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2025.11.26

【会計基準の種類】特徴・適用対象や選定ポイントを解説

会計基準は企業の財務報告を支える根幹であり、適切な基準を選び正しく運用することは、投資家や金融機関などの利害関係者から信頼を得るうえで欠かせません。

近年は国際化が進み、日本会計基準(J-GAAP)、米国会計基準(US-GAAP)、国際財務報告基準(IFRS)から、自社の事業戦略に最も適した基準を選ぶ重要性が高まっています。また、収益認識やリース会計といった基準改正への対応も企業に求められるポイントです。

この記事では、主要な会計基準の概要・特徴・適用対象を紹介します。また、会計基準を選択する際に押さえるべき視点も解説するため、正確で透明性の高い財務報告体制づくりにお役立てください。

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会計基準とは?

会計基準とは、企業が財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書など)を作成する際に従うべきルールのことです。投資家や金融機関、取引先などの利害関係者に、財務状況や経営成績を正確かつ比較可能な形で伝えるための重要な枠組みとなります。

形式的な作法ではなく、「企業活動をどう測定し、どう評価するか」を定めた仕組みでもあり、会計基準に沿って会計処理を行うことで、財務情報の信頼性と透明性が高まります。結果として、企業の健全な経営基盤づくりにも寄与します。

主な会計基準の種類

会計基準は国や地域によって制定主体や内容が異なりますが、国際的に広く使われている代表的な基準として、日本会計基準(J-GAAP)、米国会計基準(US-GAAP)、国際財務報告基準(IFRS)が挙げられます。

これらの基準は、財務情報の作成方法や開示範囲に違いがあり、海外子会社の管理、国際取引、資金調達などで比較・選択する際の重要な指標となります。

日本会計基準(J-GAAP)

日本会計基準(J-GAAP)は、企業会計原則、企業会計基準(ASBJ基準)、財務諸表等規則(金融庁)などで構成される、日本独自の会計基準体系です。

財務報告の基本的な考え方から具体的な処理方法までを定めており、日本企業の財務諸表作成における中心的な枠組みとなっています。また、会社法や金融商品取引法と密接に連動しており、日本の法制度の中で整備・発展してきた点も特徴です。

適用対象

日本会計基準は、日本国内で事業を行う企業全般が対象で、特に次のような企業で広く採用されています。

  • 金融商品取引法に基づく上場企業(国際財務報告基準を任意適用している企業を除く)
  • 会社法により財務諸表の作成が義務付けられる一般事業会社
  • 非上場企業(中小企業を含む)

さらに、中小企業向けには「中小企業の会計に関する基本要領」など、より簡便な指針も用意されています。これにより、企業規模に合わせた柔軟な会計処理が可能です。

特徴

日本会計基準の大きな特徴は、日本の法制度との結びつきが強い点です。会社法の計算書類や金融商品取引法の開示に対応する前提で設計されており、細かな規定が多く、ルールベースの傾向が見られます。

また、保守主義的な考え方が比較的強く、資産評価は慎重に行われ、引当金の計上も手厚く求められます。日本の商慣習にも配慮されており、実務に沿った処理が多い点も特徴です。さらに、近年は国際財務報告基準との収れんが進み、国際基準との整合性も徐々に高まっています。

導入傾向

日本会計基準は日本企業で最も広く使われており、特に次のような傾向があります。

  • 非上場企業や中小企業では、ほぼ標準的に採用されている
  • 上場企業でも、国際展開が限定的な企業は引き続き選択している
  • 国際財務報告基準の任意適用企業は増えているものの、全上場企業の中ではまだ少数派で、多数は日本会計基準を使用している

日本会計基準は法制度との整合性が高く、国内中心の企業に適しているため、今後も多くの企業で用いられ続けると見込まれます。

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米国会計基準(US-GAAP)

米国会計基準(US-GAAP:Generally Accepted Accounting Principles in the United States)は、米国財務会計基準審議会(FASB)が策定する会計基準体系で、米国資本市場での財務報告に広く使用されています。

世界でも最も詳細かつ厳密な基準の1つとされ、企業結合や収益認識、金融商品などに関する規定が高度に体系化されている点が特徴です。さらに、米国証券取引委員会(SEC)が求める厳格な開示要件とも密接に関連しています。

適用対象

米国会計基準は、主に次のような企業で採用されています。

  • 米国証券取引所に上場している企業(SEC登録企業)
  • 米国での資金調達を行い、SECへの報告書提出が必要となる企業
  • 米国市場を主要拠点とする多国籍企業の本社や連結グループ

また、米国子会社を持つグローバル企業が、連結決算の整合性を保つために米国会計基準で管理するケースもあります。これにより、グループ全体の会計方針を統一し、財務報告の効率化につなげられます。

特徴

米国会計基準は、詳細な規定を中心としたルールベースの会計基準で、特にSEC上場企業には厳格な開示要求が課されています。財務報告の透明性や比較可能性を重視しており、M&Aや収益認識、金融商品、株式報酬など、多くの領域で精緻なガイダンスが整備されています。

また、訴訟リスクが高い米国のビジネス環境に合わせた基準設計となっており、会計判断よりも明文化された規則の適用を優先する傾向があります。

導入傾向

米国会計基準は、主に次のような企業で採用が進む傾向があります。

  • 米国市場を主要戦略とする多国籍企業
  • 米国で株式・債券を発行し、SECへの対応が必要な企業
  • グローバル展開を進め、米国投資家からの信頼性向上を重視する企業
  • 高度な開示要求や精緻な会計処理に対応できる大企業

一方、日本企業が米国会計基準を採用する例は多くありません。米国子会社の管理や米国市場での資金調達といった特定の事情がある場合に限られることが一般的です。

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国際財務報告基準(IFRS)

国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)は、国際会計基準審議会(IASB)が策定する国際的な会計基準で、140か国以上で採用されています。企業の財務情報を国境を越えて比較しやすくするための共通ルールとして、世界的に広く利用されています。

国際財務報告基準は、細かな規定よりも原則を重視する「プリンシプルベース(原則主義)」で構築されており、取引の実質に即した会計処理を求める点が大きな特徴です。

適用対象

国際財務報告基準の適用範囲は国によって異なりますが、一般的に次のような企業で採用が進んでいます。

  • EU域内の上場企業
  • アジア・中東・南米などで活動する多国籍企業
  • 国際展開を進める企業グループ
  • 日本の上場企業のうち、国際財務報告基準を任意適用している企業

特にヨーロッパでは国際財務報告基準が強制適用されており、資本市場全体の透明性や比較可能性の向上に貢献しています。その結果、国境を越えた投資判断や企業評価がより行いやすくなっています。

特徴

国際財務報告基準は、プリンシプルベース(原則主義)を採用しており、企業の判断と開示を重視する点が特徴です。公正価値(フェアバリュー)評価の採用範囲が広く、国際的な比較可能性を高めています。また、財務諸表の体系や資産・負債・収益・費用といった概念は、概念フレームワークで明確に整理されています。

収益認識やリース、金融商品などの基準は世界共通で利用でき、特定の国の法制度に依存しにくい構造となっています。取引の実態を重視するため、企業には適切な会計判断と、その根拠を示す説明責任が求められる点も国際財務報告基準の重要な特徴です。

導入傾向

国際財務報告基準の導入は世界的に広がっており、次のような傾向が見られます。

  • ヨーロッパでは上場企業での強制適用がすでに定着している
  • アジア(韓国・香港・シンガポールなど)でも幅広く採用されている
  • 日本では任意適用企業が増加しており、特に製造業やグローバル企業での導入が進んでいる
  • 海外投資家への開示強化を図る企業、国際的な資金調達やM&Aが多い企業で採用が増える傾向にある

総じて、国際財務報告基準は国際競争力を高めたい企業や、海外へ事業展開する企業にとって、財務情報の「共通言語」として重要性が高まっています。

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【比較】会計基準はどう選べばよいのか?

日本会計基準米国会計基準国際財務報告基準
策定主体企業会計基準委員会(ASBJ)、金融庁財務会計基準審議会(FASB)国際会計基準審議会(IASB)
基準の性質ルールベース寄り(詳細規定が多い)ルールベース(詳細な規定が多い)プリンシプルベース(原則主義)
主な採用地域日本(非上場企業含む幅広い企業)米国・米国市場に関連する企業欧州・アジアなど140か国以上
公正価値(フェアバリュー)の扱い一部で慎重に採用個別基準で明確に規定(広く採用)広範囲で積極的に採用
収益認識の考え方日本基準独自の規定が部分的に残る詳細な指針(US基準の5ステップ)「5ステップモデル」で国際統一
開示要求国内法制度と連動、比較的抑制的SEC規則も含め開示要求が非常に詳細開示要求が広く、判断説明が多い
財務諸表の体系会社法・金融商品取引法と連動US基準独自の体系(ASCによる統一)IFRS独自の体系(概念フレームワーク)
適用対象国内企業全般(上場・非上場)米国上場企業は強制欧州上場企業は強制、日本は任意
導入コスト最も低い(国内実務と整合)最も高い(情報量・開示量が多い)判断が多く、導入コストは中~高
判断の難易度規定を確認すれば処理できる傾向ルールは明確だが量が多く複雑経営判断・実質判断が求められる
メリット国内実務との整合性・運用しやすい透明性が高い・米国資本市場で有利国際比較可能性が高い・海外投資家に有利
デメリット国際比較で見劣りする場合がある基準が膨大で導入コストが高い判断の幅が広く運用負荷が高い
導入企業の傾向国内中心の企業・中小企業全般米国市場での上場・資金調達を行う企業国際展開企業・グローバル志向の上場企業

会計基準の選択は、財務報告の正確性にとどまらず、資金調達や投資家からの評価、グループ経営、海外展開など多方面に影響します。ここでは、基準を選ぶ際に押さえておくべき視点を整理し、自社に最適な会計基準を判断するためのポイントを紹介します。

事業展開

企業の事業展開は、会計基準を選ぶうえで最も重要な判断要素の1つです。国内中心の事業であれば、日本の法制度と整合性が高い日本会計基準が適しており、監査や税務申告との連携もスムーズに進みます。

一方、海外子会社が多い、海外投資家が多いといったグローバル展開を重視する企業には、国際比較可能性が高い国際財務報告基準が有利です。基準を統一することで、連結決算の効率化や財務情報の透明性向上が期待できます。

また、米国市場での上場や資金調達を行う場合は、米国会計基準に対応する必要があるケースもあります。

資金調達・投資家層のニーズ

企業の資金調達方針や投資家層の特性も、会計基準を選ぶ際の重要な判断材料です。国際投資家向けの開示を重視する場合は、比較可能性の高い財務情報を提供できる国際財務報告基準が有利になります。

一方、国内投資家が中心であり、アナリストも日本会計基準に精通している場合は、日本会計基準で十分に対応できます。また、米国でIPOや証券発行を予定している企業は米国会計基準が必須となり、SECへの報告義務も発生します。

グループ会社の会計基準との統一性

企業グループ内で異なる会計基準を使用していると、連結決算時の調整が増え、作業負荷が大きくなります。そのため、可能な限り基準を統一することが重要です。基準間の差異を埋める作業は煩雑で時間もかかるため、統一によって大幅な効率化が期待できます。

海外子会社が国際財務報告基準を採用している場合、本社も国際財務報告基準へ移行することで決算プロセスをスリム化でき、グループ全体の財務情報を整理しやすくなります。会計方針をグループで統一することで、財務報告の品質向上と業務効率化を同時に実現できます。

業務負荷・導入コスト

会計基準の導入・運用には、一定のコストと労力が伴います。国際財務報告基準や米国会計基準は開示範囲が広く、システム改修や社員教育などの追加コストが発生しやすいほか、専門知識を持つ人材の確保や監査法人との調整も欠かせません。

一方、日本会計基準は国内企業に最も馴染みがあり、運用コストを比較的低く抑えられます。基準移行にかかる工数や社内リソースの確保状況は、基準選択を左右する重要な判断材料となります。

M&A・グローバル事業との整合性

企業のM&A戦略やグローバル展開の方向性も、会計基準を選ぶ際に押さえておくべき重要な要素です。海外企業とのM&Aが多い場合は、国際的に統一された国際財務報告基準が有利で、買収先の財務情報を比較しやすく、統合後の会計処理もスムーズに進められます。

一方、米国企業とのM&Aや業務提携が中心となる企業は米国会計基準が適合しやすく、自社の事業ポートフォリオや将来の国際展開方針によっても基準選択が左右されます。

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会計基準に対応した会計ソフトを導入して正しく運用しよう

それぞれの会計基準を正しく運用するには、日々の取引記録から決算書作成まで、一貫して基準に沿った処理が行える会計ソフトの活用が不可欠です。特に国際財務報告基準や米国会計基準は開示項目や判断領域が広いため、Excelのみで対応するには限界があります。

各会計基準に対応した会計ソフトを導入すると、財務報告の正確性・効率性が大きく向上します。日常の仕訳入力から決算・開示まで一貫して基準に沿った処理が行えるため、手作業による転記や計算ミスを防ぎ、人的エラーを大幅に削減できます。

また、収益認識やリース会計などの基準改正にも自動で対応できるため、基準変更時の運用負荷を抑えられます。さらに、監査対応に必要な仕訳根拠・証憑・ログ管理が標準搭載されており、内部統制の強化にも有効です。

グループ会社を含む連結決算も効率化され、会計基準の統一による業務標準化が進む点も大きなメリットです。

日本会計基準に対応した会計ソフトの特徴

日本会計基準に対応した会計ソフトは、国内企業向けに最適化された機能が充実しています。会社法や金融商品取引法への対応が欠かせず、法定帳簿の作成や開示書類の出力機能が重要な選定ポイントとなります。

また、「固定資産管理」「消費税(インボイス制度対応)」「決算書作成」などの機能の充実度も判断材料です。日本特有の商慣習や税制に対応した機能を備えているため、運用しやすく、法制度への適合性を重視する企業に向いています。

米国会計基準に対応した会計ソフトの特徴

米国会計基準に対応した会計ソフトは、詳細で厳格な基準に沿った処理ができることが必須です。収益認識(ASC606)、リース(ASC842)、金融商品など、米国会計基準特有の会計処理に対応した機能が求められ、複雑な計算や仕訳を自動化して正確な財務処理を実現します。

また、SEC報告が必要な企業は、10-K・10-Qなどの開示資料を作成するツールと連携できるシステムが有効です。米国事業を持つ企業や米国市場で資金調達を行う企業では、SAPやOracleなどのグローバルERPを採用する傾向が強く、多通貨対応や複数拠点管理といった機能が重視されます。

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国際財務報告基準に対応した会計ソフトの特徴

国際財務報告基準対応の会計ソフトでは、公正価値評価、コンポーネント償却、リースのオンバランス化など、国際財務報告基準特有の会計処理に対応していることが不可欠です。複雑な評価計算や判断が必要な処理を自動化し、基準に準拠した正確な財務諸表を作成できます。

また、開示資料の作成サポート、キャッシュフロー計算書の直接法・間接法の切替、財務指標の算出機能なども重要なポイントです。海外子会社とのデータ連携に強いERPが主流で、国際子会社の仕訳体系や会計基準を統一できるかどうかが、ソフト選定の大きな判断基準となります。

国際財務報告基準対応の会計ソフトの詳細はこちら

まとめ

会計基準は、企業の財務情報を正確・適切・比較可能な形で提供するための重要な枠組みです。どの基準を選択すべきかは、事業展開の状況、資金調達方針、グループ経営の体制、コストなどを総合的に判断して決める必要があります。

近年は収益認識やリース会計など基準改正が複雑化しており、正しい適用には基準への理解だけでなく、対応可能な会計ソフトの導入も不可欠です。基準に準拠した会計ソフトを活用することで、仕訳から決算書作成、開示、監査対応まで一貫して正確に処理でき、ミス防止や内部統制の強化にもつながります。

自社に最適な基準と運用体制を選び、長期的な成長につながる財務報告基盤を整えることが重要です。

自社に最適な会計ソフトを見つけるには?

会計ソフトは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。

自社に最適な会計ソフトを見つける際には「FitGap」をご利用ください。FitGapは、自社にぴったりの製品を選ぶための無料診断サービスです。簡単な質問に答えていくだけで、自社に必要なシステム要件が整理でき、各製品の料金や強み、注意点、市場シェアなどを知ることができます。

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