Excelで販売管理を行う方法｜テンプレートや注意点・リスクも紹介

ExcelやGoogleスプレッドシートを活用すれば、手軽に販売管理を行えます。特に、顧客情報や在庫データをExcelで管理している企業では、販売管理も同じツールで一元化することで、業務の流れをスムーズにできます。ただし、業務が拡大するにつれて課題も生まれるため注意が必要です。

この記事では、Excelを使った販売管理の具体的な方法を紹介します。また、メリット・デメリットを整理し、より効率的な管理方法も詳しく解説します。

Excelで販売管理を行う方法

Excelで販売管理を始める際は、適切な項目設定と管理しやすい構造を作ることで、後々の運用がスムーズになります。まずは、Excelを使用した販売管理表の具体的な作り方を紹介します。

管理する項目を整理する

Excelで効率的に販売管理を行うためには、管理すべき項目を明確にすることが重要です。基本的には以下の項目を設定します。

• 売上日（取引日）
• 商品名
• 数量
• 単価
• 金額（数量×単価）
• 顧客名
• 担当者
• ステータス（請求済・未請求など）

上記の項目を整理することで、売上の発生から代金回収まで、取引の進捗状況を正確に把握できます。また、自社の業務内容に応じて、納期や支払い条件、発送方法などの項目を追加することも可能です。

販売管理表を作成する

整理した項目をもとに、横軸に項目名を配置した表を作成します。1行目に項目名（見出し）を入力し、2行目以降に実際の取引データを記録していきます。

表の見た目を整えるため、罫線や背景色を設定することで、データの見やすさが向上します。定期的に新しい取引データを追加し、完了した取引についてはステータスを更新することで、現在の販売状況を把握できます。

関数や自動計算を設定する

手動での計算や集計作業を減らし、入力ミスを防ぐため、関数や自動計算機能を積極的に活用しましょう。

• SUM関数：売上合計を算出できる
• VLOOKUP関数：顧客マスタから会社名や連絡先を自動入力できる
• IF関数：支払い期限を過ぎた取引に「要催促」などの表示を自動で行える
• ピボットテーブル：顧客別・商品別・期間別の売上分析を行える

関数や自動計算を組み合わせることで、日々の事務作業の負担を軽減し、より戦略的な業務に時間を使えるようになります。

Excelでの販売管理に便利なテンプレート

Excelでの販売管理に便利なテンプレートも多く展開されています。テンプレートをダウンロードし、自社の業務に合わせて項目を調整することで、短時間で実用的な販売管理表を作成できます。

テンプレート①

Excelを提供しているMicrosoftは、日々のセールス活動の予算や成果を記入でき、計画的に管理できるテンプレートを展開しています。月予算に対しての売上の達成度が一目でわかり、日々の売上目標を立てやすくなります。

テンプレートページ

テンプレート②

在庫管理表・棚卸表のテンプレートです。企業内に保管する商品や原材料、仕掛品、品目や数量、入出庫日などを一覧化・管理できます。

テンプレートページ

テンプレート③

シンプルで使いやすい在庫管理表のテンプレートです。必要な項目が揃っているので、在庫管理表を1から作成する手間を省けます。

テンプレートページ

Excelで販売管理を行うメリット

Excelを使った販売管理には、コスト面や導入の手軽さにおいて大きなメリットがあります。Excelは、すでに多くの企業で導入されているため、新たな投資を必要とせず、すぐに業務を開始できます。ここでは、Excelで販売管理を行うメリットを紹介します。

初期コスト不要ですぐに始められる

多くの企業では、すでにExcelがインストールされており、追加のライセンス費用や導入費用をかけることなく販売管理を始められます。操作方法を覚える時間も不要でしょう。Excelで業務の要件を整理し、将来のシステム選定に活かすこともできます。

自社に合わせた設計が可能

Excelの大きな特徴は、自社の業務フローに合わせて自由にカスタマイズできることです。項目の追加・削除や計算式の変更、レイアウトの調整など、業務の変化に応じて柔軟に対応できます。特殊な商品の取り扱いや独自の取引条件にも、表の設計を工夫することで対応可能です。

複数の部署で使用する場合も、それぞれの業務に適した表を作成できます。社内で自由に改善・改良を行えるため、試行錯誤を重ねながら、自社に最適な販売管理の形を見つけられるでしょう。

データの視覚化や分析に対応できる

Excelには、豊富なグラフ作成機能やピボットテーブル機能が備わっており、蓄積したデータを分析・可視化できます。月別売上の推移や、顧客別の売上構成比、商品別の利益率などを、わかりやすいグラフで表示でき、条件付き書式を使えば、売上目標の達成状況や支払い期限の管理も視覚的に把握可能です。

また、定期的なレポート作成にも対応でき、上司や経営陣への報告資料も効率的に作成できます。

Excelで販売管理を行う注意点・リスク

Excelを使った販売管理には注意すべき点もあります。業務の拡大とともに、課題が顕在化することも多いため、事前に理解しておくことが重要です。

人的ミスが発生しやすい

Excel操作の多くは手入力に依存するため、入力ミスや計算ミスが発生しやすいです。数値の入力間違いや、小数点の位置ミス、計算式の誤設定などが原因で、売上金額や在庫数に誤りが生じる可能性があります。特に急いでデータ入力を行う際や、複数の担当者が作業する場合には、ミスのリスクが高まります。

入力規則の設定やデータ検証機能を活用することで、ある程度のミスは防げますが、完全に排除することは難しいでしょう。定期的なデータ照合や複数人によるチェック体制を構築することで、ミスによる影響を最小限に抑える工夫が必要です。

複数人での同時作業に向かない

Excelファイルは、基本的に1人ずつしか編集できないため、複数の担当者が同時に作業することができません。営業担当者が受注データを入力している間、経理担当者は請求処理を行えないといった状況が発生します。

ファイルの共有機能もあるものの、動作が不安定になったり、データの競合が発生したりする場合があります。また、各担当者が個別にファイルを保存すると、どのファイルが最新版かわからなくなるバージョン管理の問題も生じます。メールでファイルをやり取りする際には、更新内容の反映漏れや重複入力のリスクも高まります。

データ量が増えると処理が重くなる

取引件数や顧客数が増加するにつれて、Excelファイルのデータ量も増大し、動作が重くなる傾向があります。数万行を超えるデータを扱う場合は、ファイルを開くのに時間がかかったり、計算処理が遅くなったりします。複雑な関数や大量のピボットテーブルを使用している場合、さらに処理速度が低下します。

ファイルサイズが大きくなると、メールでの送信が困難になったり、ネットワーク共有時の転送時間が長くなったりします。また、大量のデータを扱う際には、PCの性能不足により作業効率が大幅に低下することもあります。そのため、定期的なデータの整理やファイル分割が必要になり、管理の手間が増える要因となります。

多くの企業で販売管理システムの活用が進んでいる

近年、Excelでの販売管理における課題を解決するため、販売管理システムを導入する企業が増えています。販売管理システムを導入することで、業務の効率化やデータの正確性向上、情報共有の促進などが実現します。

入力ミスや属人化を防げる

販売管理システムには、入力内容を自動的に検証する機能が搭載されており、数値の範囲チェックや必須項目の入力確認を自動で行います。顧客情報や商品マスタとの整合性チェックにより、存在しない顧客や商品コードの入力を防止できます。

また、一度設定した処理手順はシステムが自動実行するため、担当者の知識や経験に依存することなく、一定の品質で業務を遂行できます。新しい担当者でも、システムの画面に従って操作すれば、ベテラン社員と同じレベルで業務を行えます。

業務の標準化が進むことで、担当者の異動や退職による業務の停滞を防げられます。

複数人でリアルタイムに情報を共有できる

クラウド型の販売管理システムでは、営業部門や経理部門、倉庫管理部門など、複数の部署が同じデータベースにアクセスできます。営業担当者が受注入力を行うと、その情報が即座に在庫管理部門に反映され、出荷準備を開始できます。経理部門も同じタイミングで請求処理の準備を進められるため、部門間の連携がスムーズになります。

外出先からでもスマートフォンやタブレットでアクセスでき、リアルタイムでの情報確認や入力が可能です。データの更新履歴も自動的に記録されるため、誰がいつどのような変更を行ったかを追跡できます。

データ集計・レポート作成の時間を短縮できる

販売管理システムに蓄積されたデータは、さまざまな角度から集計・分析できます。月次売上レポートや顧客別売上分析、商品別利益率分析など、従来は手作業で時間をかけていた集計作業が瞬時に完了します。グラフやチャートも自動生成されるため、視覚的にわかりやすい報告資料を短時間で作成できます。

また、定期的なレポートは自動配信機能により、決まった時間に関係者へメール送信することも可能です。これにより、経営陣への報告業務や取引先への売上報告なども効率化され、より戦略的な業務に時間を使えるようになります。

在庫・顧客・売上情報を一元管理できる

販売管理システムでは、在庫管理や顧客管理、売上管理の各機能が統合されており、すべての情報が連携して動作します。受注登録と同時に在庫数が自動的に減算され、在庫不足の警告も即座に表示されます。顧客の注文履歴や支払い状況、クレーム対応履歴なども1つの画面で確認でき、営業活動の質が向上します。

複数の表を手動で更新する手間がなくなり、データの整合性も保たれます。異なるシステム間でのデータ連携により、会計システムへの売上データ転送も自動化できます。

業務の拡大や変化にも柔軟に対応できる

販売管理システムでは、事業の成長に応じて、取引先数の増加や、商品アイテムの拡充、複数拠点での運用、海外取引での多通貨対応など、さまざまな要件に対応できます。

また、法改正に伴う帳票様式の変更や、新しい業務フローの追加なども、ベンダーのサポートにより迅速に対応できます。そのため、将来的な事業拡大を見据え、販売管理システムの導入を検討する企業も増えています。

Excelと販売管理システムの比較

Excelと販売管理システムにはそれぞれ特徴があり、企業の規模や業務内容によって適した選択肢が異なります。

初期段階や小規模な取引にはExcelが適していますが、業務量の増加や複数部門での利用が必要になると、販売管理システムの導入が効果的です。

販売管理システムの導入には、初期費用が発生しますが、長期的な運用を考慮すると、業務効率化による人件費削減やミス防止による損失回避などで、投資効果を得られる場合が多いです。

そのため、現在の業務量と将来の成長計画を考慮し、適切なタイミングでの移行を検討することが重要です。

人気・おすすめの販売管理システム

販売管理システムの導入を検討する際は、自社の業務規模や特性に合ったシステムを選択することが重要です。ここでは、多くの企業に導入されている代表的な販売管理システムを紹介します。

弥生販売

弥生販売は、日本の中小企業向けの販売管理システムとして長年の実績があり、多くの企業で導入されています。弥生会計との連携により、販売データを会計システムに自動転送でき、経理業務の効率化を実現できます。

見積書作成から受注管理、出荷・請求処理、在庫管理まで、販売業務に必要な機能を網羅しています。売上分析や顧客分析機能も充実しており、経営判断に必要な情報を簡単に取得できます。

デザインは日本の商習慣に合わせて設計されており、会計や販売管理の専門知識がなくても直感的に操作できます。導入時のサポート体制も充実しており、初めてシステムを導入する企業でも安心して利用できます。

楽楽販売

楽楽販売は、見積から受注、請求まで一連の販売業務を一元管理できる販売管理システムです。複雑な計算が必要な見積書作成や、取引条件に応じた金額計算を自動化でき、ミスの削減と業務効率化を実現できます。画面レイアウトや入力項目のカスタマイズが容易で、自社の業務フローに合わせた設定が可能です。

帳票のデザインも自由に変更でき、会社のイメージに合った書類を作成できます。導入実績は累計5,000社を超えており、幅広い業種・規模の企業で活用されています。充実したサポート体制と豊富な導入事例により、安心して利用できるでしょう。

SAP Business One

SAP Business Oneは、世界的に展開する中小企業向けERP（統合基幹業務）システムです。販売管理だけでなく、会計や購買、在庫管理、生産管理など、企業の基幹業務を統合管理できます。

多言語・多通貨対応が標準機能として組み込まれており、海外展開を行う企業や外国企業との取引が多い企業に適しています。各国の会計基準や税制、商習慣の違いにも対応しており、グローバルな事業展開において一貫した業務管理を実現できます。

また、拡張性が高く、事業の成長に応じて機能追加や他システムとの連携も可能です。世界中で培われたノウハウを活用し、効率的な業務管理体制を構築できます。

まとめ

Excelを使った販売管理は、初期コストを抑えて手軽に始められる一方で、業務量の増加とともに入力ミスや作業効率の低下といった課題が生じます。取引件数が月100件を超えたり、リアルタイムでの情報共有が重要になったりした場合は、販売管理システムへの移行を検討したほうがよいでしょう。

多くの販売管理システムは、無料トライアルや短期間の試用プランがあるため、実際の業務で使用感を確認してから本格導入を決められます。現在の業務規模と将来の成長計画を考慮し、適切なタイミングでシステム化を進めることで、より効率的で正確な販売管理を実現できます。

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販売管理システムは、製品によって備わっている機能やサービスの幅が異なります。そのため、自社の導入目的や効果を考慮して選ぶことが大切です。

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