経費精算における請求書の取り扱い方法!領収書との違いや業務フローを解説
企業間取引では、請求書ベースでのやり取りが多く、経費精算において請求書の正しい取り扱い方法を理解することは非常に重要です。
本記事では、経費精算における請求書の位置づけから実務での活用方法まで詳しく解説します。請求書を使った経費精算の方法を理解することで、税務調査時のリスクを軽減し、業務効率の向上にもつながります。
経費精算における請求書の基本知識
経費精算では、請求書と領収書の違いを正しく理解し、適切な証憑書類を選択することが求められます。請求書がどのような場面で活用でき、どのような制約があるのかを把握しておくことで、日常業務の精度向上と税務リスクの回避が可能になります。
そもそも請求書は必要?
経費精算において請求書は、必ずしも必須書類ではありません。一般的には領収書やレシートが証憑として使われることが多く、請求書は支払い前の段階で発行される書類として位置づけられています。
しかし、企業間取引では請求書ベースでの取引が主流となっており、特に継続的な取引関係にある場合や大きな金額の取引では、請求書が重要な役割を果たします。また、取引先によっては領収書の発行が困難な場合もあり、請求書が唯一の証憑となることもあります。
請求書と領収書の違い
請求書と領収書には以下のような違いがあります。
| 請求書 | 領収書 | |
|---|---|---|
| 定義 | 代金を請求するために発行される書類 | 代金を受領した事実を証明する書類 |
| 発行タイミング | 商品・サービス提供後に代金を請求する際 | 代金受領時 |
| 発行者 | 商品・サービス提供者(売り手側) | 商品・サービス提供者(売り手側) |
| 受領者 | 商品・サービス購入者(買い手側) | 商品・サービス購入者(買い手側) |
| 法的効力 | 代金請求権を示す書類だが、支払い証明にはならない | 支払い事実の証明書類として法的効力がある |
| 経費精算での役割 | 支払い前の証憑書類(支払い予定の確認) | 支払い後の証憑書類(経費計上の証拠) |
| 経費計上での扱い | 領収書がない場合の補足書類として扱われることが多い | 証憑書類として最も一般的に認められる |
| 必須記載項目 | 請求金額、内容、宛名、発行日など | 支払い金額、内容、宛名、発行日、受領印など |
請求書と領収書は、発行のタイミングと証明する内容が大きく異なります。請求書は代金の支払いを求める書類として取引前に発行され、一方で領収書は代金の受領を証明する書類として支払い後に発行されます。
法的効力の面では、領収書は代金支払いの事実を直接証明できるため、税務上の証憑としての信頼性が高く評価されています。請求書は支払い義務の存在を示すものの、実際の支払い事実は別途証明する必要があります。
経費精算時の取り扱いでは、領収書があれば問題なく経費として計上できますが、請求書のみの場合は支払い事実を示す振込記録や銀行通帳の写しなどの補完書類が求められることがあります。ただし、社内規定や運用ルールによって請求書のみでも経費計上を認めている企業も存在します。
請求書は証憑書類として認められるのか?
請求書が証憑書類として認められるかどうかは、取引の性質と社内規定によって判断が分かれます。継続的な取引関係がある取引先からの請求書で、過去の支払い実績が確認できる場合は、証憑として認められるケースが多くなっています。
税務調査時に問題となりやすいケースとしては、一度限りの取引や高額な取引において請求書のみで経費計上している場合が挙げられます。このようなケースでは、税務署から支払い事実の確認を求められることがあり、振込明細書や銀行通帳などの補完資料の提出が必要になる場合があります。
また、架空請求や水増し請求による不正な経費計上を防ぐため、請求書の内容確認や取引先との照合作業を適切に行うことが重要です。特に新規取引先からの請求書や通常と異なる内容の請求書については、より慎重な確認作業が求められます。
社内規定で請求書を証憑書類として認める場合のポイント
社内規定で請求書を証憑として認める場合は、不正利用を防ぐための適切な統制を設けることが不可欠です。まず、請求書を認める取引の範囲を明確に定義し、金額の上限や取引先の条件などを具体的に規定することが重要です。
承認プロセスでは、通常の経費申請よりも厳格な確認を行い、請求書の内容と実際の取引内容の整合性をチェックする体制を整備する必要があります。特に、請求書の宛名が正確に記載されているか、取引日付と経費計上日の整合性、消費税額の計算が正しいかなどの確認項目を明確にしておくことが大切です。
また、請求書を使用した経費精算については、定期的な内部監査を実施し、不適切な利用がないかをチェックする仕組みを構築することも重要です。監査では、支払い記録との照合や取引先への確認なども含めた包括的な検証を行うことで、制度の健全性を維持できます。
経費精算に必要な請求書の記載事項
経費精算で請求書を証憑として使用する場合は、税務要件を満たす適切な記載事項が含まれていることが前提となります。不完全な請求書では経費として認められないリスクがあるため、必要な項目を事前に確認しておくことが重要です。
請求書の必須記載項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求書タイトル | 書類上部に「請求書」と明記したタイトル |
| 請求書番号 | 識別管理のための通し番号(重複不可) |
| 発行日 | 請求書を発行した日付 |
| 請求先名称(宛名) | 請求先の会社名・個人名(正式名称で記載) |
| 請求先住所 | 請求先の所在地住所 |
| 請求先担当者名 | 請求先の部署名・担当者名 |
| 発行者名称 | 発行者の会社名または個人事業主名 |
| 発行者住所 | 発行者の所在地住所 |
| 発行者連絡先 | 発行者の電話番号、FAX番号、メールアドレスなど |
| 発行者担当者名 | 発行者の部署名・担当者名 |
| 請求金額 | 税抜金額、消費税額、税込総額 |
| 内訳 | 商品名、サービス内容、数量、単価、金額など |
| 消費税額 | 税率を明記し、消費税額を計算して記載 |
| 支払い期日 | 代金支払いの期日 |
| 支払い方法 | 銀行振込、現金、その他の支払い方法 |
| 振込口座情報 | 銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義 |
| 備考欄 | 特記事項や連絡事項 |
経費精算で有効な請求書には、まず正確な宛名の記載が必要です。宛名は正式な会社名で記載されており、略称や通称ではなく登記上の名称と一致していることが求められます。また、請求書の発行日も重要な要素であり、取引が行われた時期と整合性がとれている必要があります。
金額については、本体価格と消費税額を明確に区分して記載することが基本です。取引内容の記載では、具体的なサービス名や商品名を明記し、数量や単価も可能な限り詳細に記載されていることが望ましいです。抽象的な表現では税務調査時に説明が困難になる可能性があります。
請求書番号の記載も重要な要素です。請求書番号により取引の特定が可能になり、重複請求の防止や過去の取引履歴の確認が容易になります。発行者の情報では、会社名や住所、電話番号などの基本的な連絡先情報が記載されていることが必要です。
インボイス制度に対応した請求書の要件
インボイス制度の導入により、消費税の仕入税額控除を受けるためには適格請求書(インボイス)の要件を満たした請求書が必要になりました。インボイス対応の請求書では、上記の記載項目に加えて以下の項目も必要になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適格請求書発行事業者登録番号 | 登録を受けた事業者の番号を記載する |
| 適用税率 | 取引ごとに適用する税率(10%、8%など)を明記する |
| 消費税額 | 税率ごとの消費税額を記載する |
| 軽減税率対象である旨 | 軽減税率対象品目が含まれる場合、その旨を明記する(例:「※軽減税率対象」など) |
最も重要な要件は、適格請求書発行事業者の登録番号(Tから始まる13桁の番号)の記載です。消費税額では、税率ごとに区分した消費税額の記載が必要であり、軽減税率対象商品がある場合は、標準税率と軽減税率を明確に分けて表示する必要があります。また、税率ごとに合計した税抜き金額と消費税額の記載も求められます。
適格請求書発行事業者以外からの請求書では、消費税の仕入税額控除を受けられません。そのため、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを事前に確認し、必要に応じて登録を依頼することも重要です。経費精算システムでは、登録番号の自動チェック機能を活用することで、インボイス要件への対応を効率化できます。
請求書を使った経費精算の流れ
請求書を活用した経費精算では、受領から保管まで一連の業務フローを適切に管理することが重要です。各段階で必要な確認作業を怠ると、後の工程で問題が発生したり、税務調査時に適切な説明ができなくなったりするリスクがあります。
請求書受領
取引先から請求書を受け取る際は、受領方法と受領日の記録を確実に行います。郵送で受け取る場合は到着日を記録し、メール添付で受け取る場合は受信日時を確認します。経費精算システムにアップロードされた請求書についても、システム上での受領日時が自動記録されることを確認しておくことが大切です。
受領時には請求書の破損や不鮮明な部分がないかもあわせて確認します。PDF形式で受け取った場合は、ファイルが正常に開けるか、文字が読み取り可能かをチェックします。問題がある場合は速やかに取引先に連絡し、再発行を依頼することが重要です。
受領した請求書は、紛失を防ぐため速やかに所定の場所に保管するか、システムに登録します。複数の担当者が関わる場合は、受領者と処理担当者を明確にし、引き継ぎ時の漏れを防ぐ体制を整備することが必要です。
請求書内容の確認
受領した請求書の内容確認では、まず宛名が自社の正式名称になっているかを確認します。略称や旧社名、部署名のみの記載では税務上の証憑として不適切とされる場合があります。金額については、発注時の見積額や契約金額との整合性を確認し、計算間違いや桁間違いがないかをチェックします。
取引内容では、実際に提供されたサービスや納品された商品と一致しているかを確認します。日付については、取引が実施された時期と請求書発行日が適切な範囲内にあるかを確認し、決算期末前後の取引では特に注意深くチェックします。
インボイス制度に対応した請求書では、適格請求書発行事業者番号の記載を必ず確認します。番号が記載されていない場合や間違っている場合は、消費税の仕入税額控除を受けられないため、取引先に修正を依頼する必要があります。不備が発見された場合は、処理を進める前に必ず取引先への確認や修正依頼を行います。
経費精算書の作成
請求書の内容確認が完了したら、その内容をもとに経費精算書を作成します。請求書に記載された金額や日付、取引内容を正確に転記し、社内の勘定科目分類に従って適切に仕訳します。複数の費目にわたる場合は、内訳を明確に記載することが重要です。
経費精算書には請求書を添付し、システム利用の場合は請求書の画像やPDFファイルをアップロードします。添付書類と経費精算書の内容が一致していることを最終確認し、必要に応じて補足説明を記載します。
承認
上長や経理担当者による承認では、経費精算書と添付された請求書の内容を詳細に確認します。金額の一致や取引内容の妥当性、社内規定への適合性などを総合的に判断し、必要に応じて申請者に詳細な説明を求めます。
承認者は、請求書が適切な証憑書類として機能するかどうかも確認します。特に、支払い事実を証明する補完書類の必要性や、税務調査時の説明可能性などを考慮して承認可否を判断します。不明な点がある場合は、承認を保留して詳細な確認を行うことが重要です。
経理担当者による最終確認では、インボイス制度への対応状況や消費税の処理方法、勘定科目の分類などを専門的な観点からチェックします。
支払い処理
承認後の支払い処理では、請求書に記載された支払い条件や振込先情報を確認し、期日内に正確な支払いを実行します。振込手数料の負担や支払い方法についても、契約条件や社内規定に従って適切に処理します。
支払い実行後は、振込明細書や通帳記録などの支払い証明書類を保管し、請求書とあわせて証憑として管理します。支払い日や処理者の記録も残し、後の照合作業や監査対応に備えます。
支払い漏れを防ぐため、支払い予定日の管理や催促機能を活用することも重要です。経費精算システムでは、支払い予定日のアラート機能や未払い残高の管理機能を活用することで、効率的な支払い管理が可能になります。
保管・電子保存
処理が完了した請求書は、法定保存期間に従って適切に保管します。紙の請求書は、税務調査時にすぐに提出できるよう整理して保管し、電子データの場合は電子帳簿保存法の要件に従って保存します。
電子帳簿保存法では、真実性や可視性の確保が求められるため、承認済みの請求書については改ざん防止措置を講じて保存する必要があります。また、検索機能の確保も重要な要件であり、日付や取引先、金額などでの検索が可能な状態で保存します。
インボイス制度への対応では、適格請求書発行事業者番号や消費税額の記録も含めて適切に保管することが必要です。税務調査時には、これらの情報を速やかに提示できる体制を整備しておくことが重要です。
経費精算システムで請求書管理を効率化しよう
経費精算システムを活用した請求書管理は多くの企業で導入が進んでいます。経費精算システムの導入により、従来の紙ベースの管理では困難だった効率化や精度向上が実現できるようになり、経費精算業務全体の生産性向上につながります。
証憑の紛失リスクを防止できる
経費精算システムに請求書を電子保存することで、紛失リスクがなくなります。また、物理的な保管場所も不要になり、オフィスのスペース効率向上や、保管コストの削減効果も期待できます。
バックアップ機能により、災害時のデータ消失リスクも軽減されます。紙の書類は火災や水害で失われる可能性がありますが、経費精算システムでは複数拠点でのデータ保管により、事業継続性の確保が可能になります。
検索性・参照性が向上する
経費精算システムでは、日付範囲や取引先名、金額範囲、請求書番号など、さまざまな条件での検索が瞬時に実行できます。過去の請求書を探すために大量のファイルを手作業でめくる必要がなくなり、業務効率が大幅に向上します。
取引先から過去の請求書に関する問い合わせがあった場合には、瞬時に該当する書類を検索・特定でき、即座に内容確認や回答ができるようになります。
承認フローが効率化する
経費精算書と請求書を紐づけて申請することで、承認者は両方の書類を同じ画面で同時に確認できるようになります。従来のように紙の書類を別々に確認する必要がなくなり、承認作業の効率が大幅に向上します。
承認者が外出先からでもスマートフォンやタブレットで承認作業を行えるため、決裁スピードがアップします。紙ベースでは承認者の帰社を待つ必要がありましたが、経費精算システムにより場所を選ばない承認が可能になります。
また、承認履歴の自動記録により、誰がいつ承認したかが明確に残るため、監査対応や内部統制の強化にも寄与します。承認遅延の場合のアラート機能により、処理の滞留を防ぐことも可能です。
電子帳簿保存法・インボイス制度に対応できる
経費精算システムでは、電子帳簿保存法に準拠した保存機能により、法的要件を満たした形での請求書保管が可能になります。真実性確保のためのタイムスタンプ機能や、可視性確保のための検索機能などが標準装備されており、法令遵守が確実に行えます。
適格請求書発行事業者番号の自動チェック機能により、インボイス制度の要件への適合性を確認できます。登録番号が未記載の請求書や無効な番号が記載された請求書を自動で検出し、処理前にエラーとして通知する機能もあります。
加えて、税務調査などで調査官から資料要求が発生しても、検索により該当する請求書を瞬時に抽出し、電子データまたは印刷物として提供できます。検索条件の履歴も残るため、調査対応の透明性も確保されます。
まとめ
企業間取引が多い企業では、請求書を活用した経費精算の仕組み作りが重要になります。社内規定の整備から突合作業の標準化まで、体系的なアプローチにより請求書管理の精度と効率性を両立できます。
経費精算システムを導入すれば、証憑の電子保存や検索機能の充実、承認フローの効率化、法令対応の自動化などが実現します。請求書管理の課題を抱えている企業は、経費精算システムの導入を積極的に検討することをおすすめします。
自社に最適な経費精算システムを見つけるには?
経費精算システムは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。
自社に最適な経費精算システムを見つける際には「FitGap」をご利用ください。FitGapは、自社にぴったりの製品を選ぶための無料診断サービスです。簡単な質問に答えていくだけで、自社に必要なシステム要件が整理でき、各製品の料金や強み、注意点、市場シェアなどを知ることができます。
自社にぴったりの経費精算システムを選ぶために、ぜひFitGapをご利用ください。
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