会計ソフトを導入するメリットには、作業時間の短縮や入力ミスの削減などがあります。この段落では、会計ソフトを導入することで企業が得られる具体的なメリットを紹介します。
記帳作業の時間を短縮できる
会計ソフトを導入すると銀行口座やクレジットカードの取引データを自動で取り込めるため、手入力の時間が大幅に削減されます。以前は領収書を見ながら1件ずつ入力していた作業が、データ連携によって自動化されます。よく使う取引パターンを登録しておけば、次回からはワンクリックで仕訳が完了します。月末の締め作業も集計が自動で行われるため、電卓で計算したり表計算ソフトで集計したりする手間がなくなります。担当者は確認作業や分析業務に時間を使えるようになり、より付加価値の高い業務に集中できます。記帳作業にかかる時間が削減されることで、残業時間の削減や他の業務への人員配置が可能になります。
入力ミスや計算ミスを削減できる
手作業での記帳では金額の桁を間違えたり、勘定科目を誤って選択したりするミスが発生しやすくなります。会計ソフトを導入すると入力時に借方と貸方の金額が一致しているかを自動でチェックする機能があり、バランスが合わない場合は警告が表示されます。消費税の計算も税率に応じて自動で行われ、計算ミスが防止されます。過去の取引パターンから勘定科目を提案する機能もあり、科目の選択ミスも減少します。一度入力したデータは各種帳簿に自動で転記されるため、転記ミスもなくなります。正確な会計処理を実現することで、決算修正や税務調査での指摘を減らし、信頼性の高い財務報告が可能になります。
リアルタイムで経営状況を把握できる
手作業で帳簿を管理している場合、最新の財務状況を確認するには集計作業が必要で、数週間遅れの情報しか得られません。会計ソフトを導入すると取引を入力した時点で各種レポートに反映され、いつでも最新の売上や経費の状況を確認できます。月の途中でも現時点での損益を把握でき、目標に対する進捗状況をリアルタイムで確認できます。資金繰りの状況も常に最新の情報で把握でき、支払いに必要な資金が不足しないよう早めに対策を講じられます。グラフやダッシュボードで視覚的に表示されるため、数字が苦手な経営者でも直感的に経営状況を理解できます。タイムリーな情報に基づいた意思決定が可能になります。
税制改正に自動で対応できる
税制は毎年のように改正が行われ、消費税率の変更や軽減税率の導入など会計処理に影響する変更も多くあります。手作業で管理している場合、改正内容を理解し処理方法を変更するには時間と専門知識が必要です。会計ソフトを導入するとソフトのバージョンアップによって最新の税制に自動で対応し、正確な税額計算が行われます。複数税率に対応した消費税の計算も自動で行われ、申告書の作成も改正後の様式で出力されます。担当者が税制改正の詳細を学習する時間を削減でき、本来の業務に集中できます。税制改正への対応漏れによるリスクを回避し、コンプライアンスを確保できます。
複数人での同時作業が可能になる
紙の帳簿や単一のパソコンで管理している場合、複数の担当者が同時に作業することはできません。1人が記帳している間は他の担当者は待機する必要があり、業務効率が低下します。会計ソフトを導入すると複数の担当者が同時にアクセスして作業でき、入力業務を分担できます。クラウド型であれば場所を選ばずにアクセスできるため、在宅勤務や外出先からも作業が可能です。権限設定機能により担当者ごとにアクセスできる機能や閲覧できるデータを制限でき、セキュリティも確保できます。繁忙期には複数人で作業を分担することで処理速度が向上し、期限内に業務を完了できます。
税理士との連携がスムーズになる
税務申告や決算業務を税理士に依頼している企業は、定期的に帳簿のデータを提出する必要があります。紙の帳簿では税理士事務所に持参したり郵送したりする手間が発生し、内容確認までに時間がかかります。会計ソフトを導入すると税理士とデータを共有する機能があり、遠隔地からでもリアルタイムで帳簿の内容を確認してもらえます。疑問点があればメッセージ機能やメモ機能を使ってやり取りでき、訪問を待たずに解決できます。税理士からの指摘事項もソフト上で確認でき、修正履歴も残るため対応漏れを防げます。データのやり取りが効率化されることで税理士費用の削減にもつながります。
書類の保管スペースを削減できる
会計業務では大量の領収書や請求書、契約書などを保管する必要があり、年数が経過するごとに保管場所が圧迫されます。会計ソフトを導入すると領収書をスキャンして電子データとして保存でき、電子帳簿保存法に対応した要件を満たせば原本の保管が不要になります。請求書もデータで送受信できる機能があり、紙の書類を減らせます。過去のデータもソフト内で検索できるため、必要な書類を探す時間も短縮されます。保管スペースが削減されることで、オフィスの賃料削減や有効活用が可能になります。災害時にも電子データであればバックアップから復元でき、事業継続性の面でも優れています。
内部統制を強化できる
会計ソフトには入力や承認の履歴を記録する機能があり、誰がいつどのような操作を行ったかを追跡できます。データの改ざんや不正な操作があった場合でも履歴から発見でき、内部統制の強化につながります。承認ワークフロー機能を設定すれば、一定金額以上の取引は上長の承認を経ないと確定できないように制御できます。権限設定により担当者ごとにアクセスできる範囲を限定し、不正アクセスのリスクを低減できます。定期的に自動バックアップが取られるため、誤操作でデータを削除してしまった場合でも復元が可能です。上場企業や上場準備企業に求められる内部統制の要件を満たすためにも、会計ソフトの導入は有効な手段となります。
会計ソフトを導入する際には、既存データの移行作業が必要になることや操作方法の習得に時間がかかることなどの注意点があります。この段落では、会計ソフトを導入する際に企業が注意すべき具体的なポイントを紹介します。
既存データの移行に時間がかかる
会計ソフトを新しく導入する際には、これまで使用していた帳簿やデータを新しいソフトに移行する作業が発生します。紙の帳簿から移行する場合は過去のデータを手入力する必要があり、数年分のデータがあると膨大な時間がかかります。別の会計ソフトから乗り換える場合も、データ形式の違いにより自動移行ができないことがあります。移行作業中は通常業務と並行して進める必要があるため、担当者の負担が増加します。データの移行ミスがあると決算書の数字に影響するため、移行後の確認作業も慎重に行う必要があります。移行に必要な期間を事前に見積もり、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
操作方法の習得に時間が必要になる
会計ソフトは多機能であるため、操作方法を習得するまでに一定の時間が必要です。これまで手作業で記帳していた担当者にとっては、パソコンの操作自体に慣れる必要もあります。仕訳の入力方法や帳簿の確認方法、決算処理の手順など、覚えることが多くあります。導入直後は操作に迷うことも多く、作業効率が一時的に低下する可能性があります。マニュアルを読んだりサポートに問い合わせたりする時間も発生します。研修や勉強会を開催して担当者全員が操作方法を習得するまでには数週間から数か月かかることもあります。操作に慣れるまでの期間は業務に余裕を持たせる配慮が必要です。
自社の業務に合わない機能がある
会計ソフトは幅広い企業で利用できるように設計されていますが、自社特有の業務フローに完全に対応していない場合があります。特殊な取引形態や独自の管理項目がある場合、標準機能では処理できないことがあります。業種特有の会計処理が必要な場合、汎用的な会計ソフトでは対応が難しいケースもあります。カスタマイズ機能があっても、設定に専門知識が必要だったり追加費用が発生したりします。無理にソフトに業務を合わせると、かえって業務効率が低下する可能性もあります。導入前に自社の業務要件を整理し、対応可能かを十分に確認することが重要です。試用期間を活用して実際の業務で使えるかを検証することも有効です。
コストが継続的に発生する
会計ソフトの導入にはソフトウェアの購入費用やクラウド型の月額利用料など、初期費用が発生します。クラウド型では月額料金が継続的にかかり、利用するユーザー数や機能によって料金が変動します。バージョンアップや税制改正対応のための更新費用が別途必要になる製品もあります。サポート契約を結ぶ場合は年間のサポート費用も発生します。担当者の研修費用やマニュアル作成の費用など、間接的なコストも考慮する必要があります。オンプレミス型ではサーバーやパソコンの維持管理費用がかかります。導入前に初期費用だけでなく、運用にかかる継続的なコストを含めた総費用を把握することが重要です。
インターネット環境が必須になる
クラウド型の会計ソフトを導入する場合、インターネット接続が必須となります。通信環境が不安定な場所では動作が遅くなったり、接続が切れたりすることがあります。インターネット回線のトラブルが発生すると会計業務が完全に停止してしまうリスクがあります。テレワークで自宅から利用する場合、自宅のインターネット環境によっては快適に使えないこともあります。セキュリティの観点から公共のWiFiでは利用を避ける必要があり、作業場所が制限されます。大容量のデータをやり取りする場合は通信速度も重要になります。導入前に自社のインターネット環境が要件を満たしているかを確認し、必要に応じて回線の増強を検討する必要があります。
セキュリティリスクへの対策が必要になる
会計ソフトには企業の重要な財務情報が保存されるため、不正アクセスや情報漏洩のリスクへの対策が必要です。クラウド型では提供会社のセキュリティ対策に依存するため、会社選びが重要になります。オンプレミス型でも社内ネットワークへの不正侵入やウイルス感染のリスクがあります。パスワード管理が甘いと担当者以外がアクセスできてしまう危険性があります。パソコンの紛失や盗難により情報が流出する可能性もあります。定期的なバックアップを取っていないとデータ消失のリスクもあります。セキュリティポリシーを策定し、アクセス権限の管理や定期的なパスワード変更、バックアップの実施など、組織的な対策を講じる必要があります。
他のシステムとの連携に制約がある
会計ソフトを給与計算ソフトや販売管理ソフトなど他のシステムと連携させたい場合、対応していない組み合わせがあります。同じメーカーの製品同士でないと連携できないケースや、連携に追加費用がかかるケースもあります。連携できても一部のデータしか受け渡しできず、結局は手作業での調整が必要になることもあります。既存のシステムを使い続けたい場合、会計ソフトの選択肢が限られる可能性があります。カスタマイズで連携を実現する場合、開発費用と時間が大きく膨らむことがあります。導入前に連携が必要なシステムをリストアップし、対応状況を確認することが重要です。将来的に導入予定のシステムとの連携可能性も考慮する必要があります。
サポート体制が自社に合わない場合がある
会計ソフトのサポート体制は製品によって大きく異なります。電話サポートが平日の日中のみで、夜間や休日は対応していない場合があります。メールでの問い合わせは回答までに数日かかることもあり、急ぎの質問に対応できません。チャットサポートがあっても混雑時は待ち時間が長くなります。訪問サポートは別途費用がかかったり、対応地域が限られたりします。サポートの質も担当者によってばらつきがあり、満足な回答が得られないこともあります。マニュアルが分かりにくかったり、動画やFAQなどの自習用コンテンツが充実していなかったりする製品もあります。導入前にサポート体制の内容を確認し、自社の業務時間や担当者のスキルレベルに合っているかを検討する必要があります。