと安全です。読み取り専用ファイルとして配布する場合は、元ファイルとは別に閲覧用のコピーを作成することも有効です。
外部との共有が必要な場合は、パスワード保護機能を活用しましょう。ファイル全体だけでなく、特定のシートのみを保護することも可能です。また、印刷や内容のコピーを制限する設定もあるため、機密性の高い情報を扱う場合は適切な保護レベルを選択することが重要です。
定期的に見直す
ワークフローは一度作成して終わりではなく、継続的な改善が必要です。業務内容の変化や組織改編、システム更新などに応じて、定期的にワークフロー内容を見直しましょう。少なくとも四半期に一度は、関係者を集めてレビュー会議を開催することをおすすめします。
見直しの際は、承認期間が長すぎる、手戻りが多い、情報の伝達漏れがあるといった課題を具体的に把握し、原因分析を行います。利用者からのフィードバックも積極的に収集し、実用性の向上につなげましょう。
改善案を検討する際は、現実的な実装可能性も考慮することが大切です。理想的なフローであっても、現在のリソースや技術レベルで対応できなければ意味がありません。段階的な改善計画を立て、優先度の高いものから順次実施していくアプローチが効果的です。
Excelでワークフローを管理するメリット
Excelによるワークフロー管理は、特に導入初期や小規模な運用でのメリットが大きいです。ここでは、Excelでワークフローを管理するメリットを解説します。
コストを抑えられる
多くの企業ではすでにMicrosoft Officeライセンスを保有しているため、新たなソフトウェア購入や月額利用料の支払いなしに、Excelを活用してワークフロー管理を始められます。
また、Excelは多くのビジネスパーソンが日常的に使用しているため、新しいシステムを覚える負担が少なく済みます。マニュアル作成や操作説明会の準備時間も最小限で済むでしょう。さらに、保守・運用コストなどの継続的な費用負担もありません。
自由にカスタマイズできる
Excelでは、既存のワークフローに合わせてフォーマットを調整したり、特有の承認ルートを反映したりすることが簡単に行えます。例えば、部署ごとに異なる項目を追加したり、金額に応じて承認者を変更したりといった複雑な条件設定も、数式や条件付き書式を使って実現できます。
また、最初はシンプルなフロー図から始めて、運用に慣れてきたら承認履歴の記録機能を追加したり、自動計算機能を組み込んだりなど、ユーザーの習熟度や業務の複雑さに応じて、必要な機能を必要なタイミングで追加していけるため、無理のない導入が可能です。
社内共有が簡単
Excelファイルは、メール添付や共有フォルダ、クラウドストレージなど、社内の既存インフラを使って簡単に共有できます。ファイルサイズも比較的小さいため、メール送信やダウンロードの際の負荷も軽微です。
印刷して紙ベースで確認することも可能なため、デジタルツールに慣れていない関係者にも配慮できます。重要な承認フローを紙で保管したい場合や、システム障害時のバックアップとして印刷物を用意したい場合にも対応できる柔軟性があります。
Excelでワークフローを管理するデメリットと限界
Excelは手軽さや柔軟性というメリットがある一方で、業務規模が拡大したり、要求レベルが高まったりすると、さまざまな課題が表面化してきます。Excelでワークフローを管理する場合は、限界を理解しておくことも大切です。
更新・管理に手間がかかる
Excelは同じファイルを複数人が編集すると、最後に保存した人の内容で上書きされてしまい、他の人の変更内容が失われるリスクがあります。これを避けるために編集者を制限すると、今度は更新作業がボトルネックになり、業務効率が低下します。
また、ファイル数が増えてくると、どれが最新版なのか判断が困難になります。特に、緊急時の対応で複数の担当者が並行して修正作業を行った場合、後からファイルを統合する作業が非常に困難になります。変更履歴の追跡も手動で行う必要があるため、誰がいつ何を変更したのかを正確に把握するのは現実的ではありません。
承認フローの自動化ができない
Excel管理では、申請が提出されても、承認者に自動通知される仕組みがないため、メールや口頭での連絡に依存することになります。これにより、承認依頼の見落としや遅延が発生しやすくなります。
現在どの段階で承認が止まっているのか、誰の承認待ちなのかを把握するには、手動でファイルを確認する必要があります。複数の案件が並行して進行している場合、個別の進捗状況を追跡するのは非常に困難になります。
また、誰がいつ承認したのか、どのような理由で差し戻されたのか、といった情報を正確に記録するには、手動での入力に頼るしかありません。しかし、人間が行う作業には必ずミスが発生するため、監査や内部統制の観点から見ると信頼性に欠ける状況となります。
データの一元管理が難しい
各部署が独自にファイルを管理していると、同じ情報が複数の場所に散在し、整合性を保つのが困難になります。例えば、人事情報が変更された場合、関連するすべてのワークフローファイルを手動で更新する必要があり、更新漏れや入力ミスが発生しやすくなります。
また、各担当者が独自の書式でデータを入力していると、後からデータを統合する際に大きな手間がかかります。日付形式や金額表記、部署名の略称などが統一されていないと、自動集計ができずに手作業での調整が必要になります。
Excelとワークフローシステムの違い
Excelでのワークフロー管理から専用のワークフローシステムへの移行を検討する際は、両者の具体的な違いを理解しておくことが重要です。単純な機能比較だけでなく、運用面でのコストや効率性の違いも含めて総合的に判断する必要があります。
| Excel | ワークフローシステム | |
|---|---|---|
| 導入コスト | 低コスト(ソフト購入済みなら無料で利用可能) | 初期費用や月額利用料が発生する |
| 導入期間 | 即日〜数日 | 導入・設定に数週間かかることがある |
| 柔軟性 | 自由に図形や表を作成・編集できる | 事前設定されたテンプレートやルールに沿う |
| 自動化機能 | ほぼなし(手動での更新・承認が必要) | 承認依頼の自動通知やステータス管理が可能 |
| 共同編集・共有 | 共有ドライブ上で複数人編集可能だが、競合やバージョン管理が課題 | 複数ユーザーの同時操作をサポートし、最新状況をリアルタイム反映 |
| 承認履歴の管理 | 手動で記録管理が必要(改ざんリスクあり) | ログとして自動保存(監査対応も可能) |
| セキュリティ | ファイル単位のパスワード設定など限定的 | アクセス権限細分化やログ管理で安全性が高い |
| モバイル対応 | 限定的 | スマホ・タブレット対応アプリが充実 |
| データ集計・分析 | 手動での集計が必要 | 自動集計やダッシュボードで業務状況を可視化 |
Excelからワークフローシステムへ切り替えるタイミング
Excelでのワークフロー管理に限界を感じ始めたら、ワークフローシステムへの移行を検討する時期かもしれません。適切なタイミングで切り替えを行うことで、業務効率の向上と管理負担の軽減を実現できます。ここでは、移行検討の判断基準となる状況を解説します。
Excelファイルが複雑化してきたとき
ワークフローの項目が増加し、複数のシートに分割して管理するようになると、ファイルの構造が複雑化してトラブルのリスクが高まります。特に、参照式やリンクが多用されている場合は、1か所の変更が他の部分に予期しない影響を与える可能性があります。メンテナンス作業も高度な技術知識が必要になり、特定の担当者に依存する状況が生まれがちです。
また、複雑化したExcelファイルの構造を理解し、適切に運用するには相当な学習時間が必要になります。人事異動や退職によって属人化が問題になる前に、システム化を検討することが賢明です。
承認ミスや遅延が増えてきたとき
Excel管理では、承認プロセスが手動になるため、規模が拡大するとヒューマンエラーの発生頻度が高くなります。承認依頼の連絡漏れや、承認状況の確認ミス、差し戻し理由の伝達不備などが頻繁に発生するようになったら、システム化の検討時期です。
特に問題となるのが、承認の抜け漏れです。複数段階の承認が必要な場合は、どの段階まで完了しているのかを正確に把握するのが困難になります。途中の承認者が不在で処理が止まっていても、それに気づくのが遅れることがあります。結果として、重要な案件の処理が大幅に遅延し、ビジネスチャンスを逃すリスクが生じます。
テレワークへの対応が必要になったとき
テレワークやリモートワークが普及し、オフィス外からの承認作業が必要になる場面が増えています。Excelファイルベースの管理では、VPN接続や共有フォルダへのアクセス設定など、技術的なハードルが高くなります。特に、セキュリティポリシーが厳しい企業では、外部からのファイルアクセスが制限されることもあります。
また、スマートフォンやタブレットでExcelファイルを編集するのは難しく、承認作業の効率が大幅に低下します。緊急時の承認が必要な場合でも、PCがない環境では対応できないという事態が発生しがちです。
ワークフローシステムを導入するメリット
ワークフローシステムは、初期投資は必要ですが、中長期的に見れば大きな業務改善効果が期待できます。ここでは、ワークフローシステムの導入による主要なメリットを解説します。
承認作業を効率化できる
ワークフローシステムでは、申請が提出されると自動的に承認者を判定し、メールやプッシュ通知で承認依頼を送信します。承認者は通知を受け取ったその場で内容を確認し、モバイルアプリからでも承認操作が行えるため、従来よりも大幅に処理時間を短縮できます。
申請者は「誰の承認待ちなのか」「どのくらい時間がかかっているのか」といった現在の承認段階をリアルタイムで確認できるため、フォローアップのタイミングも適切に判断できます。承認者にとっても、自分が承認すべき案件の一覧表示や期限管理機能により、処理漏れや遅延を防げます。
また、少額案件は部長承認のみ、高額案件は役員承認まで必要といったルールを事前に設定しておけば、申請内容に応じて自動的に適切な承認フローが選択されます。これにより、必要以上に多段階の承認を経ることなく、効率的な承認プロセスを実現できます。
業務プロセスを標準化できる
ワークフローシステムでは、申請フォームのフォーマットが統一されるため、必要な情報の記載漏れや書式のバラつきがなくなります。承認者は常に同じ形式で情報を確認できるため、判断の精度と速度が向上します。
また、Excel管理で特定の担当者の知識に依存しがちな、ファイルの更新方法や承認ルートの判断がシステム内に組み込まれます。そのため、担当者が変わっても同じ品質で業務を継続でき、新任者の教育時間も大幅に短縮されます。
監査・内部統制に対応できる
企業のコンプライアンス要求が高まる中、適切な履歴管理と監査証跡の保存は欠かせない要素となっています。ワークフローシステムでは、すべての承認アクションが自動的に記録され、改ざん不可能な形で保存されます。
誰がいつどのような承認を行ったのか、差し戻しの理由は何だったのかといった詳細な情報が正確に記録されるため、監査対応が格段に楽になります。
また、システムへのログイン履歴や閲覧履歴、操作履歴がすべて記録されるため、不正アクセスや情報漏洩の早期発見が可能です。定期的なログ分析により、セキュリティインシデントの予防にもつながります。
まとめ
Excelを活用したワークフロー管理は、手軽に始められる方法として多くの企業で採用されています。導入コストが抑えられ、既存の知識を活用できるため、小規模な運用や試験的な導入には適しています。
しかし、業務規模の拡大や要求水準の向上に伴い、Excel管理の限界も明確になってきます。特に、Excelファイルが複雑化している企業や、承認ミスや遅延が増えている企業は、ワークフローシステムへの移行がおすすめです。
承認プロセスの自動化やリアルタイムな進捗管理、正確な履歴記録といった機能により、業務効率と品質の大幅な向上が期待できます。
多くのワークフローシステムでは無料トライアル期間が設けられているため、実際の業務で試用してから導入判断を行えます。段階的な移行計画を立て、現場の理解を得ながら進めることで、スムーズなシステム化を実現できるでしょう。
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ワークフローシステムは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。
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