人事評価が低いから頑張らない社員への対処法とは?制度改善のポイントも紹介
「人事評価が低いから頑張らない」という社員の声を聞いて、困っている人事担当者や管理職の方は多いのではないでしょうか。評価制度への不満から社員のモチベーションが下がってしまうと、組織全体の生産性や士気にも大きな影響を与えてしまいます。
この記事では、なぜ社員が評価に不満を持ち努力をやめてしまうのか、その心理的背景を詳しく解説します。また、モチベーション低下が組織に与える具体的な悪影響や、企業が取り組むべき対応策、人事評価制度そのものの改善方法などをお伝えします。
人事評価でモチベーション低下を経験している社員は多い
株式会社ワークポートが、全国のビジネスパーソン455人を対象に実施した「人事評価に関する満足度調査」では、約8割が人事評価によるモチベーション低下を経験したことがあると回答しています。

人事評価は本来、社員の成長を促し、組織の目標達成を支援するためのものです。しかし現実には、多くの社員が評価制度に対して不満や疑問を抱き、結果として仕事への意欲を失っているのが実情です。
このような状況を放置すると、優秀な人材の流出や組織全体のパフォーマンス低下につながるリスクがあります。だからこそ、人事担当者や管理職の方々は、評価制度の問題点を理解し、改善に向けた取り組みを進めることが重要になります。
社員が人事評価が低いから頑張らないと思う理由・心理
上記の「人事評価に関する満足度調査」で挙がっている声を参考に、多くの社員が人事評価が低いから頑張らないと感じる理由を見ていきましょう。また、なぜ人事評価が低いと社員は意欲を失うのか、具体的な要因を整理します。
評価に対する説明が曖昧で納得感がない
社員に評価結果を伝える際に、「総合的に判断して」「もう少し頑張って」といった曖昧な表現で済ませてしまうケースがよくあります。社員にとって、なぜその評価になったのか、具体的に何を改善すべきなのかがわからなければ、評価制度そのものに対する不信感が生まれてしまいます。
特に、同じような成果を上げているにも関わらず評価に差がある場合、その理由が明確に説明されないと「不公平だ」と感じるのは当然のことです。評価者が忙しくて十分な説明時間を取れない、または評価の根拠を整理できていない状況では、社員の納得感を得ることは困難でしょう。
業務を理解していない人が評価者であり現実に即していない
直接的に業務に関わっていない上司や、異動してきたばかりの管理職が評価者になるケースでは、社員の実際の業務内容や努力を正確に把握できていない場合があります。
例えば、業務の詳細を理解していない評価者は、売上数字だけを見て低い評価をつける可能性があります。社員からすれば、自分の努力や戦略的な判断が理解されていないと感じ、モチベーションの低下につながります。
このような評価の現実離れは、社員にとって「どうせ理解してもらえない」という諦めの気持ちを生み、積極的な取り組みを控える原因となってしまいます。
やってもやらなくても全員同じ評価になる
横並び主義や減点主義の評価制度では、優秀な社員もそうでない社員も似たような評価になりがちです。特に極端な評価を避ける文化がある企業では、努力している社員が報われにくい状況が生まれます。
このような環境では、「自分だけ頑張っても意味がない」「周りと同じペースで働けばいい」という心理になるのは自然なことです。成果を上げても評価に差がつかないのであれば、余計な努力をする理由がなくなってしまいます。
自己研鑽を積んでも評価に反映されない
社員が自主的にスキルアップのための勉強をしたり、資格を取得したりしても、それが評価や処遇に反映されないケースは少なくありません。特に、直接的な業務成果に結びつかない学習は、評価対象外とされることが多いのが現状です。
しかし、長期的な視点で考えれば、社員の自己研鑽は組織の競争力向上に不可欠な要素です。自己研鑽が評価されないとなると、「会社は個人の成長に関心がない」「学習する時間があるなら目先の業務に集中した方がいい」という考えになってしまいます。
頑張っても給与は上がらずに責任ばかりが増える
評価が上がっても給与や待遇の改善が伴わず、責任や業務量だけが増えるという状況は、社員にとって大きなストレス要因となります。特に、昇格に伴う報酬アップが少ない企業では、「管理職になりたくない」「責任を負いたくない」という消極的な姿勢が生まれがちです。
このような状況では、優秀な社員ほど「努力が報われない」と感じ、転職を考えるようになります。また、現職に留まる場合でも、必要最低限の業務に留めて、積極的な貢献を避けるようになる可能性があります。
人事評価によって頑張らない社員が生まれることで起こる問題
モチベーションの低下は個人の問題に留まらず、チームや組織全体に波及する性質があります。ここでは、人事評価によって頑張らない社員が1人でも生まれることで、組織全体に及ぼす悪影響を解説します。
業務意欲と生産性が低下する
評価に不満を抱く社員は努力を控えるようになり、新しいことに挑戦しなくなる、改善提案をしなくなる、ミスを減らす努力を怠るといった行動が見られるようになります。また、顧客対応や同僚との連携においても、必要最低限のことしかやらなくなる傾向があります。
このような状況が続くと、部署やチーム全体の業務効率が悪化し、最終的には企業の競争力低下につながります。特に、創意工夫や積極的な取り組みが求められる業務では、その影響は顕著に表れるでしょう。
チーム全体に悪影響を及ぼす
頑張らない社員の存在は、周囲のモチベーションをも下げます。真面目に働いている社員から見ると、同じ評価や待遇を受けながら努力を怠っている同僚がいることに疑問を感じるのは当然です。「自分だけが損をしている」「真面目にやっても意味がない」という気持ちが広がると、チーム全体のパフォーマンスが下がってしまいます。
また、チーム内での連携やコミュニケーションも悪化しがちです。モチベーションの差が大きい状況では、協力体制を築くことが困難になり、プロジェクトの進行や品質にも影響を与えます。
人材流出・離職率が上昇する
正当に評価されていないと感じる社員は転職を検討しやすくなります。実際に、株式会社ワークポートの「人事評価に関する満足度調査」では、人事評価が原因で転職した人が18.7%、転職を検討した人が48.6%いることがわかっています。

特に優秀な人材ほど、より評価される職場を求めて流出するリスクが高まります。優秀な社員の離職は、単なる人員減少以上の損失をもたらします。その人が持っていた知識やスキル、顧客との関係性なども同時に失われるため、組織の競争力に大きな打撃を与えます。
組織全体の成長が停滞する
新しい取り組みやイノベーションは、社員の積極的な参加と努力なしには実現できません。評価制度への不満から社員が消極的になると、改善提案や新規事業への取り組み、効率化の推進といった組織の成長につながる活動が減少してしまいます。
また、市場環境の変化に対応するための柔軟性も失われがちです。社員が現状維持を好むようになると、必要な変革や改善が後手に回り、競合他社に遅れを取るリスクが高まります。
人事評価において企業が取るべき対応策
続いて、社員が「人事評価が低いから頑張らない」とならないためのマネジメント手法を紹介します。既存の評価制度を大きく変更することなく実践できるものも多いため、実用的なアプローチとして参考にしてください。
評価の透明性を高める
評価基準を明確に伝えることで、社員の納得感を醸成できます。そのためには、まず評価項目や基準を具体的に文書化し、全社員に共有することから始めましょう。
「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」といった抽象的な表現ではなく、「チーム内での情報共有を月〇回以上行う」「プロジェクトで〇人以上のメンバーをまとめる」といった行動レベルで表現することが重要です。
また、評価結果を伝える際は、具体的な根拠と改善点を明示することが必要です。どの項目でどのような理由で評価が決まったのか、次期に向けて何を重点的に取り組むべきかを明確に伝えることで、社員は次のステップを描きやすくなります。
定期的にフィードバック面談を実施する
評価結果だけでなく、過程や改善点を伝える重要性を理解し、継続的なコミュニケーションを図ることが大切です。
年に1回の評価面談だけでは、社員は自分の成長状況や期待されている内容を把握しにくくなります。四半期ごとや月次での短時間面談を設定し、現在の業務状況や困っていること、今後の目標などについて対話する機会を作りましょう。
面談では、成果だけでなくプロセスにも注目することが重要です。「結果は出なかったが、アプローチはよかった」「困難な状況でよく頑張った」といった努力や工夫を認める言葉をかけることで、社員は継続的にチャレンジする意欲を保てます。また、改善が必要な点は、具体的な行動案を一緒に考えることで、社員の成長をサポートできます。
目標設定を社員とすり合わせる
目標設定の際は、会社の方針や部署の目標を伝えた上で、社員自身がどのように貢献できるかを話し合うことから始めましょう。社員の強みや興味、キャリア志向を理解した上で、個人の成長と組織の目標が両立できる目標を一緒に作り上げることが重要です。
また、目標は達成可能でありながらも適度にチャレンジングなレベルに設定することが求められます。あまりに簡単すぎると成長の機会を逸し、困難すぎると挫折感を与えてしまいます。社員の現在のスキルレベルや業務環境を考慮しながら、段階的に成長できるような目標設定を心がけましょう。
努力を認める仕組みを導入する
成果だけでなくプロセスも評価に含めることの重要性を理解し、社員の取り組み姿勢を適切に評価することが必要です。
結果が伴わない場合でも、新しいことに挑戦した姿勢、困難な状況で最後まで諦めなかった努力、チームのために協力した行動などは積極的に評価するとよいでしょう。業務のプロセスを評価に取り入れることで、社員は結果に対するプレッシャーを感じすぎることなく、積極的にチャレンジできるようになります。
具体的には、評価シートに「挑戦姿勢」「学習意欲」「チームワーク」といった項目を設けたり、日常的に良い取り組みを見つけた際にはその場で声をかけるといった方法があります。小さな努力でも認められることで、社員は継続的に改善や成長に取り組む意欲を維持できます。
人事評価制度そのものを改善するには?
ここでは、根本的に「人事評価が低いから頑張らない」という問題を防ぐための制度改善策を解説します。制度レベルでの改善は時間がかかりますが、長期的には組織の競争力向上に大きく寄与します。段階的に取り組むことで、無理のない改善を進められるでしょう。
評価基準を明確化・可視化する
曖昧な基準は社員の不満を招くため、成果目標・行動目標・スキル目標を具体的に数値化、または行動指標化することで、誰が見てもわかる評価基準を整備する必要があります。
評価基準の明確化では、職種や等級ごとに求められる能力や行動を詳細に定義することから始めます。営業職であれば「売上目標の達成率」「新規顧客開拓数」「顧客満足度スコア」といった定量的な指標と、「提案力」「コミュニケーション能力」「チームワーク」といった定性的な能力を具体的な行動レベルで表現します。
観察可能で測定可能な指標に落とし込むことで、評価者による主観のばらつきを抑え、社員にとっても目指すべき行動が明確になります。
定量評価と定性評価のバランスを図る
売上や成果などの定量評価だけでなく、協働姿勢・課題解決力・学習意欲などの定性面も組み合わせることで、社員の努力や成長を正しく反映できます。
定量評価は客観性が高くわかりやすい反面、短期的な成果に偏りがちで、長期的な取り組みや他者への貢献が見落とされる可能性があります。一方、定性評価は主観的になりやすいものの、人材育成や組織文化の醸成において重要な要素を捉えられます。
バランスのよい評価制度では、定量評価と定性評価の比重を職種や等級に応じて調整します。例えば、マネジメント層では定性評価の比重を高めて部下育成やチーム運営の能力を重視し、専門職では専門スキルの向上や知識共有の取り組みを評価項目に含めるといった工夫が考えられます。
多面評価(360度評価)を導入する
上司だけの主観に偏らないよう、同僚・部下・他部署からのフィードバックを含める「360度評価」を導入する企業が増えています。
360度評価では、評価対象者を多角的に観察できるため、上司が気づかない強みや改善点を発見できます。特に、チームワークやリーダーシップ、コミュニケーション能力といった対人関係に関わる能力については、複数の視点からの評価が有効です。
導入に際しては、評価者への十分な説明と訓練が必要です。評価の目的や基準を明確に伝え、建設的なフィードバックを行うためのスキルを身につけてもらうことで、制度の効果を最大化できます。また、匿名性を保つ仕組みや、評価結果の適切な活用方法も事前に検討しておくことが重要です。
人事評価と報酬・キャリアを連動させる
評価が給与や昇進に直結しないと、社員のモチベーションは高まりません。評価結果を昇給・賞与・キャリア開発にしっかり結びつける仕組みが必要です。
報酬との連動においては、評価結果に応じた明確な昇給・賞与の仕組みを整備することが重要です。ただし、単純に評価の高さだけで報酬を決めるのではなく、職種や等級、市場価値なども考慮したバランスの取れた制度設計が求められます。
キャリア開発との連動では、評価結果を基に個人の成長計画を策定し、必要な研修や経験機会を提供することが効果的です。高い評価を受けた社員には挑戦的な業務や昇進の機会を与え、改善が必要な社員には適切な支援や教育を提供することで、すべての社員が成長できる環境を構築できます。
人事システムを活用して人事評価制度を適切に運用しよう
人事評価制度を改善しても、実際の運用が属人的であれば「不公平」「手間がかかる」といった不満は残り続けます。そこで有効なのが、人事システムの導入・活用です。人事システムを使うことで、評価基準やプロセスが標準化され、社員にとっても企業にとっても納得感の高い評価が実現しやすくなります。
現代の人事評価では、公平性と効率性の両立が求められています。人事システムは、これらの課題を解決する強力なツールとなり、評価制度の運用品質を大幅に向上させられます。
評価プロセスを標準化できる
人事システムを活用することで、評価者による基準のばらつきを抑えられます。記録が残るため透明性も高まり、社員の納得感向上につながります。
システム上で評価基準や評価項目が統一されることで、部署や評価者が変わっても一貫した基準で評価を行えます。評価の入力画面では、各項目の詳細な説明や評価の観点が表示されるため、評価者は迷うことなく適切な評価を行えます。
また、評価の履歴がデータとして蓄積されるため、過去の評価との比較や傾向分析も可能になります。これにより、評価の一貫性を保ちながら、社員の成長過程を長期的に追跡できるようになります。評価者にとっても、過去の評価を参考にしながらより精度の高い評価を行えます。
フィードバックを効率的に共有できる
人事システムでは、評価コメントや改善点をデータとして残せるため、面談時に活用しやすくなります。社員自身も自分の成長課題を把握しやすくなります。
システム上でフィードバックコメントを管理することで、面談の準備時間を大幅に短縮できます。過去のコメントや目標設定の内容を簡単に確認できるため、継続性のある指導が可能になります。また、複数の評価者からのコメントを一元的に管理できるため、多面的なフィードバックを効率的に行えます。
社員側も、自分の評価履歴や成長の軌跡をいつでも確認できるため、自己理解を深め、主体的なキャリア開発に取り組めます。目標の進捗状況や過去の振り返りを可視化することで、自分の強みや改善点を客観的に把握し、より効果的な成長計画を立てられるでしょう。
データ分析による人材育成に活かせる
人事システムに蓄積された評価データを分析することにより、組織全体の能力分布や成長傾向を把握できます。特定のスキルが不足している部署や、高いパフォーマンスを発揮している部署の特徴を分析することで、人材配置や組織運営の改善に活用できます。
また、個人レベルでも、評価データから個々の社員の成長パターンや得意分野を分析し、最適な育成プランを策定することが可能です。研修の効果測定や、キャリア開発支援の精度向上にもつながるため、より戦略的な人材育成が実現できます。
運用コストを削減できる
従来の手作業による評価管理では、評価シートの配布・回収、データの集計・分析、報告書の作成などに多大な時間と労力が必要です。人事システムでは、これらの作業が自動化され、人事担当者は戦略的な業務により多くの時間を割けるようになります。
また、システム上での評価入力や承認フローにより、従来数週間かかっていた評価プロセスを数日に短縮することも可能です。これにより、社員はより早期に評価結果やフィードバックを受け取れ、次の目標設定や改善活動にスムーズに移行できます。
まとめ
人事評価が低いと社員が頑張らなくなるのは自然な心理反応であり、担当者は制度の透明性・公平性・フィードバックの充実を意識することが重要です。
人事評価制度の改善は一朝一夕には実現できませんが、段階的な取り組みを継続することで、必ず社員のモチベーション向上と組織の成長につながります。社員が「頑張る意味がある」と感じられる評価制度を構築し、全員が活躍できる職場環境を作り上げていきましょう。
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